今シーズンもおよそ半分のレースが終了したタイミングで、ワールドチームの残留争いの現状を確認しておく。ジロが終わって大きなポイントが動き、降格圏のチームの順位に変動があった。残留と昇格に向けて争いが確実に活発化しているのが感じられる。
このカテゴリーの昇格・降格は2023・24・25年の3年間にチームが獲得したUCIポイントの順位によって決まる。これから来季に向けて移籍やスポンサーの獲得にも大きな影響もあるので、注視していく必要がある。
*前回2022年の記事はこちら。システムについても記載してます。
◎2024年8月時点の順位はこちら
◎残留争いの現状
まずは現状のチーム順位を確認しよう。ワールドチームは全18チームで、19位以下は降格になる。表は2025年6月1日時点の獲得したUCIポイントランキング(順位は昨年分も記載)。ポイントは左から3年間の合計 / 2025年(6月1日現在)/ 2024年 / 2023年のポイント(以下ptと表記)、現状のチームカテゴリー(WT=ワールドチーム/PT=プロチーム)。*2025年のポイントは大幅に向上傾向のチームはピンク、下降しているチームは薄いブルーにしています。
上位15チームは実質残留できると思うので、今回は言及しない。つまり、12位ロットと14位イスラエルは実質ワールドチーム入りする可能性は確実といえる状況で、その分ワールドチームから降格するのは21位アルケアが濃厚。残りの1チームを、16位アンテルマルシェ、17位XDS・アスタナ、18位ピクニック、19位コフィディスが争う可能性が高い。また20位ウノエックスは今年多くのポイントを稼いでいて昇格の可能性を残したいところだが、現時点での2500ポイント(以下ptと表記)差は逆転するのはあまり現実的ではない。なお2024年8月からここまでで昇降格に絡む順位が変動したチームはアスタナ(21位→17位)、コフィディス(17位→19位)、アルケア(19位→21位)で、ピクニック(18位→18位)とウノエックス(20位→20位)は順位は変わっていない。
なおアルケアに関しては降格だけでなく、来季のチーム存続自体が危ぶまれている。ここ数年スポンサー集めの資金繰りに苦しんでいる様子は度々報道され、今シーズンにかけて補強と呼べる選手の獲得もなく(加入した選手は全て育成チームからの新人のみ)、低迷から脱却する気配がない。エース格の数人はチーム残留に向けて好成績を残すというより来シーズンに向けて就職活動をしているのも致し方ない。
◎今後の予測と補足
各チームの状況を見つつ、今後の成績の予測をしてみたい。ざっくり計算であるが、2025年分を2倍して最終的な獲得ポイントを予測したのが下記表。6月1日時点から順位を上げるチームは薄いオレンジ、下げるチームは薄いブルーを順位の枠につけた。
予測としてはおおざっぱすぎるので、さすがにこの通りにはならないと思うが、今年の傾向を踏まえるとそれほど違和感はない順位と感じる。まず今年絶好調で2025年のチーム順位は3位のアスタナはこのまま行けば残留は確実と思われる。メインスポンサーがXDSになった2025年は豊富な資金のおかげで多くの実績のある選手の獲得とスタッフやチーム運営も改善された効果が想像以上に機能している。昨年からはおよそ半分の選手が入れ替わり、チームに残っている選手も軒並み成績が向上(500pt以上は7人/200pt以上は15人)。特に下のクラスのレースにエース級を出場させて上位に複数送り込むことでポイント獲得に成功している。以前はアルケアやイスラエルとコフィディスもやっていた手法である。獲得したUCIポイントに応じてボーナスが支給されるというニンジン作戦の噂もあり、選手のモチベーションも高い。12位は出来過ぎだとしても、現在の17位よりはもっと順位は上がるだろう。ロットとジェイコは順位を下げるが、降格圏に沈むほどではないと予想。
以下3チームが実質的な残留争いか。
17位と予想されるアンテルマルシェ。2025年だけでみるとチーム順位は20位と苦戦。500pt以上稼いでいるのはギルマイのみ、200pt以上まで広げても6人と寂しい状況。ミケルス、トゥーニッセンが抜けた穴をカバーできてなく、テイッセン、ロータ等の実績のある選手が今シーズンは苦戦している。後半に上昇するイメージがあまり湧かないのが正直な印象で、コフィディスとピクニックから1500ptのリードしている優位なことが頼りか。
18位予想のコフィディスは2025年は15位、500pt以上は2人/200pt以上は7人。まあまあ善戦とも言えるが、昨年の低迷分は挽回できていない印象。ジングレ、マルタンが去ったチームに加入したアランブルは健闘しているが、トゥーンスとブッフマンはポイント獲得にはあまり寄与していない。ただし下位カテゴリーのレースでは優勝こそ少ないがトップ10には絡む選手も多く、コツコツと地道にポイントを稼いでいる。後半では総合系の有力選手もいないので、この後のグランツールもジロ同様に大幅にポイントを稼ぐのは苦戦しそう。コツコツ作戦がどれだけ機能するか。
19位予想のピクニックは2025年21位とアンテルマルシェ同様にかなり厳しいが(500pt以上2人/200pt以上8人)、18位コフィディスとのポイント差はほんのわずか。明るい材料はジロでは多くのポイントを稼いだことと、伸び盛りの若い選手が多いのでこれから成績を伸ばしていける雰囲気は感じられる。ただしマイナス材料としてはチームの稼ぎ頭で精神的支柱ともいえるバルデが6月のドーフィネを最後に引退すること、本来ならエーススプリンターだったヤコブセンが手術の影響で長期離脱中であること。個人的には好きなチームなので、毎年必ず新しい選手が台頭しているので後半は期待したいところ。
戯れで上記の予測計算をしてみたが、そんなに簡単に済まないはずである。アスタナが今年に入ってして多くのポイント稼ぎをしているように、アンテルマルシェ、コフィディス、ピクニックはチーム体制の存続をかけて今後なりふり構わずにポイント稼ぎをしてくるはずである。下位カテゴリーのレースに多くの主力を出場させて複数上位に絡むような展開をかけてくればまだまだわからない。
参考までに今年の1月に行われたグランプレミオ(1.1クラス)では、3・5・8位に入ったアスタナは150ptを獲得。ジロの区間優勝は180pt。そしてシーズン最終盤のレース、ジャパンカップの優勝は200ptである。