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ロードレース観戦ガイドのブログ

パリ〜ニース 2023|リザルト

 

3月5日から12日まで開催されたパリ〜ニース春の嵐のような激しい旋風をあの男が巻き起こした。

レースはツール・ド・フランスの前哨戦といえるメンバーが大勢参加し、各チームの今季の成績を占うのに興味深い展開になった。選手の成績と予想結果を簡単にまとめた。

*レースリザルトの記事は《総合成績トップ10とステージ優勝者/自分の予想への評価(ざっくり)/雑感=レース中の出来事や気づいたこと・今後注目したい選手など》を、好き勝手に語る雑談となる模様。*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

 

◎レース結果:総合トップ10

ポガチャルはやっぱりポガチャルだった。ツールに向けて(その前にモニュメントも獲りそうなほど)これ以上ないほどの圧勝劇。3つのステージを笑顔を振りまきながら圧勝した他、中間スプリントでも競い、チームTTでも最後に爆発的なスピードを見せつけて終始誰も寄せ付けない走りには全く隙はなかった。しかも余裕を持ってそれを成し遂げた印象であり、レース後にインタビューで「まだ高地トレーニングしてないからピークはこれから上がるよ♪」なんて言っちゃう始末。2位になったゴデュは仕上がり状態が良好。少し前にお騒がせもあったが、ポガチャルの登坂に唯一ついていけたのは後で湯だった。今年はツールの表彰台も本気で狙える実力はついてきたと思ってる。ヴィンゲゴーはまだ調整中だった。直前のレースで勝ちまくったのは有力選手が少なかったからというのは否めない。逆にいえば、調子を上げてアシストを揃えればツールの勝機はあるだろう。サイモン・イェーツバルデも順調に来ているといえそう。サイモン・イエーツとパウレスチームTTで稼いだタイムで上位に入ったのは戦略通りか。メーダーヨルゲンソンもたしかな成長力を見せた。どちらもグランツールではサブエースの役回りになると想像しているが、エースとそれほど差はない扱いになるかもしれない。チームとしても期待が大きくなりそう。シヴァコフヘイグは健闘ではあるが、どちらももう少し上に行きたかったはずだ(ヘイグはメーダーのアシストに回ったこともあるが)。

 

 

◎ステージ優勝者

◆Stage1:3月5日/平坦

優勝:メルリール/2位:サム・ベネット/3位:マッズ・ピーダスン

集団スプリントの勝負は、しっかりとトレインを形成したメルリールが強かった。サム・ベネットは悪くはないのだが、Dファンポッペルの好リードアウトを勝ちきれないレースが続いていてもったいない。中間スプリントでガチでポイントを取りに来るポガチャルの気迫も印象深い。

 

◆Stage2:3月6日/平坦

優勝:マッズ・ピーダスン/2位:オラフ・コーイ/3位:マグナス・コルト

何度か横風で分断が起きるも大きな影響もなく集団スプリントに。数人が横並びでゴールになだれ込むが、ギリギリでピーダスンが先着。ハンドルを投げ合ったコーイは惜しくも2位。この日も中間スプリントでポガチャルが先頭通過し6秒を稼ぐ。

 

◆Stage3:3月7日/チームTT

優勝:ユンボ・ヴィスマ/2位:EFエデュケーション/3位:ジェイコ・アルウラー

今大会でキーになったステージ。《TTに強い選手をそろえたチームはユンボクイックステップジェイコ・アルウラーが3強。次いでUAEグルパマEFイネオス。》→予想の読みは悪くなかった。クイックステップシュミットのリタイアがなければ表彰台には絡んだ実力はあったはず。EFは予想以上の強さで今季はずっとチーム全体の状態が良い。UAEポガチャルひとりが異次元だったのはユンボにとっては計算外だったはず。従来の「4人目のゴールしたタイム」ならばヴィンゲゴーとポガチャルには2分以上の差がついていたのだから、今回のTTのタイム計測ルールは確実にポガチャルに優位に働いた。もちろんあのポガチャルの加速力あってこそだが。

 

◆Stage4:3月8日/山岳

優勝:ポガチャル/2位:ゴデュ/3位:メーダー

フィニッシュの登坂残り5kmで総合勢だけになっていた先頭グループからゴデュが単独アタック。前日のステージでタイム差をつけられたポガチャルが追走し最後はゴデュをかわしてステージ優勝。ヴィンゲゴーは遅れてしまい総合順位も逆転し、はやくも大本命がマイヨジョーヌを纏った。

 

◆Stage5:3月9日/平坦

優勝:オラフ・コーイ/2位:マッズ・ピーダスン/3位:メルリール

ここまで上位に絡みながら勝ちきれなかったコーイがようやく集団スプリントを制した。2着に入ったピーダスンが「今日はノーチャンス。コーイのスピードが圧倒的だった」と語るほど。ツボにはまった時のコーイは強い。

 

Stage6:3月10日/丘陵

レースキャンセル

当初はコース短縮を発表しスタート地でセレモニーをしたが、倒木が起きるほどの強風で結局キャンセルに。選手たちはクイーンステージを控えて束の間の休息日を迎えた。ポガチャルも春の嵐には勝てず。

 

◆Stage7:3月11日/山岳

優勝:ポガチャル/2位:ゴデュ/3位:ヴィンゲゴー

予想通り、というか予想以上にポガチャルが強かった。最終の超級登坂でポガチャルが仕掛け、ゴデュヴィンゲゴーが食らいつくも、最後はポガチャルのスピードが圧倒し、2位以下にさらにタイム差をつけた。ゴデュはツールに向けて好印象の走りができたといえるが、おそらくポガチャルはまだ本気ではない(余裕があったように思える)。

 

◆Stage8:3月12日/丘陵

優勝:ポガチャル/2位:ヴィンゲゴー/3位:ゴデュ

総合優勝を争う選手だけになった先頭集団から、エズ峠でサイモン・イェーツが仕掛けるもポガチャルカウンターアタック。総合上位にいる選手たちが必死で追走するも届くことなく、そのままゴールまで独走したポガチャルがステージ3勝目と総合優勝を決めた。

 

 

◎予想結果:総合優勝候補ほか

予想結果も合格点(当社比です笑)。トップ10のうち7人当てて、次点で選んだ中から2人当てた。まあ、順当な結果だったともいえるのだが。個人的な予想では、チームTTヴィンゲゴーがリードし、山岳ステージでポガチャルが挽回する展開を予想していて、その通りだったのだが、チームTTのタイム差が想像よりも小さく、山岳でヴィンゲゴーがここまで大きく遅れるとは思わなかった。二人ともまだ調整途中であり、ツールも同じような結果になるとは思わないが(まだ3月だし)、それにしても“ポガチャル恐るべし”である。ダニマルは好不調の差が大きい。その分シヴァコフが頑張ったともいえるが、イネオスは絶対的なエースの存在がいないのは苦しいと感じてしまう。パウレスゴデュヨルゲンソンは全ステージ通して持ち味を発揮して好印象だった。ヴォークランスケルモースレパントGCの適性を十分感じさせてこれからも要注目。なお、名前の背景を黄色にしているのは現時点でツール出場予定。

 

 

 

◎予想結果:スプリンター

*表のリザルトはポイント賞の順位。

メルリールピーダスンコーイがステージ優勝をし複数回表彰台にあがるなど、別格の仕上がりだった。ほとんどのスプリンターは山岳をこなすのを避けて最終ステージを待たずにリタイアしたが、表の上位にあげた選手を中心に実力を発揮したといえる。

マグナス・コルトはステージ優勝こそなかったものの一時マイヨジョーヌを切るなど印象的な活躍をした。期待のドゥリーはそれなりにいい走りを見せつつもワールドツアー初勝利はおあずけに。このレベルのレースになると、トレイン含めた経験値がもう少し必要か。なお、名前の背景を黄色にしているのは現時点でツール出場予定。

 

 

◎その他雑感

ツールに向けて、優勝候補たちの狙いと課題が見れたように感じた。今年もやはりポガチャルヴィンゲゴーの争いが中心になりそうだ。パリ〜ニースではユンボはいつもの総合に向けたアシスト体制ではなく(山岳アシストのクスなどがいなくてTTスペヤリスト中心だった)チームTTで他を圧倒するような戦略を取ってきたが、そこまで効果的ではなかった。同時に開催しているティレーノとの兼ね合いもあったと思うが(ファンアールトほか、そっちにも重要な戦力を投下したため)うまくハマらなかった。グランツールに向けての感想は長くなりそうなので(ジロも含めて)、同時に開催されたティレーノも交えて別の記事に(近日公開予定)。スプリンターも多くのチームのエース級が揃い、興味深いレースだった。

 

 

◎プレビュー記事はこちら

jamride.hateblo.jp