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イル・ロンバルディア 2023|出場選手まとめ

 

10月7日にイタリアで開催される第117回目の【イル・ロンバルディア】。今年最後のモニュメントにふさわしい豪華なメンバーが揃った。『落ち葉のクラシック』とも呼ばれる秋に開催される最大のワンデーレースで、今年の集大成としてGCライダーを中心にクライマーたちが狙うビッグタイトル。ワールドツアーは残り1戦ツアー・オブ・グワンシー(10/12-17・中国)があるが、ヨーロッパのレースも残り少なく(ちなみにプロシリーズは残り4戦/ジャパンカップ含む)、これが今季最終戦になる選手も多い。引退や来期チームが変わる選手は見納めになるので、少し寂しい気持ちにもなるレースである。

なお今回で《ワールドツアーの出場選手まとめ》というくくりでのプレビューは最終回になります。2年間に渡りご覧いただいた方には感謝します。ブログは少し形をかえて継続予定で、近々お知らせします。

*情報は10月6日現在。出場選手は変更の可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点(およそ一年前だからずいぶん順位変わっちゃってて申し訳ない)。

 

 

 

 

◎レース概要

コモからベルガモへ向かう(昨年と逆の進路)総距離238km総獲得標高は4646mに及ぶクライマー向けのタフなレース。2年前にポガチャルが制覇したときとほぼ同じコース。有力選手が入る面白い逃げメンバーが形成されるかもしれない。ヒーリーやヨルゲンソンあたりに逃げてほしい。勝負所は中盤から終盤にかけての大きな山岳のザンブラ・アルタパッソ・ディ・ガンダ。どちらも登坂距離が長く、集団は少しずつ人数を減らしていきそうだし、逃げの選手もこの前後で捕まる可能性が高い。ここで優勝候補がアタックし小集団になり(下手すると2-3人に絞られる)ゴールへ向かうと予想。ゴール直前にある小さめの峠コッレ・アペルトも差をつけられるポイント。わずか1.3km・平均斜度6.9%程の登りだが最大で14%を超え、230km以上走ってからのこれはキツい。2年前はベノート(当時DSM)がパッソ・ディ・ガンダでハイペース牽引して集団を破壊、頂上付近の急勾配区間でポガチャルが単独アタックして勝利した。

 

 

 

◎優勝候補

本命は3人。現在2連覇中の暴君タデイ・ポガチャル。そのポガチャルに直近の2つのワンデーレースで先着しているプリモシュ・ログリッチ。ブエルタでも圧倒的な存在感を発揮したレムコ・エヴェネプール。三つ巴といっていいだろう。UAEのチームメイトも最強クラスの陣容でポガチャルは優勝候補筆頭といえるが、直近のレースを見るとトップコンディションではなく、どれだけ調子を上げてこれるかが勝負を分けそう。対してログリッチは直近のレースでポガチャルを完全に制圧していて好調であり、来期からボーラへの移籍も決まったためユンボでのラストレースになる。8年間過ごしたユンボへの置き土産としては最高のタイトルだろう。ジロ勝利もありイタリアのレースには相性も良い。レムコはブエルタ以来のレースだが、狙ったレースへの集中力は凄まじく、コンディションを合わせていれば単独での独走勝利もありえる(個人的にはレムコ優勝予想)。合併問題に揺れているクイックステップ(敢えてスーダルでなくクイックステップと呼ぶ)では、ファンウィルデルとバジオーリが素晴らしい勝利を挙げていてチームの士気も高い(現在の報道では合併は破談になる様子)。レムコの懸念点は、以前橋から転落したレースであることのトラウマか(もう克服してるとは思うがイタリアのレースとは相性が悪い)。誰が勝っても見ごたえある印象的なレースになると思う。

上記の3人が抜きん出ている印象ではあるが、レースは何が起こるかわからない。他にもモニュメントにふさわしいといえる実力者たちが揃っている。他の候補は下記表を参照。表は上位10名とそれに次ぐ優勝候補に分けているが、それほど力の差はない。特にUAEはかなりやばい。現在確変状態といえるヒルシは絶好調で、ここひと月走ったワンデーレース9戦は全てトップ10に入っている。レムコの強烈なアタックが炸裂したときに唯一ついていけそうにも思うほど、3人を食ってしまえる雰囲気を最近のレースでは感じる。年間通してずっと好調を維持しているアダム・イェーツも実力的には文句なしだが、ポガチャルのアシストとして力を使い果たしそうで、優勝候補からは外した。他にもマイカフォルモロウリッシとUAEのクライマーのアシスト層は厚く、中盤の登坂ではUAEが集団をコントロールする可能性が高い。

これがラストレースになるピノも注目したい。2018年には制覇している相性のいいレースであり、さすがに優勝は厳しいまでも魅せる展開を作りそうな期待感があり、イタリアでも人気があるので盛り上げてくれそうだ。昨年2位のマス、3位のランダ、5位のカルロス・ロドリゲスと、ここ最近の好調さ・実力では、ウラソフマルタンカラパスシヴァコフも優勝候補にあげたい。悩んだ末にトップ10候補からは漏れたが、今年はワンデーでも強さを見せるオコーナーブイトラゴ、今年のアルデンヌクラシックでブレイクしたファンヒルス、最年少ながら強烈なパンチ力で存在感を示すグレゴワール(200km超えのレースはまだちょっと苦しいかも)も好成績を期待したい。バルデサイモン・イェーツウッズらのベテラン組も上位候補。若手で個人的な注目株として、先日ロンバルディアの前哨戦でポガチャルとログリッチを下して優勝したファンウィルデルはレムコのアシストながら上位候補にあげたい。レース後のチーム存続を訴える力強いインタビューも印象的だった。あれが今回の(クソな)合併劇を消滅させる潮目になったかもしれない。元々レムコの影武者的な扱いで加入した彼も(同い年のベルギー人で背丈も近くベルギー代表でチームメイトだったからだが、そもそも実力がなければレムコの影武者は務まらない)レムコがCovid19陽性で離脱したジロでエースばりの活躍をするなど相当なポテンシャルを見せていたが、逆境になるほど強さを発揮してきた強メンタルは、特筆に値する。今年の8月にドルテェランド・ツアーでプロ初勝利を挙げたばかりだが勢いは増すばかり。彼のレースは特に注目してほしい。

 

 

 

◎その他の注目選手

今回はレースプレビューの最終回ということもあり、おそらく過去最大人数をリストにした(いつもは泣く泣く最大でも30名には絞っている)。表がごちゃごちゃしていますが、お許しください。(各チーム2-3人を目安にしてはいます)

☆印の選手は注目選手。特にここひと月ほど調子を上げているイタリア王者のヴェラスコ、なんだかんだ好成績連発のティベーリ(素行はともかく才能があるのは間違いない)、昨年のイタリア王者のザナと母国イタリアのレースで気合の入っているクライマーたちは注目したい。マドゥアスヨン・イサギレルイ・コスタバルギルあたりも好調そうな実力者。昨年トップ10に入ったイギータモラールや、ウランチャベスモレマフルサンも実績十分な実力者だが、ここしばらくは成績が低迷。今回もちょっと厳しいかも。今年ブレイクした若手では、ツィマーマンヨルゲンソンクロンディナムは好成績を期待。

合併問題で揺れる2チームは全員ピックアップした(上記優勝候補に2名づつ掲載)。ユンボはログリッチ班と呼べる選手が中心で、ヴァルテルが最後のログリッチのアシストになるだろうか(ベノートかも)。サブエース級のケルデルマン、ジロでも貢献したボウマン、仲良しのオーメン(来期トレック)と、ログリッチにとっても心強い仲間が揃っている。中でもログリッチに請われて移籍加入したトラトニクは、残念ながら怪我もあって同じレースを走ることは少なかったので、今回は気合が入っていると思う。彼が集団先頭で走る姿が多くなるほど、ログリッチの勝利は近づくと思っている。ここにきて色んな意味で最も注目を集めているクイックステップは、レムコが優勝を狙いつつ、上記優勝候補にあげたファンウィルデル以外にも、千両役者アラフィリップ、今季3勝し才能が開花したバジオーリ(来期はトレック)、2年前にロンバルディアでポガチャルとマッチスプリントで敗れて惜しくも2位だった地元のマスナダ、レムコのペースに唯一ついていける登れるTTスペシャリストのカッタネオ、今年は怪我で苦しんだけど登坂能力ならチームでトップクラスのファンセヴェナントと、申し分ない強力なメンバー。

上位候補ではないが、かなり注目しているのはシェフィールド。このロンバルディアを完走すると史上2番目の若さでモニュエント全レース完走を果たすことになる。これは、真のオールラウンダーとしての彼のポテンシャルを証明する勲章になる記録だ。

エオロコメタグリーンプロジェクトのイタリアのプロチームは積極的に逃げに入ると思われる。そこの一緒に入ってほしい逃げに期待する有力選手は、ヒーリーオルダーニアレオッティヨルゲンソンテスファツィオンフォルトゥナートムルブラン等。なんならデヘント先生やガンナも逃げてもいいですよ。

 

 

 

◎過去の結果(2022年、2021年、2020年)

参考までに過去3年分の上位10位を入れておく。所属チームは今季との比較も

出場選手中、過去の優勝経験者は、ポガチャル(2022・2021年)、フルサン(2020年)、モレマ(2019年)、ピノ(2018年)、チャベス(2016年)。

 

 

 

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