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ロードレース観戦ガイドのブログ

チームと選手の成績チェック【8月終了時】

 

ブエルタも半ばを過ぎ、シーズンは終盤を迎えている。今期もいまだにCovid-19の影響は大きく、欠場に追い込まれたり体調不良が続いたり、苦労している選手やチームも多く見られ、このブエルタでも毎日のように陽性者がリタイアしている。仮に無症状であったとしても、レースに出られなければ選手は何も手にれることはできない。ほんとに厄介な問題である。また8月に入り、来季の契約が決まった選手・去就が不透明な選手にも別れ、ワールドチームの残留争いも加熱してきた。そんな中、今シーズンのここまでの成績をチーム別/選手別にUCIポイントによるランキングを軸にまとめた。前月から大きく順位を上げた選手を中心に軽くチェックしていく。なお7月のまとめはサボってしまったので今回は7・8月の成績まとめで、前回との比較(成績を上げたor下げた等)は6月との比較になることを記しておく。また7月に大きく成績を上げた選手はツールで活躍した選手たちとほぼ同義だ。

 

 

 

 

◎チーム成績UCIポイント&勝利数)

*チーム順については、4月までは勝利数で5月からUCIポイント順にしています。UCIポイントの背景色がピンクなのは順位があがったチーム、青いのは下がったチーム。

7・8月に最も活躍したのはユンボヴィスマ。2ヶ月間で18勝をあげた。ツールでステージ6勝&総合優勝とファンアールト、ヴィンゲゴーの活躍はいまだにホットな記憶にあり、8月になってもコーイとラポルトが2勝、ブエルタでもチームTTとログリッチで2勝、ブルターニュ・クラシックで勝利するなど勢いは増すばかり。総合系からスプリントまで多くのレースで勝利が望める体制は過去最強チームかもしれない。少し気は早いが、来季加入するメンバーもファンバーレやケルデルマンと実力者のオランダ人をはじめチーム強化に余念がなく、ユンボの天下はしばらく続きそうな気配。イネオスはヘイターのポローニュ総合優勝やシヴァコフのブルゴス総合優勝などの大きなレースも含めて7勝、UAEもポガチャルのツールのステージ優勝中心に7勝し、ともに安定してポイントを積み上げた。

アンテルマルシェの好調ぶりはすさまじい。年間勝利数は昨年の9勝の倍以上になる22勝に達し、ポイントもバーレーンを上回った。来季移籍が決まっている稼ぎ頭のクリストフがいなくなっても、ギルマイ、ヘルマンスのブレークした選手を中心にロータ、ヒルト、メインチェスといった働き盛りの年齢層の選手たちが満遍なく活躍しているのが強みで、昨年の下位チームからトップチームに仲間入りしそうな充実ぶり。ユンボと同じくらい今期大成功したチームだと思っている。

クイックステップは勝利数こそ多いものの、下のカテゴリーのレースが多く昨年のように春のクラシックレースで奮わなかったためランクは沈んでいる。そんな中ツールでも2つのステージで勝ち、サンセバスティアンでのレムコの勝利、ブエルタでも無双状態になっていて(カウントしていないがヤコブセンが欧州王者になるなども)新生ウルフパックらしさを感じさせてくれる。ようやく怪我から復帰してきたアラフィリップが昨日落車で怪我をしたのは残念でならない。

ボーラバーレーンコフィディスは順位を下げたが、それほど成績が悪かったわけではなく、好調のチームに抜かれた状態なので心配は不要。とはいえ、バーレーンに関してはコルブレッリ不在の穴が大きいだけでなく、カルーゾやランダなどベテラン勢が軒並み成績を落としているのは不安材料で、ブイトラゴやライトなど若手が大きく成長しているのは好材料でもあり、チームの若返りの機会を見据える時期かもしれない。

グルパマは勝利数こそ多くないもののツールで3人が総合トップ20に入るなど活躍。ゴデュとデマール以外にキュングやマドゥアスが各レースで結果を出し、ピノーも復活気配、スチュワートなどの若手も活躍とチーム状態はかなりいい印象。トレックも同様に勝利数は少ないが、ピーダスンやスケルモースなどがワンデー中心に上位に入りポイントをとり、順位をひとつあげている。ロットスーダルは戦力の割にはかなり健闘していると感じる。降格ゾーンにいるのは過去2年の成績が悪かったことが要因としては大きい。今年24勝あげているうちの10勝は新人のデリー。だが、ファンヒルスやクローンの若手まかせではなく、ユアンやウェレンス、デヘントあたりのエースたちがなんとかしないと残念ながら降格は免れなさそう。

AG2Rはやや停滞気味。ユンゲルスのツールでの復活、サローがワンデーレースを連勝するなど成績を残したが、ツールで期待していたオコーナーのリタイアは痛かった。モビスターも停滞ぎみ。アランブルやカンターがワンデーでがんばってたりするが、本来ならマスやベローナ、ペドレロあたりが総合成績でエースらしい働きをしないとポイントは稼げないチーム。現在降格争いでは18位。ひとつ下で追い上げてくるロットの足音ははっきり聞こえる位置にいる。バイクエクスチェンジもコツコツと勝利を重ねているが単発が多く、今回のブエルタのエース、サイモン・イエーツのリタイアもポイントには大きく響く。降格争いではモビスターとEFの上にはいるがポイント差は小さく、予断は許さない状況。

イスラエルEFはどちらも同じような傾向。やや持ち直しているが、今年の5月までは重度の不振に陥り、昨年の中堅クラスの安定感はなくなった。大半の選手が成績を落とし、積極的に補強したにも関わらず新戦力も機能せず(イスラエルでいえばニッツォーロとフルサン、EFではチャベスとエイキングなど)、失敗のシーズンだったといわざるをえない。イスラエルは降格の確率はかなり高く、EFも安心するにはほど遠い。DSMは、ここ数年続いている活躍すると他チームへ移籍するという状況の影響で、やはり戦力低下はいなめず、その割には健闘しているとも思える。だが総合系の選手として台頭してきたアレンスマンにはイネオスへの移籍の噂があるなど、安定しない状況は変わらなさそうだ。アスタナは残念ながら全くいい所がない。去年のチーム内のゴタゴタが尾を引いているのは間違いなく、来季も明るい展望がない。

残りひと月半、下位に沈むチームの奮起を期待している。

 

なお降格争い渦中のチームについてはこちらの記事参照。

 

プロチームでは、アルペシンは6勝し、順調にポイントを重ねた。しかもフィリプセンのツール2勝、ジェイ・ヴァインのブエルタ2勝など勝ち方がすごい。来季メルリールがいなくなってもおそらく問題ないだろう。アルケアは残念である。すでに昨年よりポイントを稼ぎ、来季ワールドチームへの昇格が濃厚なのはいいのだが、ツールでのキンタナの検体からUCIで規制されるトラマドールが検出されて、総合6位とステージ入賞も含めて獲得した455ポイントが剥奪され、ブエルタも欠場してしまった。それがあればアルペシンよりも上の順位なのだ。トタルエナジーウーノエックスは7・8月はやや停滞気味で目立った活躍はなかった。ワールドチーム入りを目指しているトタルは今年は大きくポイントを稼いでいるが更にチームとして成長が望まれる。B&Bホテルズバルディアーニは少しだけ順位があがった。なおB&Bホテルズは、来季カヴェンディッシュの加入が噂されている。彼の加入にはツールに出場することが最大の目標のはずなので、ツールの招待枠は抑えておきたいところ。

 

 

◎個人成績UCIポイント)

8月末時点の今年獲得したUCIポイントによる上位50名を表にした(独自指標です)。およそ8割近いレースを消化し、この表の大半の選手は年間でもトップ50に入るだろう。参考までに昨年のランキングでは1000ポイント以上稼いだ選手はトップ50に入っている(51位が1014ポイントのデマールだった)。今年はレースが増えている(カレンダーが戻ってきている)ので、もう少しポイントは高くなりそうだが、これが今年の顔といっていいメンバーだ。なおトップ50というのは上位5%と想定できる人数である。
*8月末までに獲得したUCIポイントを集計。選手名の背景色がピンクなのは2つ以上順位があがった、青いのは下がった選手。ただし順位が下がった選手は、不調というよりツール等に出ていないためポイントを稼いだ選手に抜かれたというイメージです。

好調を維持しているビッグネームを中心に、順当なメンバーが揃った。個別にコメントするとキリがないので、印象的な活躍をした選手のみコメントする。
ツールで大暴れしたポガチャルファンアールトヴィンゲゴーが順当にトップ3になった。ファンアールトについてはツールよりも他のクラシックレースのポイントの方がもちろん多い。年間のランキング1位は今年もポガチャルとファンアールトが接戦で争うことになりそう、と思っていたら、ブエルタの成績次第ではレムコが1位になる可能性も出てきた。イル・ロンバルディア、世界選手権の結果も大きく影響しそうでこの3人は最後まで目が離せない。他にも背景色がピンクの選手はツールで好成績をあげた選手が多い。
今期ブレイクした選手の筆頭は、6位のロットの新星ルノー・デリー。前回も記載したが、ロットの下部組織から今年デビューした20歳のスプリンターはワンデーレースを中心に10勝をあげている。カヴェンディッシュ、メルリール、ガビリアほか多くのトップスプリンターに力勝負で勝ち、先日のエグモントサイクリングレースではマッチスプリントになったデマールが諦めて踏み止めるという圧勝劇。今年の最強スプリンターの5本の指には確実に入る。今季ここまで稼いだ2040ポイントはカラパスやバルベルデが去年一年で稼いだポイントよりも多いと言ったらすごさがわかるだろうか。
32位アユソ、44位カルロス・ロドリゲスのスペインの若手ふたりもすっかり上位に位置する選手になった。現在ブエルタでもトップ10に入っており、総合を争うチームであるUAEとイネオスのエース格の走りを見せていて、ここから更に上に上がりそうな雰囲気を醸し出している。他にはキュングイギータギルマイクインティン・ヘルマンスマドゥアスあたりも今年大きく飛躍した選手。これらの選手の活躍は以前のブログに記載したので割愛する。
移籍組の印象的な活躍では、ウラソフイギータヒンドレーのボーラ3人、クリストフラポルトベノートオフステテール。彼らは移籍が成功だったといえる選手たちだろう。
チームとして多く選手がいるのはイネオスが7人、ユンボアンテルマルシェが5人と別格の強さ。UAEグルパマが4人、バーレーンボーラアルペシン、アルケアが3人。なお8月5日に移籍したDトゥーンスはチーム名をイスラエルにしているが、獲得したポイントはバーレーン在籍時のもの。EFアスタナは一人も入っていない。また、モビスターはバルベルデが引退すると誰もいなくなるのは寂しい状況。
昨年好成績なのに今年ここまでトップ50に入っていない主な選手は、アラフィリップ(昨年4位)、モレマ(昨年20位)、ニッツォーロ(昨年21位)、シャッフマン(昨年22位)、トレンティン(昨年24位)、マス(昨年25位)、リッチー・ポート(昨年30位)、ピドコック(昨年31位)など。怪我や感染症などのトラブルがあった選手もいるが、今期は厳しいシーズンを過ごしている。なおコルブレッリ(昨年5位)とベルナル(昨年6位)もいないが、彼らは怪我や病気の問題で今期は仕方がない。ベルナルは8月にレース復帰し、順調に回復しているのは好材料。来季は総合争いに戻ってきてほしい。
 

10月末に見せる顔ぶれはどのような変化があるだろうか。更に降格や移籍によってチーム状況がどのように変わるか。すでに今シーズン終了のような選手もいるが、ここに載っていない選手にとってもこれから残りのシーズンは来年へ繋がる

 

 

*2月〜6月終了時の成績まとめはこちらから↓

jamride.hateblo.jp