ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

ロードレースファンのたったひとつの願い

 

これは《ロードレースは“競技”か“娯楽”か》の続きとして書いています。

大きく俯瞰する視点と身近な目線を意識して、愛すべきロードレースファンに向けての、ひとりの“にわか”からのメッセージです。

昨日、GCN+が終了するという最大震度のニュースが流れてちょっと微妙なタイミングだけれど、内容は全然関係ありません。

 

◎過去の記事はこちら

 

 

当たり前のことだけれど「ロードレースファン」と一口に言っても同列に語れないくらい多様化しているし、その状態は健全なことである。応援する選手の活躍や、海外でのレース観戦、日本人のマイヨジョーヌ着用…応援する人の数だけ、願いはあるだろう。それでも、ロードレースファンの願いとは、集約するとたったひとつだと思う。その前にまずは、それぞれの階層のファンに向けて伝えたいこと。

 

 

コアなロードレースファンへ

僕はあなたたちを(親しみを込めて)ヲタク(マニアくらいに止めるべきか)と呼びたい。

何年も、もしかしたら何十年もロードレースを見続けてきていることでしょう。まだレースを見始めたばかりの人もいるかもしれません。僕はキャリアも知識量も問いません。ロードレースが好きで、これからも応援しようとする考えてレースを欲する情熱がある人は全部、この括りです。

海外から来た選手の応援グッズを拵えて一生懸命応援するあなたたちに喜ぶ選手を見て、僕も誇らしい気分になりました。夜中にひっそりとヘッドホンをしてレース中継を見たり、時間が許す限り多くのレースを観れるようにしたり、レース前にスタートリストをプリントアウトしたり、友人たちとお酒やおつまみをお供に楽しく応援したり、スタッツをPCSで追いかけたり、レースの翌日は眠い目をこすって仕事に行ったり…。そんな日常を過ごしでますよね。共感ばかりです。

あなたたちがこれまでの日本のロードレース界を支えてきたと言っても、少しも間違いではないと思ってます。いつも熱心に応援してくれてありがとう。僕からのお願いはたったひとつです。「初心者ファンに優しくしてね」

これからも一緒に応援していきましょう。

 

 

ロードレースファンの初心者へ

僕はあなたたちを(ちょっと先輩なだけ)にわかと呼んで、歓迎したい。

ロードレースを見始めたばかりだから、まだ知らないことが多いんですよね。何年も観戦しているけど、いまだにツール・ド・フランスしか知らないとか、家の近くを通るレースがあったので、その時に選手を応援したり、知り合いがロードレース好きだから興味を持って動画を見た。・・・コアなファン以上にいろんな方々がいるでしょうね。僕も観戦歴は多くなくて、昔のレースや選手を知ってる方が羨ましかったり、引け目に感じることもあります。でも「レースをそんなに見ないから“ロードレースファン”と名乗りづらい」とか「全然詳しくないから恥ずかしい」とか、全く、まーーーーったくありませんから。知識量を競うのがファンではありません。少しでもロードレースって面白いと思っているならば、自信を持って「ファンです」と言ってください

これからも一緒に選手を覚えたり楽しみましょう。

 

 

まだロードレースを知らない方へ

まだサイクルロードレースを知らない方、あるいは知っているけど興味がないのかもしれません。それでも、未来のファンになる可能性はありますよね。

まあ、仕方ありません。世間一般ではまず認知されるのが難しい競技です。日本ではごく一部の地域を除き身近でレースを見る機会がないし、テレビ中継もなく雑誌や新聞の話題にもならないし、選手がCMやバラエティ番組に出ることもないですから。たまにニュースになるときは事故だったりネガティブなことも多く、「よくわからないけど、面倒そうだし危険な競技」というように思われているかもしれませんね。

僕からのお願いは「温かい目でお見守りください

できるだけ偏見はなくしてほしいし、ほんとうは少しでも興味持ってもらえる方が嬉しいけど。せめて、ファンへの理解や寛容性は持っていてください。

 

 

 

メッセージの背景としての補足

メッセージだけで終えたかったけれど、さすがにざっくりし過ぎているので、ちょっと蛇足気味ではありますが、解説をします。

 

冒頭に書いたロードレースファンのたったひとつの願いとは、「ロードレース界が発展すること」に集約できると思う。それに関連して声を大にして何度も言いたいのは、応援にはいろんな形があっていい。ファン同士でマウントを取り合うような構図はやめて欲しい。ファンの在り方に正解はない。ファン歴の長さ、観戦に費やす時間やお金を誇るのではなく、そんなものは邪魔だからどこかにしまっとけ。

熱量が強い人ほど、自分が“特別”だと勘違いしていることがある。ロードレースのコミュニティではそういう人の存在感が強いから、また厄介である。ロードレースに限らない話だが、“にわか”に対しての受容力が業界の発展には一番重要だ。初心者が入りにくい居心地の悪い業界は必ず衰退する。マウント取るマニアが結果的に自分で首を絞めていることに気づかず、狭いムラ社会で偉そうにしている。サムい。僕自身が“にわか”だから、そういう空気には敏感なつもりだ。

そう思う背景には、日本のロードレース界にムラ社会感が溢れているからだ。同じように感じる方、過去に感じた方は多いはずだ。具体例をあげると「ロードバイク乗りは機材マウント取りがち(高価なブランドや最新機材を使う人が初心者をバカにする)」とか、「多くレースを見ている方が偉いと勘違い(GCN視聴者はJSPORTSのみの視聴者を下に見る傾向)」など。

これは、良くない。ロードレース界の発展にとって害悪でしかない。そういう僕も、自分とあまりにも熱量がかけ離れている人は、つい無視してしまうこともある。気をつけなきゃと常に内省している(全方位的に上手にコミュニケーションとれる人は尊敬する)。かといって全ての人と仲良くすることは少し違うし無理だ。おかしな人もいるからね。僕は熱量の差は気にしないようにしているけど、価値観や嗜好が違う人とは仲良くはなれない。ただ、好き嫌い・合う合わないは別にして、多様性として存在は認めるようにしている。(ちょっと腹立たしい人たちを敢えて例示する。JSPOサイクル誰クル2023年の年間上位3人=Den(パクリ&クレーマー)、シニス(エロ垢リストびっしり)、AKiHiRO(嘘つき)はそれぞれ理由があってXアカウントをブロックしている。人として近づきたくない)

 

 

ロードレースは日本では人気のないスポーツである。それは紛れもない事実で、そこから目を逸らしたら何も始まらない。そのスポーツを時間もお金も使って応援しているファンたちには(僕自身もファンのひとりとして)感謝している。競技を愛して、努力しているアスリートやサポートするスポンサーたちにはもっと報われてほしい。

ロードレースは、コミュニティビジネスではない。会員性にしたり、ファンドで資金を集めるのは長期的に見ればいいことなどない。限られた人たちだけで盛り上がるような視野の狭いやり方で、地域や国の文化になっているヨーロッパに追いつけるはずない。彼らは(一部を除けば)追いつくつもりなどなくて、現状の狭い業界での利権を守りたいだけなんだろう。ムラ社会から脱却できなければ、細くゆっくりと衰退していく。日本のロードレース界には、残念ながら明るい材量は少ない。社会が経済的に困窮していたり閉塞感が漂っていることも逆風だ。GCNが日本市場を軽視してもビジネスなら当然だろう。ロードレースの開催自体が多くのハードルがあって成り立たない。ツール・ド・北海道は来年の開催を断念した。チームも選手もやる気はあっても、やる場がないから経済的にも厳しい。レースがないからスポンサーも集まらないし世間への認知は進まないしメディアへの露出も増えない。完全な悪循環である。それなのに、自転車レースをまとめるべき存在の協会が分裂していて“ムラ社会”を更に強くしている。そういえば、黎明期のバスケットボール界も2つのリーグが存在して、よく似た状況だった。それが危機感を持って本気でなんとかしようと動いた当事者たちがいて、川淵さんという剛腕の智慧者の力を借りて、今では大きな盛り上がりを見せるまでに成長した。うらやましい。

だから、敢えて何度も言う、「初心者に優しくしよう」

 

僕がそう考えるきっかけになった出来事がある。数年前に日本で行われたラグビーワールドカップだ。その頃はラグビーもロードレース同様のマイナースポーツだった。ヨーロッパが本場だったり(オセアニアも強い)、肉体を酷使するチーム競技であること、紳士的な選手が多い等、共通点も多く感じる。

そのワールドカップを盛り上げるための活動の一つ「NIWAKA de GO MEN」。糸井重里氏が中心になって(彼自身がにわかだったから)初心者向けの情報発信をしていた。画期的に感じたのは「初心者になろう」という姿勢を強く明確に発信したこと。知らないから恥ずかしいことなどなくて、楽しむことに上下はない。そんなハードルを取っ払うことが一番大事だと、協会や選手たち当事者の意識を統一したことだ。それが、結果を生む。ラグビーを初めて観戦する人々が「わたし“にわか”だから」と公言する現象まで起きて、子供と女性のファンが激増したことだ。日本で開催されたラグビーW杯の視聴率は日本戦で40%を超えた。あの頃の盛り上がりを記憶している方も多いはずだ。当時2019年のアンケートで「ラグビーに興味を持っている」という解答率が前年の19%から36%に上がった。もちろん元々ラグビーは人気が出るほど魅力があったことが前提で、かつW杯が日本の活躍もあったことで、ほんとうにエキサイティングなイベントになった。露出の多さが認知促進を生んで、人気が上がれば露出が増える。残念ながらトップリーグが開始する時期にはCovid-19が登場し、形成されたラグビー熱はかなり奪われてしまったけれど。

 

ラグビーの“にわか”を提唱したページはこちら。ロードレース業界にも発展するためのヒントが多くある。

www.1101.com

 

僕みたいな影響力もない素人が何を言ってもこの流れは変えられないけど、少なくても発展を邪魔することはしないようにしたい。できるだけ多くのファンが自分たちでファンを排除する行為はすぐにでも止めるべき。例えば、これを読んでくれた人の心にチラッとよぎってくれて、明日から初心者に優しくしてくれる人が一人でも増えることを願ってます。自戒も込めて。

 

 

ロードレースファンの端くれとして、彼らと僕らの明るい未来のために。