【ブエルタ・ア・エスパーニャ】が激動の二週目を終えた。ここまでの成績を(メモ程度で)簡単に振り返る。
*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月時点。
◎総合成績上位
ユンボ、ユンボ、ユンボ。前週から懸念された個人TTも乗りこなしたクスがマイヨロホをキープし、トゥールマレー山頂フィニッシュのstage13で優勝したヴィンゲゴーと3位に入ったログリッチが総合順位も上げて上位三人をユンボが独占。もはやどのチームが優勝するかではなく、ユンボが表彰台を独占できるか、の勝負になってしまった。
前回覇者のレムコは大きく失速したものの翌日にステージ優勝し、存在感を発揮。レニー・マルティネスも大きく順位を落としたが、アイデブルックスはまだ上位に名を連ねる立派な成績。ソレル、ランダは少しづつ順位を下げていて、どれだけ上位に粘れるか。アユソとマスは表彰台を目指してワンチャンあると思う。総合トップ10の顔ぶれはほぼ見えてきた。あとは少しでもいい順位を目指せるか、落とさないでいられるかのサバイバルな3週目が始まる。*3週目に予想される展開は、下記「その他・雑感」に記載。
◎各賞上位
各賞の5位までを表にした。
ポイント賞は前週に続きグローヴスが大きくリード。だが、このまま最後までいられるかは不透明さが増してきた。2位にジャンプアップしたレムコの勢いが凄い。逃げでスプリントポイントもステージ優勝もさらうなら一つのステージで50ptが獲得可能。2つステージ優勝するなら逆転するポイント差。グローヴスが平坦ステージが残り二つあるので有利なのは間違いないが、取りこぼしてはいけない状況は想定外か。3位以下もスプリンター以外でステージ優勝に絡む逃げ屋が上位に入っている。
山岳賞争いは、stage14で逃げからのステージ優勝を果たしたレムコが大量に山岳ポイントを獲得し、一気に首位に浮上。総合優勝を諦めたレムコには山岳賞獲得は新たな目標になっている。stage17・18・20と大きくポイントは稼げるので、まだ順位は変わる可能性はあり、ストーラーとバルデも山岳賞狙いで逃げに入る展開が多いが、レムコ相手ではちょっと分が悪そう。
ヤングライダーは、アユソが首位に。このままトラブルがなければ順当にアユソになると予想。とはいえ、アイデブルックス、アルメイダ、ブイトラゴと皆がヤングライダーになってもおかしくない立派な成績。ブエルタは例年若い子が活躍するのが嬉しいところ。
チーム総合はユンボとUAEが鎬を削っている状態。それでも総合上位3名を独占しているユンボがリードしつつ、このタイム差で追っているUAEも見事。ボーラとバーレーンも頑張っているが、5位モビスター以降は大きくタイム差が開き、チーム力の格差は感じる。
◎各ステージ優勝選手
各ステージの上位3名を記載。レース展開は割愛します。
◎その他・雑感
最後のグランツールも2週目を終えて、いよいよグランフィナーレが近づいてきた。ユンボによる史上初の同年での全グランツール制覇は現実味を強くしたばかりか、表彰台独占も見えてきた。ユンボ恐るべし。3人の力もさることながら、レース戦略が悉く上手くいっているのがチームとしての凄味を感じる。
ユンボはおそらくクスでマイヨロホを狙っている。ログリッチとヴィンゲゴーのエース問題に波風立てず(二人の関係性はとても良好には見えるが)に、功労者としてのクスの戴冠はチームとしてもエース二人とも異存はないだろう。ヴィンゲゴーには進んでアシストをしている印象さえある。果たして来年のチーム体制はどうするかということは先延ばしであるが。ただ、個人的では、クスが来年エースになるとは今は思えない。個人TTもログリッチやヴィンゲゴーとは比較にならないし、この二人のエースがいなかったらクスの総合首位はなかったと思うからだ(クスの登坂能力がトップレベルなことに異論はないが、いま総合首位にいるのはstage6での逃げによる3分のタイム差の貯金があるからで、二人のエースがいなかったら逃げ容認されなかったはず)。そういう意味でも今度訪れるかどうかわからない総合優勝のチャンスに賭ける思いはクスはマックスだろうし(ダジャレではない)、クスが勝つことがこのチームを支えているヴァルテル、ケルデルマン、ヘーシンク、トラトニク、ファンバーレという優秀な選手たち全員のための勝利だと思えるのだ。
ユンボの表彰台独占を阻む可能性としては誰かの失速以外には考えにくいが、脅かす存在になり得るのはアユソだろう。休息日のインタビューでも「失うものはないよ。たとえ失敗しても4位が8位になるくらいなら、大したことではない。チャレンジしたいね」と意気込みを語っていた。stage17・18・20は総合順位が動く可能性があるステージで、まだ3つもあるのだ。特にstage17のアングリルでは大勝負してくることを期待。とはいえユンボだって最大の警戒をしているはずで、簡単なことではない。
レムコはstage10の個人TTであまり状態が良く見えなかった(それでも2位だった)。タイムを稼げなかったことと、走り終えた時の表情がジロで失速した時と同じ顔つきで心配していたら、stage13で序盤から大きく失速。総合順位を落としたばかりか、そのまま棄権するのではと思うほど憔悴していたが、なんと翌日に復活。有り余る元気を見せつけ大逃げ合戦からの全員を振り切ってのステージ優勝は、前日の失速よりも驚いた。総合勢もタイム差があったので容認したとはいえ、最後の登坂も含めてメイン集団に8分差をつける圧勝劇。やはり、レムコにはこの“容赦ない独走スタイル”がとても似合う。このまま山岳賞とステージも二つくらい狙っていそうだ。
*上記はあくまで、個人的な妄想です。
◎一週目の成績まとめ(stage9終了時)はこちら
◎レース前の出場選手まとめはこちら