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世界選手権 2023(ロードレース・エリート男子)|出場選手まとめ

 

8月6日にイギリス(スコットランド)で開催される第90回目の【世界選手権(ロードレース・エリート男子)】。今年のアルカンシェル世界王者の証の虹色のジャージ)を決めるのにふさわしい選手たちが揃った。以下、国別に有力選手を簡単にまとめた。

*情報は8月4日現在、出場選手は変更されることがあります。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月時点。

 

 

 

 

◎レース概要

コースの総距離は271.1km・獲得標高は3570mと、難易度は高くないが勝つにはなかなかハードなコース。スタート地点のエディンバラから湾岸沿いを西に向かい(地図上の青い線)、内陸に入ったところで二つの山(丘)を超える。クロー・ロードの山頂は標高333mで平均斜度も5%前後と選手が脱落するよう難易度はない。その後グラスゴー市街地の周回コース(赤の線・1周14.3km)を10周まわるのだが、コーナーが多く走りづらいことと(1周の間に40箇所以上もある)、終始細かいアップダウンを繰り返し、特にゴール直前の坂は200mほどの距離しかないが11%を超える斜度があり、選手を徐々にふるいにかけていく展開が予想される。生き残ることができた小集団の選手たちによるスプリントか、残り10kmをきってからアタックを決める選手が勝つような展開が予想される。登りをこなせるスプリント力のあるパンチャー系の選手、テクニカルでタフなレースに強いワンデーレーサーが有利だろう。また当日は雨の心配もあり、そうなると余計にテクニカルでタフなレースに強い選手に絞られる。

今回世界選手権をはじめて見るという方のために一応触れておくと、普段のレース(ツール・ド・フランス等)とは趣が異なる。出場する選手が所属するチームごとではなく国別の選手権になる。そのため普段はライバル同士であるチームの選手が同じチームになることもあり(ユンボに所属するファンアールトとスーダルに所属するレムコがベルギー代表のチームメイトになる等)、ジャージも国のものになる(国旗カラーが基調になっているものが多く、バイクやヘルメットは普段所属するチームのものを使用する)。また各国では出場できる選手の数が異なり、強いチームはより多く、そうでない国は少ない人数で走る(最多はベルギーの9人で、弱小国は1名のみ。日本は今回2名出場)。そのため、強い国と弱い国の差は非常に大きく、一部ではアマチュアレベルの選手も参加するので、後半のテクニカルな市街地コースでは落車やトラブルが頻繁に起こるかもしれない(本当に弱い選手はその前に遅れてしまうと思うが)ので、有力選手たちは不要なトラブルを避けるためになるべく集団の前方に位置取りしていると予想される。

 



 

 

◎優勝候補

今回のコースは様々なタイプの選手に可能性があり、優勝候補を絞るのは難しいと思ったが、敢えてトップ10に入ると思っている10名を推しておきたい。

予想されるレース展開はいくつかある。まずは、ロング・ソロアタック。ゴールまでの残り20km以上を集団から抜け出してゴールまで独走してしまう勝ち方。その代表的なのは昨年覇者のレムコ・エヴェネプールだ。昨年も40kmあまりを独走し、直前に行われたサンセバスティアンでも独走するスタイルで勝ち(ビルバオとウラソフがついていったが)コンディションは上々だ。わかっていても防げない、つまり誰もついていけないほどの高速巡航能力。ある意味非常識なほどの強力なパワーとメンタルを持ち合わせ、ベルギーチームにはスプリント勝負になったら最強レベルのファンアールトやフィリプセンというチームメイトが重しになることで、よりレムコが逃げやすくなるという状況も作りやすい。直近まで行われていたツールに出場していないことも疲労も溜まってなく優勝候補筆頭といってもいい。しかし、今回の彼の一番の敵は、コースだ。最後に10周する(コースのおよそ半分の距離)グラスゴー市街地は、細かいアップダウンが続き鋭角なコーナーが多いテクニカルなコースのうえ、路面状況も荒れていれば、彼の独走力を発揮するには不向きなのだ。

市街地の周回コースの特性から集団スプリントの可能性は低いと考えられる。細かいアップダウンとテクニカルなカーブに強いのはシクロクロッサーだ。つまり、僕の考える優勝候補本命はマチュー・ファンデルプールワウト・ファンアールトである。ゴール前での小集団スプリントで勝つために逆算して、市街地コースの登坂でアタックする選手についていき(ポガチャルアラフィリップヒルなど)スプリンターを振り落とし、ゴール前のモントローズ通りの坂で一気に勝負する。この二人についていけてゴール前のスプリントでも立ち向かえるのは、ピーダスンラポルトくらいだろう(この二人には勝機があると思ってる)。彼らに加えて、ポガチャルトレンティンガルシアヒルパウレスあたりの選手数人によるスプリントでマチューが勝つ、と想像する。今年のミラノ〜サンレモ、終盤のポッジオでポガチャルとファンアールトを置き去りにしたような猛烈なアタックを期待。マチューの懸念材料はMTBにも出場するため、コンディションをどれだけ維持できるか。忘れてはいけないのは彼はシクロクロスの現アルカンシェル。可能性で云えばこの大会で3枚のアルカンシェルを同時獲得する可能性もある(意味不明)。ファンアールトは最後の坂ではマチューに差をつけられそうに感じてしまう。他にはポガチャルも強いが、勝てるかというとレムコと同様にテクニカルなコースでは独走はなかなか厳しく、かといって小集団スプリントになったらマチューとファンアールトにはさすがに分が悪いし、スロベニアチームは他の国と比較すると見劣りするのは否めないため、上位には入れるが優勝は厳しいと思う。ということで、下記の表に入れた10名を優勝候補とする。(ただし、逃げの勝利の可能性も意外ともあるのでは、と思っている。その候補は《その他注目選手》に記載)

 

 

◎有力スプリンター

ゴールは有力スプリンターを含む集団スプリントになる可能性も排除できない。上記優勝候補に入れたファンアールトピーダスンラポルトも集団スプリントでも強いが、それ以外にも多くのスプリンターが出場する。しかもピュアスプリンターというよりもクラシックレーサーと呼べるようなタフな選手が多く、残り1周で先頭集団に残っているようなら彼らにもアルカンシェルのチャンスはある。特にワンデーレースで実績もあるマシューズアランブルクリストフフィリプセンは期待値高め。彼らがどれだけスプリントでもがける力を残してゴールに迎えるかで(つまりチーム力で)可能性は広がるし、逆にパンチャーたちは彼らを振り落としたい。終盤はそのせめぎ合いになると想像してる。

 

 

◎その他の注目選手

上記優勝候補以外にも多くの実力者が出場する。国別ではベルギーがどんな展開にも対応できる経験豊富で強力なメンバーを揃えた印象で最大の優勝候補といえる。続いて、フランスデンマークも様々なタイプのメンバーがいて強力。特にフランスはここ数年積極的にレースを動かすチームなので要注目。イタリアオランダもさすがのメンバーで上位に絡んでくる。開催国のイギリスは悪くはないのだが、勝てるかというとやや疑問。オーストラリアスペインコロンビアも悪くないが決め手には欠ける印象。スロベニアはポガチャル頼みか。スイスノルウェーも好成績が期待できそうな好印象のチーム。

テクニカルな市街地周回コースが半分も占めることで、逃げ切りの可能性もありえると思っている(有力な選手が逃げること、メイン集団は油断しないまでもアシストを使い切ったり協調できなかったりする。特にファンアールトフィリプセンを抱えるベルギーは最大限に警戒されるはず)。ただし勝てるほどの逃げになる可能性はいくつか条件があり、まずはレムコよりも先に仕掛けること(残り50kmくらいではアタックの必要ありかも)。逃げが得意で3-4人程度の精鋭グループになること(弱小国の無謀な逃げではなく、勝てる独走力のある選手の逃げ)。

逃げといえば今年一躍ブレイクしたベン・ヒーリーデレク・ジーは強力だが、彼らの警戒度は高そうでタイム差は与えられないだろうし、タイプ的にテクニカルなコース向きではないかも。ニルス・ポリッツニコ・デンツのドイツコンビ(ボーラコンビでもある)のどちらかは個人的な期待値高め。クラーウアナスンコスヌフロワバジオーリナルバエスルツェンコあたりは逃げに入ったら勝利もあり得る強力なメンバー。カンペナールツカヴァニャファンバーレは面白いが、彼らはチーム事情的には逃げにくいか。スグリーンキュングも勝ちに繋がるロングアタックは得意で、残り20kmを切ってから逃げたら本気のアタック。

日本からは新城幸也が15回目の世界選手権。一人で参加することが多かったが、今年は若い留目夕陽くんが共に戦う。夕陽くんは今年からEFのディベロップメントチームで活躍中だが、ユキヤが貴重な経験を伝授してくれることを期待したい。

*追記)留目夕陽くんはU23の代表で、男子エリートのレースの出場は新城幸也のみである。そうだろうと思っていたが確認不足で掲載してしまい申し訳ない。

 

 

 

◎過去の結果(2022年、2021年、2020年)

参考までに過去3年分の上位10位を入れておく。

出場選手中、過去の優勝経験者は、レムコ(2022年)、アラフィリップ(2021・2020年)、ピーダスン(2019年)、サガン(2017・2016・2015年)、クフィアトコフスキ(2014年)。