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アークティックレース・オブ・ノルウェー 2022|出場選手まとめ

 

8月11日からノルウェーで開催される【アークティックレース・オブ・ノルウェー。9回目を迎えるまだ歴史の新しいステージレースで、最北の地で行われるロードレースでもある。ステージは平坦が2つ(どちらも獲得標高はかなりある)と丘陵が2つ。今年は6つのワールドチームと10のプロチーム、3つのコンチネンタルチームが出場する。ワールドチームもグランツールに出るエース格の選手はいない、やや地味なレースでもある。

そんな北欧のレースの楽しみ方は3つある。一つ目は若手選手の台頭。ビッグネームが少ないレースで名を挙げたい選手は張り切るだろう。未知のフレッシュな選手たちの必死の姿は見ていて楽しい。

2つ目は、言い方はあまりよくないが降格争いが激しい。下位のワールドチームが中心なので、UCIポイントの激しい奪い合いが繰り広げられる。特に当事者のイスラエルとバイクエクスチェンジには切実ともいえる重要なレースだ。降格争いとは少し距離があるが今季のポイントが非常に少ないアスタナとDSMも来季のスポンサーアピールのためにも結果が求められるはず。

3つ目は氷河で削られた山々と深い色の海が織りなす絶景だ。普段見慣れているフランスやイタリアとはまるで違う北極圏の景色は、日本で熱帯夜を過ごす我々に清涼感を味あわせてくれる。コースの半分くらいに渡る絶景の様子は昨年のハイライト動画でも通じるだろう。

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このブログではワールドツアーのカテゴリーのレースだけ出場選手まとめページを作っていたが、今回はJSPORTSのサイクル誰クルを楽しめるよう意識して情報をまとめてみた。つまり無謀にも(笑)ステージ優勝する選手も選んである。実際は展開や選手の好不調によって大きく左右されるだろうけど、予想の参考になれば幸いである。なお、今回出場する多くのプロチームとコンチネンタルチームの選手は残念ながら知らない選手が多いことは念のため申し上げておく。以下、各ステージと注目選手を簡単に紹介する。

*正式なスタートリスト発表前の情報なので、選手が変更される可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

 

◎ステージプロフィール

◆Stage1(8月11日):Mo i Rana Mo i Rana|185km|獲得標高3190m(平坦)

獲得標高は3000mを超えるが平坦ステージにカテゴライズされている。二度通る山岳は標高は500mほどでそれほどでもなく、ゴールまでの距離を考えると集団は割れてもスプリンターもゴールまでに追いつき、集団スプリントに持ち込まれる確率が高いだろうか。初日なので総合勢も激しいアタックはしないと考えられる。有力選手が逃げると面白そうだが、総合勢もスプリンターも逃げにタイム差は与えないはずだ。

◎独断のステージ優勝候補:

カピオットマンザンフルーネウェーヘンボアッソンハーゲンザングル

 

 

◆Stage2(8月12日):Mosjøen Brønnøysund|155km|獲得標高2803m(丘陵)

stage2も獲得標高は多めだが平坦ステージ扱い。大きな山はないが、細かいアップダウンがずっと続く。終盤にある丘は傾斜がきつく、stage1よりは残れるスプリンターが少なくなるかもしれない。フルーネウェーヘンあたりは厳しいのではと感じる。登れるスプリンターとパンチャー系の選手によるスプリント勝負と予想。また、逃げが決まるとしたら一番可能性が高いステージかもしれない。

◎独断のステージ優勝候補:

カピオットボアッソンハーゲンビストラムヘルマンスTヨハンネセン

 

 

◆Stage3(8月13日):Namsos Skallstuggu|180km|獲得標高2637m(丘陵)

唯一の山頂フィニッシュのステージ。ここの成績が総合成績に直結するので、クライマーたちが勝負に行くだろう。ゴールの登りは標高も距離もそれほどでなはいが、傾斜はかなりハードで登坂力で差がつきそうだ。中盤の山岳で人数を絞った小集団での登坂勝負になるだろう。

◎独断のステージ優勝候補:

Tヨハンネセンレックネスンシュルツコッレオーニ、ヘルマンス

 

 

◆Stage4(8月14日):Trondheim Trondheim|160km|獲得標高2387m(丘陵)

終盤に4周する丘は距離は短いが傾斜がきつくパンチ力が求められそう。パンチャー系の選手中心の小集団のスプリントになると予想。総合優勝を争う選手たちも先頭集団内で走ると思われる。

◎独断のステージ優勝候補:

ヘルマンスTヨハンネセンズバラーリボアッソンハーゲン

 

 

◎総合優勝候補

本命は2強と言っていいだろう。ビアス・ヨハンネセン(ウーノエックス)アンドレアス・レックネスン(DSM。どちらも地元ノルウェーの若手総合系有望選手。Tヨハンネセンは昨年のツール・ド・ラブニールで総合優勝し、今年はカタルーニャで総合7位になるなど順調にキャリアを重ねている。MTBジュニア世界選手権で銅メダル、シクロクロスで2年連続ノルウェーチャンピオンにも輝き、最近の活躍する選手のトレンドにぴたりとはまる。なおTヨハンネセンは双子の兄アンデルス・ヨハンネセン(こちらも有望株)も出場するのでサイクル誰クル投票時などは間違えないようご注意を。レックネスンは今年のツール・ド・スイスのステージ優勝でワールドツアー初勝利を飾ると総合でも13位になり、パリ〜ニースでも総合11位と好成績を残している。登坂力とスプリント力ではTヨハンネセンが上で、タフさではレックネスンが上という印象。アシストたちの働き等が勝負を分けるかもしれない。

対抗は、個人的に注目しているのはニック・シュルツ(バイクエクスチェンジ)クインテシン・ヘルマンス(アンテルマルシェ)シュルツはツールでもう少しでステージ優勝になり(コルトが優勝したステージでハンドル投げの差で敗れた)、終盤のピレネーでも総合トップ10の選手たちと間をおかずにゴールするなど、登坂力に強さを見せた。一皮剥ければサイモン・イエーツに次ぐ総合系のエースに名乗り出そうな存在。ヘルマンスは4月のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでレムコに次ぐ2位(3位ファンアールトにゴールで競り勝つ)で一気に名を挙げたシクロクロッサー。ベルギーツアーでも総合3位になるなど、ロードレースに本格的に参戦して2年目ながら大きく飛躍している。難関山岳ではまだ厳しそうだが、途中のアップダウンを乗り切ればどのステージも優勝を狙えるスプリント力もあるのが強み。

他の上位候補は、ツールで登坂力も披露してステージ優勝し好調なユーゴ・ウル、このレースと相性のいいクライマーのラフェも総合を狙ってくるだろう。パリ〜ニースで初ステージ優勝を飾ったちょっとアラフィリップ似のクライマー、ビュルゴドーも総合上位に絡む力はありそう。地元ノルウェー勢ではビストラムフレデリックハーゲンも中堅実力派。トップ10に絡む成績を上げておきたい。ビッグネームの出場が少ないため、新たな若手GCライダーたちが張り切る姿も見たい。そういう意味で気になる存在として、コッレオーニ(バイクエクスチェンジ)ヴォークラン(アルケア)を上げておく(どちらも名前はケヴィンだ)。二人ともまだメディアなどで注目されている記事を見たことがない選手だが、これから出てくる可能性を感じるブレイク候補。コッレオーニは2020年ベイビージロで3位になり翌年バイクエクスチェンジに加入、今年はツアー・オブ・オマーン総合7位、直近のサズカ・ツアーで総合3位と上り調子の22歳イタリア人クライマー。ヴォークランはツアー・オブ・オマーン総合6位のほかプロクラスのレースでコンスタントに一桁フィニッシュをしている昨年までトレーニーだった21歳のフランス人。フランス国内選手権ではジュニア時代にRR、個人TTともに優勝し、昨年はU23個人TTも優勝している有望株。他の上位候補は下記表を参照。

 

 

◎その他の注目選手

スプリンターは多くは出場していないが、途中のアップダウンをこなして終盤まで残れればステージ優勝は狙える。実績ではフルーネウェーヘンが頭ふたつくらい抜けている印象だが、アップダウンをどれほどこなせるかはやや疑問。登りをある程度こなせるという意味ではカピオットマンザンの方がゴールでのスプリントに残れそうと感じる。地元であるボアッソンハーゲンもベテランながら調子がよければスプリントに絡み勝機は十分。ボルはかなり厳しいと思うがどうだろうか。

ステージ優勝は上記の総合系かパンチャーやスプリンターに絞られると思うが、逃げが勝つ可能性も考えておきたい。スペシャリストともいえるタコさんに加えてザングルサイモン・クラークズバラーリあたりが一緒に逃げるとかなり強力になる。普段ならプロチーム所属の選手たちが逃げる展開が多いはずだが、イスラエルバイクエクスチェンジは降格争いの渦中でUCIポイントを稼ぐために逃げる可能性もあると見る。

 

 

◎過去の総合成績(2021年、2019年、2018年)

参考までに過去3年間の総合成績10位までと各賞(ポイント賞・山岳賞)を入れておく。所属チームは今季との比較も。なお2020年はコロナ渦で中止になっている。個人でトップ10に複数回入っているのは、ヘルゴーバルギルが2回。チーム別で好成績なのは、アスタナが4人、イスラエルアルケアが3人、その他というかんじに。

出場選手に過去の優勝者はいない。

*プロチーム及びコンチネンタルチームは知らない選手も多く、日本語表記が不明の選手はアルファベットのままにしているのはご了承ください。