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ヘント〜ウェヴェルヘム 2022【リザルト】

 

327日に開催された【ヘント〜ウェヴェルヘム】は、ロードレース史に残るレースになった。強く吹き付ける風と荒れた路面で落車やメカトラブルが相次ぎ、終始緊張感の漂うフランドル・クラシックを制したのは、アンテルマルシェのビニアム・ギルマイ。アフリカの選手としてはじめてワールドツアーを勝利した。「この先のアフリカ人選手の未来を変える結果を出せた」とゴール後に語った

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

◆2022年のレースの模様はこちら(シクロワイヤードの記事)。

 

 

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最後はロングスプリントでもがいたギルマイ。その正々堂々とした走りも印象的。

 

◎レース結果:トップ10

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残り24kmから飛び出したのは、前のレースでファンアールトとワンツーフィニッシュしたラポルト。ついていったのは、ストゥイヴェンギルマイファンヘステルの3人。有力選手たちの逃げがそのまま決まり、ゴール前のスプリントでギルマイが先着した。追走グループは30人近い集団でゴール。逃げた4人は全員、追走グループにスプリント勝負できるチームメイト(クリストフ、ファンアールト、ピーダスン、テュルジス)がいたのも逃げ切れた要因であった。

 

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ケンメルベルグでアタックしたファンアールト。これで集団は絞り込まれ、最後の4人が逃げる布石になった。

 

 

◎予想結果:優勝候補

【予想文面】→ 本命はファンアールト。前年覇者として、今季すでにクラシックで2勝し、本人の力はもちろんユンボはアシストたちが絶好調(展開によってはラポルトは優勝を狙えるかもしれない)。対抗はメルリール。或いはフィリプセン。アルペシンはどちらがエースかわからないが、クラシックはどちらかというとメルリールで勝負する印象。最終盤の絞り込まれた先頭グループに複数の選手を送り込めるチームが勝つ気がしている。その観点で上記2チーム以外では、クイックステップヤコブセン(orセネシャル)、トレックのピーダスン(orストゥイヴェン)と、イネオスのファンバーレ(orヴィヴィアーニ)、グルパマのデマール(orキュング)あたりと、相性もいいUAEトレンティン(orアッカーマン)、アンテルマルシェのギルマイ(orクリストフ)を優勝候補に推したい。複数のメンバーを残すのは厳しそうだが、好調をキープしているテュルジスフルーネウエーフェンモホリッチも上位に絡む可能性は十分。そして若手のデリーからは目が離せない。他の上位候補は下記表を参照。

【結果】→ 優勝はギルマイ。2位ラポルト、4位ストゥイヴェン、6位メルリール、7位ピーダスン、9位モホリッチ、10位デマール、トップ10のうち7人は予想に入れていた。チームで勝負すると思われた展開では、ユンボアンテルマルシェトレックが有利に進める展開を見せ、クイックステップイネオスUAEは自分たちの勝負に持ち込めなかった。アルペシン、トレック、グルパマは健闘したといえる。

 

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それにしても、このレースはギルマイに尽きる。このエリトリアの21歳の特徴は、スプリントの力強さと登れること。絶頂期のサガンのような脚質に近いかもしれない。パリ〜ニースでは丘陵ステージのようなアップダウンに多くのスプリンターが苦しむ中、力強く登りもこなし、3つのステージで一桁フィニッシュした。ステージレースを走りきるスタミナと、2日前のE3サクソバンクでは初めて走った石畳への順応性を見せて、近いうちにクラシック勝ちそうだと思っていたら、いきなり鮮やかに勝ってしまった。これから実力も人気も更に出てくるだろう。彼の選手生活はまだスタートしたばかり。レース後のインタビューでは知性的な話し方も好印象。どんな選手になっていくのか。楽しみな希望の存在だ。

◆ギルマイについては過去記事「若き実力者たち」もどうぞ。

 

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表彰台のギルマイ。アンテルマルシェはほんとにいい補強をした。

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ 優勝候補に上げたチーム以外では、今季ワンデーレースでは精彩を欠いているボーラにもそろそろ頑張ってもらいたいが、残念ながら勝てそうな力強さは見えない。また過去の優勝経験者ではある、デゲンコルプサガンファンアーヴェルマートも今の所勝てるイメージがわかない。何度かブログで優勝候補に上げていたが、この3人は注目選手の扱いにしようと思う。クラーウアナスンはまだチャンスがありそうだ。今季好調のテイラーハルヴォールスンのウーノエクス、デュポンアニオウスキのビンゴールも、プロチームながらいい走りをしている。トップ10には絡むかもしれない。2日前のレース、E3を終えて「ベルギーとお別れする」と言っていた新城幸也がまた急遽召集された。感染症から復活直後なのに大車輪の仕事ぶり。頼りになるベテランである。

【結果】→ クラーウアナスンは残り2kmあたりで追走集団から抜け出してアタックし、5位に入った。8位に入ったガルシアも健闘し、アランブルやカンターの加入でモビスターは少しづつスプリントの形も出はじめた。今後注目する価値があるかも。ボーライスラエルは今季はスプリントはダメかもしれない。石畳は苦手と言っていた新城幸也はベルギーのクラシックをしっかり走りきった。このベテランはまだ進化しているのだろうか。

 

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石畳の激坂ケンメルベルグを登る新城幸也。ほんと頼りになる存在。

 

 

 

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