(レース後、時間があいてしまったので、こっそりアップ)
6月12日から19日に開催された【ツール・ド・スイス】。ツールの前哨戦として選手達やチームの仕上がり具合を見たかったのだが、プロトン全体にコロナ感染が蔓延し、多くの選手が離脱。ユンボ、バーレーン、UAE、アルペシンはチーム自体が撤退する羽目になるなど、最終的にリタイアした選手は半数近い76名に及び、ツールへの影響が心配されるレースになった。
*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。
◎レース結果:総合トップ10と各賞
◆Stage1:3級山岳を8度登るコースは多くの選手が脱落し、クライマー中心の小集団スプリントになり、優勝はスティーブン・ウイリアムズ。苦労人が
◆Stage2:11名の逃げ集団から残り20kmで単独で飛び出したレックネスンが逃げ切りでワールドツアー初勝利。集団スプリントになった2位争いはベッティオルが制し、リーダージャージはウィリアムズがキープ。
◆Stage3:獲得標高3000mを超える丘陵ステージで、強力な逃げグループが形成されるも残り11kmで吸収。ゴールは緩斜面の登りスプリントになり、サガンがロングスプリントで移籍後初勝利。病み上がりで体調が戻らない中、復調気配を感じさせた。
◆Stage4:逃げと吸収が繰り返される展開は、勝負は半数ほどに人数を減らしたメイン集団でのスプリントになり、ベテランのダリル・インピーが3年ぶりの勝利。リーダーはウィリアムズがキープ。
◆Stage5:多くの選手がコロナ感染でDNS、ユンボはチームが撤退。ハイペースで牽引するプロトンから多くの選手が脱落し、先頭グループに人数を送り込んだボーラがチーム力を見せ、ウラソフが勝利し、総合でもトップに立った。
*stage6の前にコロナ感染が急拡大し、総合首位のウラソフがDNS、またバーレーン、UAE、アルペシンはチーム撤退。30人を超える選手が未出走に。
◆Stage6:2つの超級山岳を登る山岳ステージは10名強の逃げ集団の争いに。写真判定でシャンプッサンにニコ・デンツがWT初勝利した。ウラソフのDNSにより、リーダーはフルサンに移動。
◆Stage7:連日の難関山岳ステージは、総合争いから脱落したクライマーたちが逃げ切りを狙ってアタック。逃げ集団内のバトルからピノーが残り2kmで先頭にたち勝利。リーダーは4位に入ったイギータに移動。
◆Stage8:25.6kmの個人TTは母国レースで張り切るキュングを大幅に上回るタイムでエヴェネプールが優勝。得意のタイムトライアルに磨きをかけている。2位に入ったGトーマスが逆転で総合優勝に。
ポイント賞は、登りでもしっかり中間ポイントを稼いだマシューズ。多くのステージで逃げ続けたシモンズが山岳賞。総合2位につけたイギータがヤングライダーになり、トップ10にグロスチャートナーとシャッハマンも送り込んだボーラの好調さが際立っていた。
◎予想結果:総合優勝候補
【予想文面】→ 本命はダニエル・マルティネス、もしくはAイエーツのイネオスコンビ。ツールを見据えて仕上がり具合の確認になるだろう。対抗はウラソフ。ジロで見せたボーラのチーム力はサブエースのイギータも含めてイネオスに全く引けを取らない。この2チーム・4名が総合優勝争いの中心になる。その他の有力候補は、ヨン・イザギレ、ウッズ、ルツェンコの実績十分のベテランは表彰台に絡む力はあるが、個人TTではタイム差をつけられてしまいそうで優勝には一歩及ばなく感じる。若手ではエヴェネプール、ジロでも活躍したアレンスマン、ブレイクの兆しが見えるルビオは注目。特にエヴェネプールは総合勢の中では別格と言えるTTの速さがあり、丘陵ステージで大逃げからの独走を許してしまうと一人勝ちすらありえる。とはいえ、各チームのマークも厳しく、長い登りを有する終盤の難関山岳ステージは苦戦が予想される。今年出場予定のブエルタを睨んだ挑戦の意味合いが強いだろう。その他では、成長曲線が上昇中のマーダー、EFの次世代総合エースのポーレス、復活気配のフランスの人気者ピノー、スーパー山岳アシストのクスらの実力派もトップ10に入る力は十分あり、彼らも調子次第では表彰台に近づける。それぞれに特徴のある選手が揃った印象で、面白いレースを繰り広げそうな予感。他の上位候補は下記表を参照。
【結果】→ 予想は散々だったが、これだけ多くの選手が離脱する結果はさすがに予想するのは無理だろう。イギータ、ポーレス、ダニマル、ポッツォヴィーヴォと4人トップ10に入りをよすしているので(完走した8人中7人はトップ20入り)精度がそれほどひどかったわけではない(と思う)。リタイアした選手のウラソフ、Aイエーツ、マーダー、クス、ソレルはツールも出場予定だったのだが、どうなるだろうか。特にエースを張る予定だったウラソフとAイエーツの感染はチーム全体の戦略に関わるだけに非常に痛い。総合で11位につけたレムコはブエルタへの期待感は十分に感じさせたし、14位に入ったピノーもいよいよ元気になってきたのは好感触。
◎その他の注目選手の結果と雑感
【予想文面】→ チーム別では(エースも含めて)イネオスはツールメンバーを揃えてきた。他に総合系のツールを睨んだメンバー選考なのは、UAE、ボーラ、EF、イスラエルあたりか。ツールの前哨戦というにはやや見劣りがするが、ステージ優勝狙いのパンチャーやクライマーとオールラウンダーは強力なメンバーが揃っていて、レースとしては面白い駆け引きがありそうな雰囲気がある。コスヌフロワ、モスコン、ヴァルグレン、ピドコック、ファンバーレ、フルサン、ジルベール、クラーウアナスン、クイン・シモンズ、ヒルシ、テュルジスと、キレのあるアタックが得意な選手が多い。コーヴィ、オルダーニとジロで初ステージ優勝した選手もいる。積極的なアタック合戦になったら楽しそう。
最終日の個人TTはパワー系のTTスペシャリスト向け。TTの得意な選手も多く参戦し、なかなか見応えあるステージになりそう。優勝候補筆頭はキュング。デニス、アスグリーンが対抗だろう。表の左側にTTと記入している選手は有力候補で、総合勢でTTが強いのはエヴェネプール、ウラソフ、アレンスマンも強い。ダニエル・マルティネス、Aイエーツ、ヨン・イザギレも速いが、軽量級の選手はやや不利に思える。とはいえ、難関山岳を終えた最終日なので、コンディションが大きく左右しそうだ。
また新城幸也も急遽参戦が決定。もしかしたらツール出場に向けた意味合いも含まれているかも。26日には全日本選手権も予定されているので、慌ただしい日程だが頑張ってほしい。
【結果】→ 総合優勝したGトーマスはお見事。エースのAイエーツが離脱する中、厳しい展開になったレースで結果を残す頼もしさはさすが。フルサン、キュング、シャッハマンもトップ10に入る好成績を残した。ユンゲルスは長年不調に苦しんでいたが、復活の気配はかなり好感触。グロスチャートナーとウルは総合優勝争いをしたチームメイトを力強くアシストし、自らも上位に入った。若手ではクローンとビュルドゴーが存在感を示し、中でもレックネスンはステージ優勝も含めて、次代の総合エースを担う力強さを示した。あとは多くの選手がこの後に控えるツールへの影響が少ないことを祈る。
◎スプリンター
【予想文面】→ 平坦ステージはないので、ピュアスプリンターには勝機はほとんどないだろう。stage2・4だけ、登りにも強いスプリンターあるいはパンチャーにはチャンスがあるかんじか。マシューズ、トレンティン、アランブル、クリストフまでがステージ優勝の可能性はあるだろうか。グローブス、ボル他は登りの練習で出場するような状況に思える。注目したい選手は、ペーター・サガン。今季は不調が続いているが調子を取り戻せれば、彼の独壇場になる可能性はある。10日に同じスイスのワンデーレースに久しぶりに出場するので期待したい。
【結果】→ マシューズはステージ優勝にはいたらずも善戦(3位、8位、2位)。ポイント賞も獲得し、登れるスプリンターとしての力を存分に見せつけた。なんといってもサガンのステージ優勝だろう。残念ながら今年二度目のコロナ感染により、最終ステージをスタートせずにリタイアしたが、コンディションさえ整えばまだ勝てる力を披露してくれたのは喜ばしい。早期の回復を願うのみ。強いサガンを早く見たい。