7月29日にスペインのバスク地方で開催される第43回目の【ドノスティア・サンセバスティアン・クラシコア】。今年のツールで開幕地になったバスク地方にまた多くのスター選手たちが戻ってきた。なんてうらやましい地域なのだろうか・笑
ツールが終わったばかりだが、多くの選手が連戦で出場し、さらに一週間後に控えた世界選手権(ロードレースは8月6日、個人TTは8月11日)に出場する選手も多く、彼らのコンディションの参考にもなりそう。なお勝者にはチャペラ(バスク地方の伝統のベレー帽)が贈られて、民族舞踊で称えられるのも微笑ましい気持ちになる恒例行事。
*有力選手は、上位10人(本命3人:★3つ)と、その他有力選手に分けています。*情報は7月28日現在。出場選手は変更の可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。
◎レース概要
サンセバスティアンの市街地をスタートし、海岸線、丘陵地帯を経由し、ゴールはスタート地にほど近い市街地周辺を周回するコース。総走行距離は230.3kmで、カテゴリー山岳は7つあり、獲得標高は4057mと登りの多いクライマー向けのクラシックレース。どの山岳もひとつひとつは距離や標高はそれほどでもないが、勾配はかなり急で確実に勝負を分けるポイントになる。中盤にあるふたつの連なる1級山岳で集団は絞られはじめて、終盤のふたつの2級山岳で残った小集団によるスプリント勝負になるか、アタックして独走勝利になる展開が予想される。ちなみに昨年はレムコが残り45kmを独走して圧勝している。昨年から山岳の位置が変わったり、最後は周回するコースになっていて、有力選手のアタックどころは変化しそうだ。
◎優勝候補
本命は間違いなくレムコ・エヴェネプールだ。過去2回優勝し相性も良く(本人が大好きなレースといつも言っている)、来る世界選手権も見据えてトップコンディションになっていると思われる。彼の勝ちパターンに持ち込むべく、残り80kmの1級山岳エルライツ峠で人数を絞る。セリー、ノックス、ファンセヴェナントあたりが全力で集団を牽引していくだろう。もしかしたらまた残り40kmあまりを独走するような走りをするかもしれない。チームには調子を上げてきたアラフィリップ、バジオーリもいて、アタックでゆさぶったり、レムコのアタックへの重しになったりできるのも好ましい。
そうなると、レムコの独走についていける独走力のあるクライマーが対抗馬になる。そういう観点では、フアン・アユソ、カルロス・ロドリゲス、ベン・ヒーリーが有力。特にアユソ、カルロドは母国スペインのレースでもありモチベーションも高く、直近のレースを見てもかなり好調だ。二人とも落車をして少し見た目は痛々しいが、レースを妨げるほどのダメージはなさそう。個人的にはブエルタを見据えたうえで、レムコvsアユソは非常に興味深い対決だ。ヒーリーは直近のレースでもいい走りをしていて、好調を維持しているというか、さらに磨きがかかっていると言ってもよさそう。本気のレムコにはさすがに敵わないと思うが、ヒーリーが先に仕掛けたり逃げたりするとレースが様々な動きを見せることになるので、レムコもやり難い相手だと思う。引っ掻き回すと非常に面白い存在として期待している。
好調なのはツールでの鮮烈な走りも記憶に新しいガル。ただしツールの疲れはどの程度なのか(オコーナーがエースかもしれない)、そのまま好調が維持できていればツールのstage20でヴィンゲゴーとポガチャルに唯一ついていけた能力は侮れない。ヒルシも状態がいい。6-7月に4つのワンデーレースに出場して、3勝&2位1回。下のカテゴリーでもありレース数は少ないが、3年前に匹敵するようなコンディションに見える。また伏兵的な存在ではあるが、グレゴワールはブレイク候補として期待したい。ストラーデビアンケで8位に入っているので、すでにトップ10に入る力は持ち合わせているが、このタフなステージにどれだけ対応できるか。と、ここまでは全員ヤングライダーの年齢枠である。トップ10のうち半分は彼らが占めそうな気がしていて、フレッシュな顔ぶれのクラシックレースになると面白い。
ベテラン枠では(中堅の年齢というか)、地元のビルバオ、エースとして走る貴重なレースのベノート、サンセバスティアンと異常に相性がいいモレマ(過去10回トップ10に入っている)をトップ10候補にしたい。パウレス、ロータもこのレースと相性がよく、ブイトラゴ、スヘリング、ヨン・イサギレもコースに合っているタイプ。トゥレット、グローグもブレイクを期待してる若手。他の上位候補は下記表を参照。
◎その他の注目選手
その他にも多くの有力選手やビッグネームが出場する。下記表のように実力者ぞろいで、他にもあまりに人数が多くなるので掲載を見送った選手が多くいる(パシェ、ベッティオール、ガルシアとかね)。この中で上位候補に挙げられるのは、地元のランダ、モラール、ソーサや、調子さえよければ上位に間違いなく絡みそうなウラソフ、ウラン。ツールでも活躍していたラトゥール、Dトゥーンスなど。オコーナー、ルツェンコ、マルタンあたりももちろんトップクラスのエース格のクライマーだが、ツールからの連戦でおとなしいのではないかと予想。ギルマイ、マシューズはさすがに登りがきついだろう。またあまり馴染みのなさそうなブレイク候補ではジェイコのフェリックス・エンゲルハートを推したい。今年プロ一年目ながら2勝をあげて、直近のレースではシングルリザルトを連発してる注目株。化けそうな気配が漂っている。
◎過去の結果(2022年、2021年、2019年)
参考までに直近3年分の上位10位を入れておく。所属チームは今季との比較も。なお2020年は中止、2019年以前は「クラシカ・サンセバスティアン」の名称だった。
出場選手中、過去の優勝経験者は、エヴェネプール(2022、2019年)、パウレス(2021年)、モレマ(2016年)。