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ジャパンカップ 2023|海外チーム出場選手まとめ

 

10月14・15日に日本で開催されるジャパンカップ。今年は記念すべき第30回目の大会になる。日本で唯一のUCIプロクラスのワンデーレースであり、海外の一線で活躍するワールドチームのライダーたちが来日する。今年は過去最多の7チーム(昨年までワールドチームだった2チームも合わせると9チーム!)で、有名どころも多く盛り上げを期待している。なお日本チームも有力選手もいるが、このブログでは海外チームに限定した情報です。

*情報は10月12日現在。出場選手は変更の可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2023年10月12日時点。

 

 

 

 

◎レース概要

ロードレースはお馴染みの森林公園(1周10.3km)を16周する総距離164.8km総獲得標高は3232mに及ぶコースだが今年は2周増量(去年までは14周)。登りと下りを合わせるとコースのおよそ半分を占めるのが名物の古賀志林道。勝利するには登坂力が必須で、かつテクニカルなダウンヒルもこなせるタフなクライマーやパンチャー向け。レース展開としては、通常のケースでは序盤の登坂で若手などで数人が抜け出して先行し(優勝候補チームの前待ちアシストも入るかも)、メイン集団が追いつつ中盤から終盤にかけて徐々に選手が脱落していく展開になり、残り2〜3周で逃げグループを吸収してからアタックする優勝候補らが数人でゴールを競う。しかし、昨年は序盤から優勝候補チームがハイペースで先行し集団全体を破壊してしまった。今回も予想外の展開に持ち込まれるかもしれない。チームとしてはトレッククイックステップが中心になって、EFアンテルマルシェロットが絡んでいくと予想している。どちらにしても、残り3周あたりからの古賀志登坂は目が離せなくなるだろう。山岳ポイントは3・6・9・12周時に設定されているので、そちらの山岳賞争いも注目。なお当日は雨予想で、厳しいレースになるかもしれない。

前日のクリテリウムは宇都宮の市街地(1周2.25km)を15周する周回コース。翌日に控えたロードレースへの脚馴らしや選手のお披露目の舞台でもあり、彼らの仕上がり具合をチェックしておきたい。クリテリウムは高速で展開し集団スプリントで決着することが多く、ロードレースとは違うスピード自慢の選手が勝利を狙う。スプリント賞のポイントは4・8・12周に設定されている。

 


*レースの詳細や日本チームの情報はジャパンカップ公式webサイトをご覧ください。

www.japancup.gr.jp

 

*選手の様子はジャパンカップ公式youtubeチャンネルのチームプレゼンテーションも。

www.youtube.com

 

 

 

◎海外チーム紹介

ワールドチーム7つプロチーム2つの計9チームの選手たちをざっくりとまとめた。出場選手は公式ページで写真入りで紹介されているので、そちらもおすすめです。このブログでは選手のデータ中心に紹介します。データはチーム毎に《名前/脚質タイプ/国籍/年齢/UCIランク/勝利数(今年の勝利数)と備考》《コースとの相性(前日開催のクリテリウムも)/実績/コンディション》を表にまとめてます。*主観に基づいています。なお、備考欄にはトレイニーや育成チームに所属する若手、今期で引退する選手、来期の去就が不明の選手等を記載している。未契約ながら出場する選手は当該チームと延長契約することが多いと思いつつ不明のため、彼らが見れる貴重な機会になるかもしれない。

ゼッケンは執筆時点では発表されていないので、公式webサイトをご確認ください。

 

 

バーレーン・ヴィクトリアス

新城幸也が所属していて日本ではお馴染みのジャパンカップ常連チーム。エースは我らが新城幸也が務めると予想。過去11回出場しトップ10には4回入り、海外勢ではレースを知り尽くしていることや、母国レースでの圧倒的なユキヤ人気は彼の背中を強く押してくれるはず。昨年は11位で、2015年の3位が最高。好成績を期待したい。昨年4位に入ったペーンシュタイナーも勝負をしてくるかもしれないが、ここしばらくはあまり調子はよくなさそう。エースクラスは連れてきていないのはユキヤで勝負するというチームの意志を強く感じたりもする。

クリテリウムではニコロ・ブラッティが勝負するかも。今季途中に昇格してきた若手だが、アンダーのレースでは何度も表彰台に上がる等スピードはなかなかのもの。

 

 

コフィディス

昨年に続き2度目の来日。メンバーは全てフランス人で、クライマー中心でレース向きの選手を揃えてきた印象。そのうち二人、ピエールリュック・ペリションフランソワ・ビダールが今期末で引退(つまりジャパンカップが現役最後のレースになる)するので、ぜひ声援を送ってほしい。二人とも昨年も参加してくれている。

エースはギョーム・マルタン。実績は出場選手中でもトップクラスでグランツールで総合トップ10に3回も入っているGCライダー。マルタンは成績が非常に安定しているのも特徴。スプリント力や爆発力はないが、常に上位に絡むクレバーな走りをし、ほとんどのレースを完走する鉄人ぶりは驚異的である(DNFは誰よりも少なく昨年ツールでCovid19に罹ってリタイアしたのがおよそ4年ぶり)。また昨年は日本を気に入ってくれたようで、ジャパンカップで来日してさいたまクリテリウムまで日本に滞在し楽しんでたのもポイントが高い。

クリテリウムではアクセル・ジングレ。昨年のクリテリウムで2位になり、その雪辱を晴らせるか。出場選手中、スピードは間違いなくトップクラス。昨年ブレイクした若手で今年も春から好調だったが、夏以降は少し調子を落としている印象。

 

 

◎EFエデュケーション・イージーポスト

昨年まで日本の中根英登が所属していたり、下部育成チームには留目夕陽や門田、織田等6人も日本人がいたり、日本には縁深いチームで(日本のNIPPOがスポンサー)、昨年はニールソン・パウレス(今年は出場しない)が優勝したディフェンディングチャンピオンチーム。昨年2位に入ったアンドレアス・ピッコロも好成績を期待したいが、今年は少し伸び悩んでいる印象から、エースはサイモン・カーと予想。直前のランカウイで総合優勝し、ひと皮むけた雰囲気。状態の良さは出場選手中でもトップクラスかもしれない。チームのエースクラスは来ていないので飛び抜けた成績の選手はいないが、中堅どころのクライマーで固めてきたメンバー構成は悪くない。

クリテリウムでは誰が勝負するかわからない。ミケル・ヴァルグレンオドクリスティアン・エイキングかも、違うかも。なおヴァルグレンは今年は育成チームに所属しているが、昨年負った大きな怪我の治療にほぼ一年掛かったためで、来年はトップトームに戻る。まだトップコンディションではないが、怪我前は世界選手権で3位に入るほどの力のある選手。決して侮れない。

 

 

◎アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ

ワールドチームに昇格して3年目ながら、年々プロトンで存在感を高めているベルギーのチームもジャパンカップ初参戦。ベテランの実力派クライマーを揃えてきて、戦力的には出場チーム中トップクラス。優勝候補と呼んで差し支えないほどの強力なメンバーだ。

エースはルイ・コスタ(*当初出場予定だったロイック・ヴリーヘンから変更)が務めるか、調子を上げてきているロレンツォ・ロータゲオルク・ツィマーマンとのトリプルエースかもしれない。コスタは世界選手権も勝ったことがある実力者ながら、ここ数年は大きく成績を落としていたがアンテルマルシェに移籍して3年ぶりの勝利をあげると、今季4勝と復活。ロンバルディアで13位、前哨戦のグランピエモンテでも5位と調子はかなり良さそう。ロータもワンデーで好成績を残しているチームの稼ぎ頭で、ツィマーマンは昨年ブレイクして今年も成長中の若手。秋のイタリアのワンデーではトップ10を連発、コンディションも良好。レイン・タラマは粘りのある走りをするベテランクライマーで、逃げに乗ったりしたら面白い。育成チーム所属のフランチェスコ・ブサットは密かに注目している若手有望株。リエージュU23で優勝するなど好成績を連発、秋からはトップカテゴリーのレースに出場し、しっかりメイン集団でゴールしている。間違いなく来年出てくるので今から覚えておこう。

クリテリウムはロータで勝負するかもしれない(今年はバンチスプリントにも意欲的で上位に絡んだりする)が、基本的にはロード向けの選手構成。

 

 

◎リドル・トレック

日本でも人気が高く、ジャパンカップ最強といえるチーム。毎年このレースに勝負をかけてくる(観光目的の遊び半分ではない)選手を集めてくるのも好印象。現役時代から親日家で監督になっても来日してくれるポポビッチ監督も日本では大人気であり(下手すると選手よりもファンが多いかも、今年は不参加)、今回から大会アンバサダーに就任した別府史之氏もトレックとの縁が深く、今回から新チーム名になったカラフルなジャージ姿の存在感はどこよりも強いだろう。

エースはジュリオ・チッコーネ。昨年(7位)に続きジャパンカップ参戦。今季キャリアハイといえる成績を残して絶好調のシーズンを過ごしていたのだが、直近のレースで落車し腰を強打した怪我の状態は気になるところ。来月のさいたまクリテリウムでも山岳賞ジャージで参戦予定なので、怪我の完治を願うばかり。プロトン屈指のイケメンでもあり日本でも人気は高い。仮にチッコーネの調子が良くなければバウケ・モレマがエースだろうか。ジャパンカップは過去3回出場し、2回優勝している古賀志マイスター。今年は成績が落ち込んでいるのは、さすがに年齢からくるものなのか気になるところだが、日本でも人気が高く大きな声援を受けて上位に絡むことは期待できる。ジュリアン・ベルナールも登坂力のあるベテランクライマー。昨年ジロでブレイクしたフアン・ロペスは昨年終盤からやや不調な時期を過ごしたが、ブエルタでは好走し復活傾向。伏兵としては面白い存在になるかも。陽気なキャラクターもあり、印象に残る活躍を期待したい。

クリテリウムではエドワルト・トゥーンスジャパンカップクリテリウムを2連覇中(Covid19による中止期間を挟んで)で、今大会も実力・実績ともにスプリンターでは一番。間違いなく上位に絡む。

(*当初出場予定だったケニー・エリッソンドは欠場)

 

 

◎スーダル・クイックステップ

実績・人気ともにトップクラスのチームの来日でウルフパックファンで宇都宮は埋まるかもしれない。なんといってもジュリアン・アラフィリップである。2年連続で世界選手権に勝った本物のスーパースター。当初出場予定だった東京オリンピックを辞退(ベビーの出産絡みもあってか)してから、待望の初来日がようやく実現。画面越しでもオーラが漂う。前夜祭から(来日時の空港からかも)盛り上げてくれるのは間違いなし。

エースはアラフィリップではなく、イラン・ファンウィルデルと予想。今年一気に伸びた若手の一人で、直近のイタリアのレースではポガチャルとログリッチを置き去りにして優勝し、力と勢いは今大会の優勝候補で間違いない(ロンバルディアでは20位)。他にもクライマーのジェームス・ノックスファウスト・マスナダとコース適性の高そうなクライマーを揃えて、アシスト体制も強力。チーム力でも今大会1-2を争うレベルのメンバーを揃えている。個人的にはムードメイカーのピーテル・セリーが来てくれたのもかなり嬉しい。レムコの勝利したレースのほとんどをアシストし、ジロをたったの二人で完走したウルフパックのひとりでもある頼れるアシスト。レムコの勝利パーティでいつも踊っている陽気な姿は印象的で、ウルフパックが好成績を残せば間違いなく踊る・笑 彼のファンが日本で増えてくれると嬉しい。

クリテリウムではスタン・ファントリヒト(*当初出場予定だったマルティン・スヴルチェクから変更)がエースになるかも。来季はアルペシンへ移籍することが発表されたばかりで、ウルフパックへの置き土産を作れるか。

 

 

◎チーム ジェイコ・アルウラー

オリカ・グリーンエッジ時代から日本でも人気の高いチーム。エースはエディ・ダンバー。今季イネオスから加入し、ジロで総合7位になるなどGCライダーとしてチームで大活躍。ブエルタでは落車したがかなり回復できている印象で、期待して良さそう。ルーカス・ハミルトンケヴィン・コッレオーニも総合系の次期エースとして期待される有望株だが伸び悩み気味で、今年はあまりいい成績を残せていない。トレイニーのハミッシュ・マッケンジーは今大会最年少。19歳ながらU23世界選手権ITTで3位に入った有望な若手で、覚えておいて損はない。

クリテリウムではフェリックス・エンゲルハートで勝負だろうか。スプリンターではないがスプリント能力も高くワンチャンあり。

 

 

◎ロット・デスティニー

育成チームの二人を含む3人がヤングライダーで、若く有望な選手が中心のメンバー構成。エースはマキシム・ファンヒル。今年一気に力をつけた若手の一人。アルデンヌクラシックで好成績を連発しジャパンカップとの相性は抜群。直近のイル・ロンバルディアでも14位に入り、コンディションもとても良さそう。昨年のジャパンカップでも5位になりコースを経験しているのも好材料で、個人的に優勝候補の筆頭。ベテランのエドゥアルド・セプルペダがサブエース的な存在か。今季2勝をあげていて、古賀志のような登坂は得意なタイプのベテランクライマー。こちらも好成績を期待できそう。ラムセス・デブライネイル・ロンバルディアU23で3位、リエージュU23で4位に入るなど、将来性を高く感じさせる若手クライマー。

クリテリウムではパスカル・エインコールンがエースかも。それほどスピードはあるわけではないが、スプリンターに先行する走りもできて勝機はありそう。若手のミランパウルが発射台役か。

(*当初出場予定だったジャラッド・ドリズナーズは欠場)

 

 

イスラエル・プレミアテック

二人の大ベテランにトレイニー二人と育成チームの一人で計3人の若手を連れてきた。今年のイスラエルは次々に若手が好成績をおさめていて好印象。ジャパンカップには昨年も出場予定だったが、直前に体調不良の選手が続出し出場回避したので、今回が初来日である。今大会の目玉のひとり、クリス・フルームは注目度の高いレジェンド。来てくれるだけでありがたい。怪我以降ここしばらくは残念ながらレースでは全く結果を出せていないが、レースに出ればどこでも多くのファンが集まり、さすがの存在感。

エースはベン・ヘルマンスイスラエル移籍後はいいところがなかったが、もともと力のある選手でメンバーの中では実績はトップクラス。直近の中国のレースのツアー・オブ・ハイナンで好走し総合4位に入り、状態はあがってきている印象。

クリテリウムではライリー・シーハンは注目度が高い若手スプリンター。直近のパリ〜トゥールでは逃げ集団でのスプリントで鮮烈なプロ初勝利。8月にトレイニーとして加入したばかりだが、スプリント力はありそう(ロードレースはおそらく厳しい)。

また先日起こったハマスのテロ行為によりイスラエル国内では多くの人々が傷ついたことで、闘志を燃やしているチームでもある。彼らに直接の影響はないが、下部組織のアカデミーやクラブチームでは様々な被害も出ていてレースどころではない状況だろうが、その分彼らには頑張ってほしい。

(*当初出場予定だったガイ・サジフは欠場)

 

 

◎優勝候補(独断と偏見)

◆10月14日(土)・クリテリウム

★★★ エドワルト・トゥーンス(リドル・トレック)

★★ アクセル・ジングレコフィディススタン・ファントリヒト(スーダル・クイックステップ

フェリックス・エンゲルハート(チーム ジェイコ・アルウラー)ライリー・シーハンイスラエル・プレミアテック)パスカル・エインコールン(ロット・デスティニー)

 

◆10月15日(日)・ロードレース

★★★ マキシム・ファンヒル(ロット・デスティニー)

★★ イラン・ファンウィルデル(スーダル・クイックステップルイ・コスタ(アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)

ギョーム・マルタンコフィディスサイモン・カー(EFエデュケーション・イージーポスト)エディ・ダンバー(チーム ジェイコ・アルウラー)ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)

 

*レースはジャパンカップyoutubeチャンネルでライブ中継があります。

www.youtube.com