4月16日にオランダで開催された【アムステルゴールドレース】。近年、写真判定の勝負が続いていたが、今年はポガチャルが独走勝利。スロベニアの宇宙人のアルデンヌクラシック3連勝への挑戦が始まった。
*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。
◎レース結果:トップ10
ポガチャルが30km以上を独走して勝ってしまった。過去の大会と比べると、レースとしては面白みがなかったのは正直な感想。早々にポガチャルが先頭グループに入ってレースの様子を伺い始めた頃には「まずい展開、追走グループははやめに追いつかないと」と思ったし、その追走グループが集団落車し優勝候補たちが巻き込まれてリタイアやタイム差がついてしまった時は「ポガチャル有利になった」し、彼がアタックしてひとりだけ追いすがったピドコックも離された時には「レースは終わった…」と思った。「強過ぎる」というのは全くもって厄介である。ポガチャルが悪いわけではない。むしろ彼の偉業達成という意味では完璧なサクセスストーリーである。「ツール覇者のアムステルゴールドレース優勝は史上◎人目」「ロンド覇者の同年アムステル優勝は…」「アルデンヌクラシック3連勝したら史上3人目」とか、そんなかんじで歴史が作られていくし、ポガチャルはおそらく全てのメジャータイトルを手にしようとしてそうなので、それはそれで見てみたい気持ちもないわけではない。だけどせめて、残り30km独走とかやめてほしい、とかね。プロ野球でいえば、投手も打者も三冠王のいるチームが7月頃にマジックが点灯して100試合で優勝決めちゃったらつまらないのと同じで。
2位は、急成長中の注目の若手ベン・ヒーリー。ポガチャルから遅れたピドコックに追いついて最後は引き離した。ヒーリーの勢いは凄まじい。去年まではアイルランドナショナル選手権での優勝くらいで、トップ10に入ったことも片手であまるほどだったが、今年の3月にコッピ・エ・バルタッリstage3で初優勝を飾ると、思い切りのいい逃げとタフな独走力を武器に好成績を連発。前走のブラバンツ・パイルでの2位に続いてワールドツアーでの2位は金星ともいっていい(人類では1位なので)。2年前のヒルシみたいな勢いを感じる(タイプは少し違うが)。
4位以下も逃げに入った選手たちが続く。クロンもストラーデビアンケの10位ほか春のクラシックの好調をキープし、ルツェンコはシチリアでの優勝の勢いをそのまま保っている。バジオーリ、ファンヒルス、スケルモース、カンプ、ジングレと登りに強くスピードもある選手が続いた。で、このメンバーを見た時の印象が「若い!」。年齢についてはレース展開と関係ない話なので、下記「その他・雑感」で少し記述します。
◎予想結果:優勝候補ほか
よ、予想は、ざ、惨敗です…。落車で荒れた展開になったとはいえ、ポガチャルの逃げに一緒に乗れなかった優勝候補のいるチームはレースの読みが甘かったといわざるをえない(自分の予想の酷さを選手のせいにしてるわけではない)。
ピドコック、クロン、ヒーリー、ルツェンコは、しっかりとそれに乗って持てる力を発揮したのは立派。しかしパウレスは非常に好調だっただけに残念だった。落車の怪我がこの後のレースに影響がないといいのだが。またパウレスを欠きながらもヒーリーで勝負できたEFは、チームとしてまたひとつ飛び道具ができてとても良いかんじ。
◎その他・雑感
他にレースで語りたいことがあまりないので、上位10名の年齢を調べてみたら、直近の5年間で圧倒的に若かった(下記表参照、年齢は当時)。クラシックレースでこれだけ若い選手が活躍するのは、あまり記憶にない。
まず今年は8人がヤングライダーの年代というのが驚きで、他の年では平均して2人もいない。2018年と比較すると平均で6歳も若いのだ。原因のひとつには落車があって荒れたという部分もあるとはいえ、ヒーリー以外は去年からレースで好成績をあげてきた力のある若手たちなので新しい時代を感じてしまう。今週末にはモニュメントのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュがあるが、優勝候補の二人、ポガチャルとレムコという若い年代の代表格の直接対決がある。
◎プレビュー記事はこちら。