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チームと選手の成績チェック【6月終了時】

 

今年の半分以上のレースを終え、シーズンは後半を迎える。好成績を残しそうな選手とチームがはっきりしてきた。6月終了時であり、前半終了時の成績まとめでもある。6月に大きくポイントを伸ばしたのは、ツールの前哨戦で活躍した選手が中心。ツールに出場する選手も多いので、トラブルがなければその選手は7月もツールで大きくポイントを稼ぐ可能性が高い。それによってチームのランキングも当然ながら変化する。他には各国ナショナル選手権で活躍した選手がいるチームもポイントを稼いだ。前月から大きく順位を上げた選手を中心に軽くチェックしていく。

 

 

 

 

◎チーム成績UCIポイント&勝利数)

*先月からチーム順をUCIポイントの獲得順にしています。

6月に最も活躍したのはユンボヴィスマ。月間で10勝をあげポイントを荒稼ぎし、前月の4位から1位になった。ドーフィネでステージ3勝、総合1-2位、ポイント賞とファンアールト、ログリッチ、ヴィンゲゴーで勝ちまくると、その裏ではコーイがオランダのZLMツアーでステージ3勝、2位2回、総合優勝と大暴れ。残念ながらツール・ド・スイスではコロナがもとでチームごとリタイアしたが、7月に向けてチーム全体でピーキングがかつてないほどうまくいってる印象。次に飛躍したのはボーラ。ジロでの大躍進に続き、ツール・ド・スイスイギータの総合2位をはじめ総合トップ10に3人入れ順位もジャンプアップ。イネオスは5勝、バーレーンは3勝し、ともに勝利以外にも上位に多くの選手を送り込み、安定してポイントを積み上げた。

4月まで首位にいたUAEチームエミレーツは6勝しながらも、うち5つは下部カテゴリーのスロベニアツアーだったためポイントは伸びず、ユンボとボーラにも抜かれて5位に下がった。それでも毎年荒稼ぎするツールのある7月はどれだけポイントをとれるか注目である。アンテルマルシェも依然好調をキープ、年間勝利数は昨年の9勝を大きく上回る16勝に達した。しかも誰か一人に頼っている状況ではなく多くの選手がポイントを稼いでいるのも好材料で、すごく魅力的なチームに変貌した。クイックステップヤコブセンを中心に8勝し、春先の不調を脱してきた感が強くなってきた。この表には入っていないがツールでステージ2連勝し(7月2日時点)、ますます勢いが増している。アラフィリップも怪我から復帰しつつあり、後半は更に巻き返していきたい。グルパマロットも好成績をあげている。ロットは現時点で降格の順位だが、順位を上げそうな勢い。下の選手欄でも触れるが、今年デビューしたデリーがチームの稼ぎ頭であり、救世主になりそうである。*ワールドチームの降格については追って別の記事を書く予定。

イスラエルDSMEFが6月は上昇気配。というか5月までが酷すぎたのだが、これからチームの降格争いにも影響していくので、確実にポイントを稼いでおきたい。

AG2Rモビスターバイクエクスチェンジは順位をひとつ下げた。コフィディスだけがワールドチームでは0勝だった。

なお6月の勝利数はナショナル選手権も含まれるので、各チームとも勝利数は伸びていることは記しておく。例えばアスタナは3勝したがカザフスタン選手権。アスタナはあまり前向きな材料がなく、来季に向けての準備をしていきたいくらいだ。

 

プロチームでは、アルペシンは5勝し、アルケアを抜いてプロチームではランク7位と最上位になった。ツールからはチーム名を「アルペシン・ドゥクーニンク」に変更し、さらに勢いがつきそうである。一方アルケアは少し足踏み状態。前半だけですでに昨年一年を上回るポイントを稼いでいるが、来季ワールドチームに昇格が確実視されている中では、少しでも多くのポイントを稼いでおきたい。トタルエナジーは5勝し、サガンもようやく復活傾向。これから大暴れしてくれることを期待する。ウーノエックスも4勝して好成績、昨年の13勝を大きく上回り過去最高の成績をあげそうな勢い。

 

ドーフィネでは圧勝したログリッチとヴィンゲゴー。ツールで念願のマイヨジョーヌは手に入れられるか。

 

新生ボーラの象徴の一人イギータツール・ド・スイスでは最終日のITTで敗れたがリーダージャージを着用。

 

 

◎個人成績UCIポイント)

現時点のランキング上位50名を表にした。およそ半分のレースを消化し、7割くらいの選手は年間でもトップ50に入れると思われる。参考までに昨年のランキングでは1000ポイント以上稼いだ選手はトップ50に入っている(51位が1014ポイントのデマールだった)。
好調を維持しているビッグネームを中心に、昨年も好成績を残した順当なメンバーが多く入っている。名前の背景色がピンクの選手は前月から大きくポイントを稼いだ。それらの選手と今年これまで活躍できていない選手を中心に言及する。
まず特筆すべきなのは、7位にいるロットの新星ルノー・デリー。もはや衝撃といってもいい活躍。ロットの下部組織から今年デビューした20歳のスプリンターはここまですでに5勝し、5月末からベルギーのワンデーレースで3連勝した。ビッグレースではないとはいえ、カヴェンディッシュ、メルリール、ニッツォーロ、ガビリアほか多くのトップスプリンターに力勝負で勝つという離れ業で、プロトンでは無視できない存在になった。今季ここまで稼いだ1440ポイントはもちろんチームでトップであり、勝利数も含めておよそチーム全体の1/3をひとりで稼いている。降格争いをしているロットスーダルに彼がいなかったらと思うとぞっとするほど。同じく20歳の驚異的なスプリンター、46位にランキングしているユンボオラフ・コーイも絶好調。今季8勝をあげている。デリーと比較すると下のカテゴリーのレース中心で若い選手たちとの勝負が多いとはいえ、ヴィヴィアーニやフルーネウェーヘン、ピーダスンにも勝っていて実力は間違いない。登り基調のスプリントも強そうなので楽しみな存在。この二人は新世代のスプリンターの中心になるだろう。
グリッチヴィンゲゴーオコーナーはドーフィネで活躍、キュングイギータフルサンツール・ド・スイスで活躍しポイントを稼いだ。23位のマッズ・ピーダスンは、3年前に世界選手権で優勝するなどすでに強豪ではあったが、今季は一皮むけた感がある。ベルギーツアーで5つのステージ全て一桁フィニッシュするなど更に好調さが増してきた。開催中のツールも母国開催もあってか非常に目立つ活躍を見せている。昨年は2勝しかできなかったが、今季はすでに6勝。デンマーク選手権もRRが2位、ITTが4位とあと一歩およばなかったが、これから脂ののった年齢になっていくのでモニュメントもいくつか狙っていけそうだ。
44位のカルロス・ロドリゲスも6月は飛躍した。21歳のやや大柄なイネオス期待のオールラウンダーは、4月にはバスクカントリーでステージ優勝し、ワールドツアーでプロ初勝利をあげていたが、6月はオキシタニーで総合2位に入り、スペイン選手権ITTで4位、RRでは優勝した才能だだ漏れの若手のひとり。スペイン人としては、ややタイプは違うがバルベルデの後継者にも名乗りをあげるほどの選手になる可能性を秘めている。イネオスの英才教育を期待したい。
49位のクインティン・ヘルマンスも今季は飛躍の年になりそう。シクロクロッサーでほぼ全てのレースでシングルリザルトを残すほどの実力者は昨年から本格的にロードレースに参戦。4月にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで驚きの2位に入るとその後も好走を続け、6月のベルギーツアーでは総合3位と確実の存在感を増している。シクロクロス経由の選手が活躍する流れはまだ続きそう。アンテルマルシェはこういう選手を見つけて育てるのがうまい。
昨年好成績なのに今年ここまでトップ50に入っていない主な選手は、アラフィリップ(昨年4位)、フィリプセン(昨年17位)、モレマ(昨年20位)、ニッツォーロ(昨年21位)、シャッフマン(昨年22位)、トレンティン(昨年24位)、マス(昨年25位)、リッチー・ポート(昨年30位)、ピドコック(昨年31位)など。怪我や感染症などのトラブルがあった選手もいるが、いずれも実力者ばかりなので、後半は巻き返しに期待したい。なおコルブレッリ(昨年5位)とベルナル(昨年6位)もいないが、彼らは怪我や病気の問題であり、まだこれからの年齢でもあるので復活を心待ちにしている。
チームとして多く選手がいるのはユンボ、が6人と別格の強さを見せている。バーレーンが5人と好調、UAEイネオスアルケア、アンテルマルシェが4人。ボーラコフィディスグルパマが3人。ただし、ボーラは全て今年加入した選手で、的確な補強をしたと評価できる一方、生え抜きのメンバーが活躍していないのは残念にも思える。イスラエルは5月までひとりもいなかったが、二人ランクイン。DSMEFアスタナは一人も入っていない。

 

デリーのスプリントは迫力がある。荒削りな部分は伸びしろでもある。

 

トップスピードに乗った時はファンアールトよりも速いかも。

 

19歳でイネオスと4年契約したカルロス・ロドリゲス。順調に成長中。

 

 

*2月〜5月終了時の成績まとめはこちらから↓

 

 

 

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