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2023年チーム紹介【ジェイコ/トレック/UAE】

 

2023年シーズン、ワールドチームのラインナップ紹介の6組め。選手一覧/チーム概要/今季の体制/主要選手について述べている。全選手リストにもなっているので、ちょっとしたデータベース的に観戦に役立つことを願ってます。

◎表の見方について

*表内の選手名左の記号は、 =エース格/=注目の若手/NeoPro=プロ1年目。*チームの特徴は、GC(ステージ総合)/ワンデー/スプリント/タイムトライアルの強さを5段階評価(主観です)。*選手は2022年のUCIポイントによるランク順で記載。上から順に強い選手と思って間違いではない。名前がピンクの選手は今季加入。*脚質タイプは、あくまで目安です(脚質は主にチクリッシモを参考にしつつ、ネオプロは成績からの想像)。*国名に色がついているのはその国のナショナルチャンピオン。*年齢は2023年1月1日現在で、背景色の水色はヤングライダー資格者。*UCIランク及び勝利数は2022年。*右端のチームは昨年の所属チーム。

 

 

 

 

◎チーム ジェイコ・アルウラ

 

◆チーム概要:オーストラリア国籍の中堅チーム。選手の1/3はオーストラリア人で、イタリア、ニュージーランド、オランダが次に多く、フランス人とベルギー人がひとりもいないのは珍しい。映画になった『ALL FOR ONE』とレースで勝った時の「GreenEDGE」の掛け声の印象が強いためか、選手もスタッフたちも陽気で仲が良いイメージがあるのは、オージー気質も無縁ではないだろう。今季からチーム名が変わった(旧チーム名はバイクエクスチェンジ・ジェイコ)。

◆2023年の体制:移籍加入は10人と多いが、戦力的には抜けていった選手よりも相対的に力のある選手が入り、補強としては好印象。ネオプロは8人、ヤングライダーは10人と若手多めながら、一方では30代の選手は12人とワールドチームでは最多でもあり、ベテラン揃いのチームでもある。

◆主要選手:UCIランク16位の割には星評価は高めだったかもしれない。実際エース格の選手はプロトンの中でもトップクラスの実力者が揃っているが、その次の選手がいないのが現状と感じる。GC(ステージ総合)では、サイモン・イェーツがエースとして積極性のある走りを見せてハマった時は強力。昨年はジロ、ブエルタとともに途中棄権していながらUCIランクは最終的に40位に入っている。つまり安定して走りきれれば総合10位以内はほぼ確実な力がありながら、逆に言うと落車や体調不良などが増えているのは少し気がかりでもある。本来なら続く存在としてルーカス・ハミルトンニック・シュルツ(今季退団)が収まるべきところ期待外れの状態であったが、加入したエディ・ダンバーと成長中の若手ケヴィン・コッレオーニに託すことになりそう。ワンデーではマイケル・マシューズがエースを担い奮闘している。加入したイタリア王者のフィリッポ・ザナアルデンヌクラシックを、ゼネク・スティバルが北クラシックをエースとして上位を狙う体制を予想している。スプリント班ではディラン・フルーネウェーヘンが7勝をあげエースとしてきっちり仕事をしたが、サブエース的なグローブスが退団し、戦力的にはやや弱くなった。登り基調のスプリントではマシューズがエースを担う。タイムトライアルは全体的に強い選手が多めで、マッテオ・ソブレロルーク・ダーブリッジアメリカ王者のローソン・クラドックに加え、サイモン・イェーツもTT能力がかなり向上している。若手では、ケランド・オブライアンは要注目。先日行われたオーストラリア選手権のクリテリウムで優勝しITTでは3位に入った。

 

 

◎トレック・セガフレード

 

◆チーム概要:アメリカ国籍でイタリア色の強い中堅チーム。ただし選手にはアメリカ人は一人だけで、イタリア人が7人、デンマーク5人、ベルギー4人と続く。別府史之氏が所属して活躍していたことや、ジャパンカップでも来日する機会も多く好成績を残しているため、日本では人気の高いチームのひとつ。女子チームもあり、そちらもトップクラスの強さと人気がある。

◆2023年の体制:移籍加入は3人と少なく、昨年の主力はほとんど残っている。ネオプロは6人、ヤングライダーは10人と標準的な人数。年齢層では中心になっている選手が30歳前後で、30歳以上が10人とややベテラン多め。それでも20代前半の若手にはジュニアやU23で世界王者になったような有望株が多く、将来性は非常に高く感じるチームのひとつ。

◆主要選手:GC(ステージ総合)は今年は狙わない方針のようだ。エース格であったバウケ・モレマジュリオ・チッコーネはともに区間優勝とクラシックが目標と公言した。彼らは山岳のあるワンデーはエースとして走ることになる。昨年台頭したマティアス・スケルモースが総合上位を伺うが、まだ将来に向けて経験を積んでいく状況で、グランツールでは総合トップ10に入ることが目標といったあたりか。スプリント班は強さを発揮しそう。マッズ・ピーダスンは一皮むけて貫禄が出てきた。そもそも2019年のアルカンシェルだった実力者であり、昨季はスプリンターながらクライマー並みの登坂力を見せて、年間で10勝をあげた。ヤスペル・ストゥイヴェンエドワルト・トゥーンスとともにワンデー含めて勝利を狙える。フアン・ロペスの昨年のジロでマリアローザを着用し一躍人気者に。スター性も感じられる注目選手だ。若手ではすでに実績のある楽しみな選手が多い。昨季途中トレイニーで加入したマティアス・バチェクは正式に選手となった。ガスプロム時代にUAEツアーで衝撃の逃げ切り勝利を挙げるなどすでに3勝、ラヴニールでもシングルリザルト連発、昨年のU23欧州選手権の優勝者のティボー・ネイス、2019年のジュニア世界王者クイン・シモンズ、同ジュニア世界選手権ITT王者のアントニオ・ティベーリ、2021年のU23世界王者フィリッポ・バロンチーニと、主役級の活躍を期待したい若手は多い。

 

 
◆チーム概要:UAE国籍の野心溢れる古豪チーム。資金難でチーム消滅の危機だったが2017年からUAEが資本に入り、潤沢な予算をかけて一気に強豪チームの仲間入りを果たした。運営スタッフはイタリア人が中心のため、イタリア色が強い。選手もイタリア人が5人、コロンビアとポルトガルが4人、全体では18もの国から集まっている。実績のある中堅選手から才能溢れる若手まで次々に引き入れ、昨年は血0無全体で48勝をあげて、ついにUCIランキングも2位にまで上昇した。また若手とは長期契約を結ぶなど、最強チーム作りに余念がない。

◆2023年の体制:移籍加入は7人で、今季も野心溢れる補強を行った。加入する選手だけで昨年の勝利は10勝に及び、もちろんワールドチームで一番多い。実績のあるベテラン中心に加入したたけ、平均年齢は2歳近く上がったが(2022年:26.1歳から2023年:27.9歳)もともと低い平均年齢だったので、全体の標準になった状態。ネオプロは2人と少なく、ヤングライダーは9人。それでも最年長は33歳なので、高齢化しているわけではなく、現在の主力はほとんどがヤングライダーである。

◆主要選手:GC(ステージ総合)エースのタデイ・ポガチャルは2年連続で世界ランク1位となり、ステージ以外のワンデーでもモニュメントを獲得してしまう万能ぶり。他にも多くの実力者が揃う。2番手はジョアン・アルメイダになるが、移籍加入したアダム・イエーツの役割はまだ不明だが十分エースとしての能力がある。フアン・アユソはも昨年のブエルタで最年少で表彰台にあがりエースとしての才能を見せつけた。さらにセカンドエースになりえる存在として、マルク・ソレルジョージ・ベネットブランドン・マクナルティ、移籍してきたジェイ・ヴァインも将来的には総合エースを目指すポテンシャルがありそう。ワンデーでは、ポガチャル以外では、マッテオ・トレンティンディエゴ・ウリッシマルク・ヒルアレッサンドロ・コーヴィに加え、ティム・ウェレンスも加入し、誰もが上位どころか優勝する力を有する。またアシストに専念すると思われるが、ラファウ・マイカダヴィド・フォルモロヤン・ポランツも他のチームならエースになりうるレベルの選手。それだけの巨大戦力に対してスプリント班は少し心許ない。エースのパスカル・アッカーマン、セカンドエースのフアン・モラノの二人に昨年一年を棒に振ったアルバロホセ・ホッジがどこまで戻れるか。ガビリアが去り、昨年のスプリント勝利数は全員合わせても4勝とかなり寂しい。タイムトライアルも悪くはない。世界選手権U23のITTで3年連続王者だったミッケル・ビョーグは少し伸び悩んでいるが、外にも、アルメイダ、マクナルティと移籍してきたフェリックス・グロスシャートナーなどTT巧者もそれなりにいる。更にポガチャルもステージレースの終盤のTTは破壊力がある。選手全体の2/3くらい名前をあげてしまったが、それだけ勝てる選手が多いのだ。何しろ昨年勝利した選手が18人もいる。

 
 
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その他のチーム紹介はこちら。

 

◆ロット/トタルエナジーズ/イスラエル/ウーノエックス > coming soon

 

 

2023年のワールドチーム全体はこちら。