8月13日にスコットランドで開催される第90回目の【世界選手権(ロードレース・女子エリート)】。今年の世界選手権をしめくくるレースになる。以下、国別に有力選手を簡単にまとめた。
*情報は8月12日現在、出場選手は変更されることがあります。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月時点。
◎レース概要
コースの総距離は154.1km・獲得標高は2229mでコースの8割方は男子と重なり、難易度は高くないが勝つにはなかなかハードなコース。ローモンド湖をスタートし東に向かい(地図上の青い線)、コース上唯一の山(丘)クロウ・ロードを超えて、グラスゴー市街地の周回コース(赤の線・1周14.3km)を6周する。コーナーが多く(1周の間に40箇所以上もある)、終始アップダウンを繰り返し、特にゴール直前のモントローズ通りは200mほどの距離しかないが11%を超える斜度があり、選手が徐々に篩にかけられていくサヴァイヴなレースになるだろう。生き残ることができた小集団の選手たちによるスプリントか、残り2周あたりからアタックを決める選手が勝つような展開が予想される。登りをこなせるスプリント力のあるパンチャー系の選手、テクニカルでタフなレースに強いワンデーレーサーが有利。その辺りは男子同様になるだろう。
◎優勝候補
女子は最強軍団のオランダを中心にレースが展開されると思われる。複数がエースとして優勝を狙えるレベルで出場チーム中最多の8人いることも優位点。その中で実質エースを担うのは先日マイヨジョーヌを獲得した新女王デミ・フォレリング。今年はアルデンヌクラシックを全て勝つなど現在最強なのは間違いなく、昨年の世界選手権はCovid-19に罹り出場できなかった悔しい思いをぶつけてくる。彼女をアシストするのは昨年2度目のアルカンシェルを戴冠したアネミエク・ファンフルーテンと3度アルカンシェルの女帝マリアンヌ・フォス。オランダはメンバーが強すぎて“誰がエースなんだ問題”をいつもはらんでいるが、今年はこの二人は「フォレリングをアシストする」と公言しており、さらに最強スプリンターのロレーナ・ウィーベス、次世代の女王候補でブエルタ総合2位のシリン・ファンアンローイ、オランダTT王者のリーアンヌ・マルクスなど、“超”強力メンバーには隙はない。
対抗馬筆頭はロッタ・コペッキーになるだろう。普段はSDワークスでフォレリングとチームメイトであるが、互いにライバル心は強そうであり(今年のストラーデビアンケでは二人でガチスプリントした)、面白い勝負を期待できそう。街中のテクニカルなコースの相性とスプリント力ならコペッキーに分がありそうで、コンディション面でもコペッキーの方が良さそうに感じる(フォレリングは10日の個人TTで遅れ、コペッキーはトラックで二つアルカンシェルを獲得)が、チーム力ではオランダが強いのは間違いなく、コペッキーがどれだけオランダチームの揺さぶりに対応できるかが勝負の争点になる。
他にもクラシックレースに強いタフな選手が上位に来る。コース適性ではシクロクロッサーでもありスプリント力のあるシルヴィア・ペルシコ、今年のクラシックで好成績連発のファイファー・ジョルジは特に期待大。他にもクラシックレースやツール ファムでも好走していたカタジナ・ニエウィアドマ、ジュリエット・ラブー、リアヌ・リッパート、アシュリー・モールマンは上位候補の実力者。オランダはファンフルーテン、ファンアンローイもフォレリングのアシストをしながら上位に入りそう。下記表はこの順番にトップ10になると予想したが、最後は3-4人の小集団スプリントになる(あるいはコペッキーかフォレリングの独走)と想像している。U23も昨年同様同レースとして開催されるが、ジョルジとファンアンローイを優勝候補にあげておく。
◎有力スプリンター
ゴールは有力スプリンターを含む集団スプリントになる可能性も排除できない(可能性は高くないと思うが)。とはいえ、ピュアスプリンターというよりもクラシックレーサーと呼べるようなタフな選手に限定され、終盤まで先頭集団に残っているようならアルカンシェルのチャンスはある。現在最強スプリンターのロレーナ・ウィーベスは登坂力は向上していて、最終盤まで残る可能性はじゅうぶんあり、他にはマリアンヌ・フォス、2021年世界王者のエリーザ・バルサモにもチャンスはありそうだが、この二人は今季は怪我等の影響もあり調子を落としている印象で、優勝に絡むのは苦しそう。他にも実績のあるスプリンターは多数出場する(表参照)。彼女らが逃げに乗って終盤までいけたらチャンスあり。
◎その他の注目選手
上記優勝候補以外にも多くの実力者が出場する。男子はなるべく絞って少なめに有力選手をリストにしたが、女子は多くの選手を知ってほしいこともあり、あえて多めにピックアップした。またU23の有力選手は表の下に分けて記載している。
国別ではオランダが最大の優勝候補であるが(過去11年間で7回優勝)他の有力候補では、イタリア、オーストラリアもも力のある選手が揃っている。ベルギー、フランス、スイス、ドイツ、アメリカあたりも上位に絡む選手層。開催国のイギリスはちょっと興味深い選手がいて母国の声援を受けて想像以上の活躍をするかも。
星をつけている選手は好成績を期待したい。中でもパンチ力のあるアレクサンドラ・マンリー、登坂力のある人気者のセシリーウトラップ・ルドヴィグ、先日の個人TTでアルカンシェルを獲得したクロエ・ダイガードはトップ10候補にするか最後まで迷った。ダイガードは少し体調を崩していたこともあり、サバイバルな展開になりそうなレースではちょっと厳しいだろうか。(星を付け過ぎると節操がないので自重したが)独走力のあるグレース・ブラウン、オードリー・コードンラゴ、アグニエシュカ・スカルニアクソイカあたりは逃げに乗ると危険な実力者。U23では勢いのあるリカルダ・バウエルンファイント、シクロクロスでも強いカタブランカ・ヴァシュも好成績を期待。日本からは與那嶺恵理とU23では小林あか里が出場。その他の選手は下記表を参照。
◎昨年のレース結果はこちら。
個人的には昨年の世界選手権女子ロードは、昨年の年間ベストレース。最後は鳥肌ものだった。本当に面白かったので、今年も期待している。