3月19日にイタリアで開催される113回目の【ミラノ~サンレモ】。いよいよ今年もモニュメントが始まる。愛称は「プリマヴェーラ(イタリア語で春の意)」。レースの特徴としてはクラシックレースの中で最長距離であること(今回は293km)と、他のモニュメントと比較して坂が少なめなこと(獲得標高2093m)でスプリンターが勝負できること。多くのスプリンターたちがロードレース人生で最大のタイトルと位置付けている憧れのレースだ。現在最強のスプリンターのひとりカレブ・ユアンも「ミラノ~サンレモのタイトルが夢だ」と公言し、昨年は2位とあと一歩まで迫った。
例年、勝負所になるのは残り30kmからのチプレッサと残り10kmからのポッジオという2箇所の坂。ここでの駆け引きが勝負を分ける。アタックで抜け出すパンチャーがそのままゴールするか、ここをしのいでついて行けるスプリンターがゴール前で引きちぎるのか。今年もモニュメントに相応しい豪華な顔ぶれが揃った。楽しみである。
*一部チームが正式発表前のため、出場する選手は変更されることがあります。→3/19 9:00am一部選手情報更新しました。選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。
◆2021年のレースの模様はこちら(シクロワイヤードの記事)。
◎優勝候補
本命はファンアールト、対抗がユアン。そして今季も絶好調のポガチャルが怖い存在。ストラーデビアンケであんな独走勝利を見せられたら優勝候補にはあげない手はない。スプリンター勢では、ニッツォーロ、クリストフ、ピーダスンは実力も好調さも十分。初出場のヤコブセンは長距離といくつかの坂をどれだけこなせるか。ゴール前まで先頭集団として動ければスプリント力は一番。パンチャー勢のモホリッチ、セネシャル、クラシック巧者のファンアーヴェルマートは終盤の坂で仕掛けてスプリンターたちを置き去りにしたい。マシューズ、サガンも調子を上げてきているので上位に絡む可能性は十分。そして、あの男がついに帰ってくる。怪物ファンデルプール。腰痛からの回復程度はどのくらいなのか、最終盤でポガチャルがアタックし、ファンアールトとファンデルプールが追走なんて展開になったら歴史の残るレースになる。他の上位候補は下記表を参照。
なお本来なら優勝候補にあがるだろう選手が数人体調を崩し、残念ながら出場回避。(世界王者のアラフィリップは気管支炎、昨年王者のストゥイヴェン、欧州王者のコルブレッリ、昨年ロンド制覇のアスグリーン、トレンティン、サム・ベネットも病欠)*ユアンの欠場が発表されました。
◎優勝候補(激推し)
以上、優勝候補についてごちゃごちゃ言ったが、今年に関しては最大限応援する別格の選手がいる。このブログを読んでくれる人がいるなら、一緒に応援してほしい。フィリップ・ジルベール(ベルギー/39歳/ロット・スーダル)その人である。彼の自転車レーサーとしての最大にして最後の野望が、このタイトル。20年に及ぶプロキャリアで通算78勝、うちワンデーレースは36勝し、最強のクラシックハンターの称号も受け、5大モニュメントの4つを手に入れているレジェンド。難しいと言われていたパリ~ルーベは体重を増やして(もちろん筋肉だ)選手生命を賭けてまで(自転車選手が体重を増やすことは自らに負荷をかける最悪のやり方だ)手に入れた。唯一とっていないのがミラノ~サンレモ。過去17回出場し、トップ10には5回も入っている。全モニュメント制覇をしているのはロードレースの100年を超える歴史の中で過去に3人しかいない。今季限りで引退をするジルベールは、ラストチャンスに全てを賭ける。チームのエースは優勝候補のユアンかもしれない。*ユアンの欠場が発表されました。
◎その他の注目選手
厳選したいところだったが、このブログを見てくれる人への情報提供の意味合いも含めて掲載しようとしたところ、かなりの人数になってしまった。上記優勝候補にあげた選手以外で上位に絡みそうなのは、スプリンター勢では、デマール、バウハウス、コカール、ヴィヴィアーニ、フィリプセン、ブアニ。パンチャー及びクライマー勢では、コスヌフロワ、シャッハマン、トマ、ヘイター、ピドコック、アランブル、バジォーリ、テュルジス。展開によっては(エースが遅れるなど)ラポルト、コンソンニ、スウィフト、ギルマイ等にも上位を狙う力はある。*シャッハマン、トマは欠場。
個人的に注目するのは、ロットの二人の若手、ファンヒルス(サウジツアー総合優勝)、フェルメールシュ(昨季パリ〜ルーベ2位)。ユアン、ジルベール、どちらにとっても心強いアシストだ。読めないのがログリッチ。ファンアールトがいるので優勝を狙うとは思えないが、パリ〜ルーベでのファンアールトへの恩返しでアシストに徹するならばこれほど脅威な存在はいないし、ポガチャルへの対抗心メラメラならば、それも面白い。あとはガンナが「狙ってる」発言をしているのは興味深い。イネオスはビッグネームが多いがミラノ〜サンレモを勝てるイメージの選手はいない中、UAEツアーで脅威の登坂力を示したガンナなら優勝を狙ってもおかしくはない。新型コロナからの復帰レースとなる新城幸也も頑張ってほしい。
出場選手中、過去の優勝経験者は、ファンアールト(2020年)、クフィアトコフスキ(2017年)、デマール(2016年)、クリストフ(2014年)。
◎過去の結果(2021年、2020年、2019年)
参考までに過去3年分の上位10位を入れておく。所属チームは今季との比較も。過去10年でスプリンターが勝ったのは4回。必ずしも有利ではなく、他のモニュメントよりはスプリンターでも勝てる、くらいのレースだ。3年間で複数回トップ10に入っているのは、ファンアールト3回、サガン3回、アラフィリップ2回、マシューズ2回、モホリッチ2回、アランブル2回と、パンチャー系の選手が比較的好成績か。
チームとしてはバーレーンが延べ4人、バイクエクスチェンジが3人。ユンボとボーラも3人いるが、ファンアールトとサガンという選手ひとりでもある。