ストラーデビアンケ 2023|出場選手まとめ
大好きなレースである。理由は、多くの有力選手が揃って見どころが多く、毎回名勝負になること。つまり、ロードレース界を代表する選手たちがガチバトルするレース。直近4年間の優勝者の名前だけでも、その魅力が伝わるだろう。ポガチャル、マチュー、ファンアールト、アラフィリップ…。
3月4日にイタリアで開催される【ストラーデビアンケ】は、イタリア語で「白い道」という意味。グラベル(砂利道、未舗装路)区間が多いことから、そう呼ばれる。第17回目と比較的新しいが「6番目のモニュメント」とも言われるように、ファンや選手たちからの人気が高い。同じくイタリアで開催されるティレーノ〜アドリアティコやミラノ〜サンレモの前哨戦でもある。このレースはちょっと語ります・笑。
*優勝候補は10人(本命は3人)、その他有力選手は30人までを目安にしています。*情報は2月23日現在。出場選手は変更の可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。
◎レース概要
シエナをスタートしてトスカーナ地方の美しい田園風景を廻り、再びシエナに戻り「世界一美しい広場」と人々が自慢するカンポ広場がゴールになる。グラベル区間は11セクターあり、全長184kmのうちの63kmに及ぶ。地図の丸数字でグレーの区間(標高プロファイルでもグレー)がそれ。その滑りやすい砂利道を選手たちは砂煙を上げて走っていく。昨年は強風によりスリップした選手が引き金になり大規模な落車が発生。アラフィリップがバイクごと一回転する映像は衝撃的だったし、多くの有力選手がリタイアを余儀なくされた。過酷である(ほめてる)。また長くはないが急勾配の坂も多く(獲得標高は3107mにも及ぶ)、登れない選手は勝負に絡むことはできない。
注目ポイントとしては、残り54kmあたりから始まる難易度五つ星のグラベル・第8セクターのモンテ・サント・マリー(11.5km)は多くの選手が分断されるはずだ。その後20kmほど先にある第9セクターのモンテアペルティ(800m)は短いながら18%に及ぶ急勾配で、勝者を絞り込むアタックが行われる。そして最後のゴール前の旧市街地のサンタ・カテリーナ通りは、いくつもの名勝負が生まれている石畳の激坂。ここを先頭で走る選手が栄誉を掴む。
過酷なレースを走りきるタフさと、スリッピーな路面に対応するバイクテクニック、急勾配を駆け上がる脚力、ライバルたちに対応する駆け引きやチームワーク、攻める勇気と、あらゆるものが勝者には求められる。そうそう、メカトラなどが起きない強運さえ必要なのだ。なお当日は好天の予報がされている。近年、強風や雨などで厳しい条件のレースも多かったが、気象条件は万全で迎えることになりそうだ。
◎優勝候補
「誰がポガチャルを止めるのか」─ 昨年、残り50kmから独走という前代未聞の伝説級のレースで勝者になったポガチャルは、翌日からのパリ〜ニースに備えて出場回避になった(そりゃそうだ)。打倒一番手と目されていたファンアールト(2020年優勝)はコンディション不良により出場回避。とはいえ、大勢の有力選手が出場し、優勝予想は非常に困難である(ほめてる)。
まず名前が出てくるのはマチュー・ファンデルプール(2021年優勝)。先月シクロクロス世界選手権で激闘の末ファンアールトを下したのも記憶に新しい。2021年覇者の彼向きのレースであることは間違いないのだが、少し不安なのはこれがロードの今季初戦であること。ジュリアン・アラフィリップ(2019年優勝)も、もちろん優勝候補だ。昨年は不運な落車もあり、冴えないシーズンを過ごしたが、先週アルデシュ・クラシックで今季初勝利をあげるなど、強いアラフィリップが帰ってきたようにも感じさせた(翌日はいまいち)。そのあたりを含めると現在一番好調なのは、トム・ピドコックかもしれない。マチューとは逆にシクロクロス世界選手権を回避してロードに臨んだ今シーズンは早くも勝利をあげるなど、とても順調。
他に有力な選手は、過去に優勝経験もあり今季好調のティシュ・ベノートは欠場のファンアールトの代わりにエースを務めるだろう。ペリョ・ビルバオ、アルベルト・ベッティオル、クイン・シモンズ、ティム・ウェレンスも過去に好成績を残していて走り方も知っているし今季の調子も良い。特にシモンズは積極的なレースが多く、彼のアタックからレースが動く展開になりそう。ここまでは多くのロードレースファンは優勝候補にあげると思われる。個人的推し枠の二人は、バランタン・マドゥアスとロレンツォ・ロータ。
上記から名前が漏れた選手では、ジャンニ・フェルメルシュは昨年のグラベル世界選手権王者であり、多くのチームがマチューを警戒する中、彼がアタックすると面白い展開が作れるのではないか。アンドレーア・ヴェンドラーメとサイモン・クラークは今季非常に状態がいい。過去の実績ではスティバル(2015年優勝)とファンアーヴェルマート(過去8回トップ10入り)が双璧。去年トップ10に入ったセルヒオ・イギータとアッティラ・ヴァルテルも侮れない存在。特にヴァルテルは実はクラシック適性があり、ユンボの一番の補強選手になる可能性を感じていたりする。モホリッチ、バジオーリ、ウリッシの3人もサブエース的な存在で終盤まで残っていると強力な選手。
◎その他の注目選手
グラベルが多いというレースの特性から考えるとシクロクロスやMTB経験者は強い。過去に複数回トップ10に入ったミヒャエル・ゴグルはシクロクロスあがり。ペテル・サガンとヤコブ・フルサンは元MTB王者。グラベル世界選手権2位だったダニエル・オスも好成績を残している。今年好調のジングレ、カルロス・ロドリゲス、マグナス・シェフィールド、ルイ・コスタ、トムス・スクインシュ、アレッサンドロ・コーヴィも展開によっては上位に絡みそう。アップダウンが多いコース適性では、ルツェンコ、ウラソフ、ホノレ、ピノ、パシェ、ファンセヴェナント、バルギルも相性は悪くないだろう。イタリア王者のフィリッポ・ザナも気になる存在。クフィアトコフスキは過去2回優勝している。ちょっと多く名前を上げすぎたか・笑。それだけ、様々なタイプの選手が活躍する可能性のあるレースなのだ。
◎過去の結果(2022年、2021年、2020年、2019年)
参考までに過去4年分の上位10位を入れておく(いつもより増量中)。所属チームは今季との比較も。トップ10の回数では、ファンアールトが3回、ポガチャル、ビルバオ、ウェレンス、フルサン、ゴグル、アラフィリップ、スティバル、ファンアーヴェルマート、クラーク、が2回。チームとしてはクイックステップが延べ5人、アスタナ4人が最多だが、チームによる偏りが少ないのも面白い特徴といえる。
出場選手中、過去の優勝経験者は、マチュー(2021年)、アラフィリップ(2019年)、ベノート(2018年)、クフィアトコフスキ(2017・2014年)、スティバル(2015年)。
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