2023年シーズン振り返り【チーム成績まとめ】
2023年シーズンの振り返り、第一弾はチーム成績。チームの順位をもとに成績を簡単にまとめていきます。チームランキングは最終的に昨年と同じような順位になったが、上位と下位チームでは格差はより一層広がったように感じる。ここでは全体の傾向について気づいたことをコメントしていく(個別のチームにコメントしていくととんでもないボリュームになるので、そちらは後述する《個別チームの成績まとめ》に記述する)。
*選手の個人成績まとめは準備中(11月中旬にアップ予定)
◎チーム成績(UCIポイント&勝利数)
*表の見方:UCIポイントによるランク順。18のワールドチームと上位4つのプロチームを記載。昨年との順位比較/2023年の獲得ポイント/勝利数(ピンクのチームは昨年よりも勝利数が多い)/各グランツールのステージ勝利数/ワールドツアー勝利数(ワンデー/ステージ総合)も。
なお前提としてチームのUCIポイント(以下ptと表記)については2023年は大きく変更された。チーム内の上位10名の合計→上位20名に変更。また大きなレースはpt設定が拡大された(例:ツール総合優勝は2022年1000pt→2023年1300pt)。UAEがユンボよりも勝利数が少ないながらptが高いのはチーム内の11位から20位までの選手が好成績ということもある(例:UAE20位Gベネット318pt、ユンボ20位アッフィニ113pt)。多くのptを稼ぐには、大きなレースでの好成績と同時に多くの選手が活躍することの両方が求められる。
2023年は、ユンボ・ヴィスマ、UAEチーム エミレーツが他を大きく引き離して首位争いを繰り広げた。UAEはチーム史上初の年間首位になり、ユンボは昨年を大きく上回るポイントを獲得したが、連覇はならなかった。それでもグランツール全ての総合優勝を飾るという史上初の偉業も達成し、勝利数も歴代最多を伺うほどだったことは最強チームだったと評価しても異論はないだろう。両チームともエースもドメスティークもスタッフも文句のいいようがない好成績である。歴史に残るほどの成績をあげた年として誇れるものだ。ちなみにUAEは、ジロ総合2位(アルメイダ)、ツール総合2位・3位(ポガチャルとアダム・イェーツ)、ブエルタ総合4位・9位(アユソとアルメイダ)とユンボとGトーマス以外には上位に入っている。
3位のスーダル・クイックステップは一見すると復活したように感じるが、実際はレムコひとり頼みの部分も多く、以前の“ウルフパック”と呼ばれて集団で勝利をしていた頃の最強チームとしての面影は薄い。同様にイネオス・グレナディアーズは4位ではあるが、UCIポイント・勝利数ともにかなり物足りない。盛者必衰。
大きく飛躍したのはリドル・トレックとロット・デスティニー。リドルがスポンサーに加わった7月以降は明確に成績が向上した。予算がかなり上がったと報道されて、スタッフや体制も含めてレースへの取り組み方が大幅に向上したことも理由の一つとして想像に容易い。今シーズンを迎えた時点でも有望な若手が多かったので期待していたが、シーズンオフには積極的に大型補強をしているので、来シーズンは更なる活躍が期待できる、とても良いスポンサー就任だったと思う(カラフルなチームジャージは最初見た時は子供っぽくてイマイチと思っていたのは内緒)。
続いてEFエデュケーション・イージーポスト、チーム ジェイコ・アルウラー、イスラエル・プレミアテックも成績を向上させた。大きく成長した若手がいることも共通項か。(例:EF=ベン・ヒーリー、マライン・ファンデンベルフ。ジェイコ=フィリッポ・ザナ、フェリックス・エンゲルハート、イスラエル=コービン・ストロング、デレク・ジーほか)。
大きく順位を下げたのはボーラとアンテルマルシェ。ボーラはチーム全体が軒並み成績を落とした。何か大きな原因がありそうで少し心配であるが、昨年が出来過ぎだったのだろうか。アンテルマルシェは多くの主力が移籍したことと怪我人が多く出たという不運もあるが、その辺りも含めたマネジメントにも少し問題があったのかもしれない。シーズン序盤はチームランキングで首位に立つほど好調だっただけに、もう少しやれたのではと感じる。来季は改善されていることを願う。
コフィディス、チーム アルケア・サムシック、トタルエナジーズもかなり成績を落とした。中でもアルケア、トタルはワールドチームへの昇降格も絡んでくるので、来シーズンは立て直しが必要である。
勝利したレースの視点では、上位のチームはレースのカテゴリーに関わらず全方位に強さを発揮した。ユンボ、UAE、クイックステップは全グランツールのステージとワールドツアーのワンデー/ステージ総合全てで勝利を挙げている(ポガチャル、ヴィンゲゴー&ログリッチ、レムコで半分以上を網羅する。彼ら絶対的なエースの存在はもちろん大きい)。逆に言うとその3チーム以外は出来ていない。そんな中では、バーレーン、アルペシン、ボーラは全グランツールで勝利し、チームが明確な目標を持ってレースカレンダーに臨んでいることと、選手層の厚さを感じるのは好印象。特にアルペシンはツールではフィリプセンが、ブエルタではグローヴスが複数ステージを勝利しポイント賞も獲得し、クラシックではマチューがサンレモとルーベを勝利するなど、レース巧者ぶりは際立った。
残念な方では、イネオスは全グランツールでたったの3つのステージしか勝てていないし、ワールドツアーのステージレースではひとつも総合優勝がないという事実は結構衝撃である。グルパマ、モビスターも中堅チームとしてのポジションは確率している印象だが、レースで上位に入る選手は多くても勝てる選手は少ないということが明確な課題と感じる。アルケア、ウーノエクスは大きなレースでは勝利がなかった。それだけ下位のチームでは勝利することが大変で、チームは二強がほぼ全てのレースを席巻している状態である。個人的には、その2チーム以外は共同戦線を張るなりしてもっと協力し合えばいいのに、などとも思うが(というか、できるだけ多くのチーム及び選手たちに活躍してほしい)。
チーム勝利数ではユンボが69勝をあげた。これはクイックステップが持つ年間最多勝記録(2018年72勝)に匹敵するほどで、歴代最強チームといっても差し支えないレベル(レース数も増えているので単純比較はできないが)。個人ではフィリプセンが最多の19勝をあげたが、7位にランキングされるグルパマの年間勝利数と同じというとその凄さがよくわかる。上位22チーム中半分の11チームはそれより下回る勝利数。トレック、EF、アルペシンが昨年の勝利数を大きく超えているのはかなりの好成績。また下位のチームでは、アスタナとウーノエクスがそれぞれ多く勝利したのも好印象(ただしアスタナはうち7勝はアジアのナショナルレースとシンガポール、九州の勝利であり、ヨーロッパでの勝利は少ない)。
昨年話題になったワールドチームの昇格・降格については2023〜25年の3年間の累計ポイントで決まる予定で、今年はその1年目。19位以下になったチームは来年以降に巻き返せないと降格に陥る可能性が高くなる。現状ではアルケアとアスタナが降格圏内。プロチームでは昨年降格したロットとイスラエルは18位以上に入っていて、幸先の良いスタート。またウーノエクスとトタルもワールドチームへの昇格が目標と過去にオーナーが発言しているので、上位だけでなく下位も熾烈な争いが待っている。プロチームの上位2チーム(2023年はロットとイスラエル)はワールドツアーへ自動招待されるのでpoint獲得には優位でありつつ、選手層も対応するスタッフも含めたレース活動はワールドチーム並みに大変ということでもある。ロット、イスラエルはもともとワールドチームだったので、その辺りの順応性には問題なかったが、アルケアやトタルが2023年に成績を落とした原因にはレーススケジュールに対応するチーム力の差もあったのではと想像している。
2024年に名称を変更するのは以下のチーム(2023年11月13日現在)
ロードレース界ではシーズンオフには多くの選手がチームを移籍するので(このオフは3割近い人数が変わる)、来年のチームランキングは、かなりの変動の予感がある。
*2024年のチーム陣容は年明けに記事を書く予定。
◎2023→2024の移籍状況はこちら参照
◎月毎の成績まとめはこちら参照
2023年の成績まとめ カテゴリーの記事一覧 - ロードレースみるひと
*1月から毎月のチームと選手をランキングにしてます。7・8・9月分はこっそりアップ・笑
◆2023年のチーム別成績まとめは以下、順次更新予定