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アークティックレース・オブ・ノルウェー 2023|出場選手まとめ

 

8月17日からノルウェーで開催される【アークティックレース・オブ・ノルウェー】。10回目を迎えるまだ歴史の新しいステージレースは、最北の地で行われるロードレースだ。ステージは丘陵が4つ。今年は6つのワールドチームと8つのプロチーム、3つのコンチネンタルチームと、ノルウェーのナショナルチームが出場する。ワールドチームも若手主体で挑む。

そんな北欧のレースは、なんといっても景観が素晴らしい。氷河で削られた山々と深い色の海が織りなす絶景は、普段見慣れているフランスやイタリアとはまるで違い、日本で熱帯夜を過ごす我々に清涼感を味あわせてくれる。そして若手選手の活躍が多いことも特徴だ。ビッグネームが少ないレースで名を挙げたい選手、あるいは来期の契約を勝ち取るために必死になる若者の姿は見ていても爽やかさの中に情熱が入り混じり、また総合争いが僅差で決着することも多いので、面白いレースが多い。以下、各ステージと注目選手を簡単に紹介する。

このブログでは基本的にワールドツアーのカテゴリーのレースだけ出場選手まとめページを作っているが、このレースはJSPORTSでも中継されるために作った(昨年も意外とアクセス数も多かった)。なお、今回出場する多くのプロチームとコンチネンタルチームの選手は残念ながら知らない選手が多いため、胃いつも以上にコメント内容は薄いことは申し上げておきます。

*選手が変更の可能性あり。表内の選手のUCIランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

 

◎ステージプロフィール

◆Stage1(8月17日/丘陵):Kautokeino  >  Alta

 距離171km|獲得標高1357m

スタートからゴールまで終始細かいアップダウンが続くが、勾配も緩く短いので大きな集団でゴールを目指すことになるだろう。フィニッシュラインはアルタの街を周回コースで、二つの丘を3周するところでアタックをかけるチームは出てきそうだが、ゴールも登り基調とはいえ平均勾配は4%に満たないので、おそらく集団スプリントに持ち込まれる。スプリンターに加えて、パンチ力のある総合系の選手もステージ優勝に絡むだろうか。

 

 

 

◆Stage2(8月18日/丘陵):Alta  >  Hammerfest

 距離163.4km|獲得標高1588m

stage2もスプリンターをふるい落とすほどの登坂はなく、集団スプリントになると予想。ただし、序盤から連続する登坂は大きな逃げを生むかもしれない。中盤までの下り終えるまでにタイム差がつくようだと逃げメンバーによってはチャンスがありそう。また、ゴールは短いながらも前日よりは勾配があり(0.9km/平均勾配6.1%)、スプリンターよりもパンチャー系の選手が勝算が強くなるか。

 

 

 

 

◆Stage3(8月19日/丘陵):Hammerfest  >  Havøysund

 距離167km|獲得標高2183m

唯一の山頂フィニッシュと呼べるステージで、最後の平均勾配10%を超える急坂のゴールは総合争いをする選手たちの勝負どころ。ただしクイーンステージと呼ぶにはいささかゆるい印象で、終盤に迎える二つのカテゴリー山岳から勝負は始まると思うが、総合争いは大きなタイム差はつかないだろう。逆に言うと、それだけスリリングな勝負がくりひろげられる。

 

 

 

 

◆Stage4(8月20日/丘陵):Kvalsund  >  Nordkapp

 距離171.4km|獲得標高2053m

終盤の二つの山が終わるまで、総合争いは終わらない。ほとんどタイム差はつかないで最終ステージを迎えて、総合順位は大きく変わる可能性は高い。昨年は(コースは違うが)レクネスンが最終日に20人以上総合順位をごぼう抜きにして逆転の総合優勝を飾った。ゴール手前の超級山岳は3kmで平均勾配7.7%と、ここでの登頂が最終順位を決定づけるだろう。

 

 

 

 

 

◎総合優勝候補

本命は4強。ディフェンディングチャンピオンのアンドレアス・レックネスンは、今季はジロでのステージ優勝とマリアローザ着用の勇姿も記憶に新しく、大きく成長して母国レースに凱旋する。来年はウーノエックスへの復帰も決まり、このレースにかけるモチベーションもかなり高いだろう。対抗馬は母国レースになるウーノエックスのトビアス・ヨハンネセン。一昨年のツール・ド・ラブニールで総合優勝者は、今年のツールでは4つのステージでトップ10に入るなど、もはや実力には疑いようがない。MTBジュニア世界選手権で銅メダル、シクロクロスで2年連続ノルウェーチャンピオンでもある。登坂力とスプリント力ではTヨハンネセンが上で、タフさではレックネスンが上という印象。アシストも含めた終盤までのレース運びのうまさが勝負を分けるかもしれない。

若きノルウェー人たちの前に大きく立ちはだかるのは、ギョーム・マルタンディラン・トゥーンス。実績で言えばこのクラスのレースでは別格といえる存在になるが、どちらも優勝からはしばらく遠ざかっており、その分勝利に飢えているとも感じる。特にトゥーンスは昨年の移籍後成績はかなり落ち込んでいるので、本人的には危機感を感じているのではと思うが、勝てる力が現在あるかというとやや疑問。

他の上位候補では、クリスティアン・スカローニは成長中のクライマーで調子も上げてきている印象。ロジャー・アドリアはステージレースではめぼしい成績はないがワンデーでは上位に名を連ね、総合上位は十分狙えるだろう。2021年U23世界王者のフィリッポ・バロンチーニと、2年前にはブエルタでステージ優勝し総合でも上位に入ったクレモン・シャンプッサンも、少し伸び悩んでいる印象もあるがコンディションが合えば上位に絡んでくる。ケヴィン・コッレオーニポール・ダブルも総合系のライダーとして成長中で期待感はあるが、成績にはかなりムラもあり、コンディション次第の印象も。母国ノルウェー人では、カールフレドリク・ハーゲンオドクリスティアン・エイキング(EFではなくノルウェーナショナルチームとして参戦)も中堅どころの実力者。二人ともここ2年ほどは成績が落ちているが、このレースではモチベーションは高いはず。

個人的に気になる若手有望株は、ケヴィン・ヴェルマーク。今年急成長中の若手アメリカ人クライマーは、サンセバスティアンで21位、世界選手権で20位と今一番勢いがあるかもしれない。もしかしたら表彰台争いに加わる可能性もあるとさえ思っている。

他の上位候補は下記表を参照。

 



 

 

◎その他の注目選手

上記総合優勝候補以外でのステージ優勝争いに絡みそうな選手をピックアップした。表では《スプリンター(パンチャー含む》《その他有力選手》に分けていて、stage1と2の集団スプリントではスプリンターが優勝候補で、その他有力選手は全体を通して逃げなども含めて活躍を期待している選手。

純粋な平坦ステージはないので、トップスプリンターは参加していない。その中では、ダイネーゼが頭ひとつ抜けて強い印象。ただし、登り基調のスプリントになるので、フェデーリティッツァも十分勝負できそう。若手ではグルパマの育成チーム所属のノア・ホッブス(19歳イギリス人)は気になる存在。まだめぼしい活躍はしていないがいくつかのレースで才能の片鱗は示している。初のプロクラスのレースでどんな走りを見せるか注目したい。

《その他有力選手》でも若い注目株がちらほら。世界選手権での活躍が印象深い(驚きの7位!)マチュー・ディナム、ジロでの大躍進が光ったマルコ・フリーゴ、昨年から積極的なレースをするヨナス・グレゴー、2022年アジア選手権王者のイゴール・チザンと、将来を期待したいメンバーは多くいる。彼らは積極的に逃げに入ったり、目立つことが予想される。その中で一人特に気になる選手は、8月1日にトレイニーでアルケアのデヴェロップメントチームに入ったばかりのマルティン・ジョッタ。おそらくほとんどの人が知らないと思う(僕も知ったばかり)が、ほぼジュニア等の下のカテゴリーのレースとはいえ、今季23レースを走り4勝し16レースでトップ10に入るという好成績を残している22歳。今大会が初のプロカテゴリーのレースでどんな走りを見せるのか注目したい。

選手は一人もピックアップしていないがコンチネンタルチームでは、チーム コープ・レプソル(ノルウェー人ばかり)とTOJで来日していたトリニティ・レーシング(若い子ばかり)も出場する。

 



 

◎過去の総合成績(2022年、2021年、2019年)

参考までに過去3年間の総合成績10位までと各賞(ポイント賞・山岳賞)を入れておく。所属チームは今季との比較も。なお2020年はコロナ渦で中止になっている。

出場選手に過去の優勝経験者は、レックネスン(2022年)、Dトゥーンス(2017年)。

 

 

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