チームと選手の成績チェック【3月終了時】
3月に入りビッグレースの連戦で、チームも選手も大きく順位変動あり。現時点での成績を集計し、チェックしてみた。好調なチームとブレイク候補を中心にコメントしていく。
*表のUCIポイントおよび勝利数は2023年第12週(3月28日)までの集計。
◎チーム成績(UCIランク・勝利数)
クラシックレースの好調なチームが大きくジャンプアップしつつ、今季のチームの状態もかなり見えてきた。*表はUCIランク順で、ワールドチーム18チームと昨季上位の4つのプロチームで構成。UCIランクと勝利数は2022年分もグレーで表記。
ランキングではUAEチームエミレーツが先月から首位をキープ。ポガチャルがパリ〜ニースでも圧倒的な成績を残し、アルメイダ、Aイェーツ、ウリッシたちも好成績を残し、チームの層の厚さを感じさせる。3月に大きくジャンプアップしたのがユンボとグルパマとアルペシン。ユンボはベルギークラシックではファンアールトとラポルトを中心にすべてのレースの表彰台にあがる(うち3つは優勝)など支配的でもありつつ、ティレーノ〜アドリアティコとカタルーニャでログリッチが総合優勝し、パリ〜ニースではヴィンゲゴーが総合3位と、全方位的に手がつけられない強さを見せている。いまのところ最強だった昨年以上に強く、隙は全く見つからない。グルパマも優勝こそピシーの1勝しかないものの、パリ〜ニースのゴデュ総合2位、ストレーデビアンケ(マドゥアス2位・グレゴワール8位)やE3(キュング6位・マドゥアス8位)での複数トップ10等、各レースでエースたちが好成績をあげて、ピシー、グレゴワール、レニー・マルティネスらの今季昇格した若手たちが早くも活躍し、先行きはとても明るい。アルペシンはロードに戻ってきたばかりのマチューがミラノ〜サンレモの勝利をはじめ大暴れ。フィリプセンが3勝、グローブスが2勝し、ヘルマンスやクラーウアナスンの移籍組も加わり、3月まで未勝利だったチームとは全く別のチームになった。
イネオス、クイックステップ、バーレーンはまずまず。イネオスはクラシックでの善戦とステージ総合での苦戦、クイックステップはステージ総合での善戦とクラシックでの苦戦と、ともにチームカラーは変わったとみたほうが良さそうだ。バーレーンは優勝こそ少ないもののステージ、ワンデーともに多くの選手がトップ10に入るなど全体に好成績でチームの状態は良い。先月まで2位にいたアンテルマルシェはやや勢いは失われたが、ここまでで5位にいるのは上出来、これからも期待したい選手は多くいる。トレック(昨13位→7位)、ロット(昨14位→8位)、EF(昨18位→10位)、モビスター(昨11位→11位)は順調といえる。エースクラスがそれなりに好成績をあげつつ、意外な選手の活躍があるのもこの4つのチームの共通点か。
現時点ではボーラはちょっと心配。昨年活躍していた総合勢が軒並み成績が落ちているの。昨年が少し出来すぎだったとしても今季の不振は気がかりなレベル。チームに何か起きているのだろうか。またジェイコ・アルウラーは2月〜3月ではワールドチームで下から2番目の成績で、サイモン・イェーツの孤軍奮闘状態。1月の好調さが全く感じられrない(オーストラリアレースで稼いでいただけになっている)。アルケアもせっかくワールドチームに昇格したシーズンだが、厳しい成績低下ぶり(昨季から戦力も落ちているので言い方は悪いが妥当ともいえる)。アスタナはかなり厳しい。正直なところ、浮上するきっかけすら全く見えない。
◎個人成績(UCIランク)
ランキング上位50名を表にした。各チームともエース級の選手たちが先月からランキングを順調にあげて、今年の勢力図(年間上位になりそうな選手が上位に並んでいる)も見えてきた。以下コメントは特に気になる活躍をしている選手にのみ言及する。また活躍したレースが1・2月中心の選手は下記リンクから辿ってください。
上位10名は定位置といえそうな気配も感じる。ログリッチは完全復活といってもいいだろうか。怪我明けにも関わらずしっかり勝ち切る熟練の走りぶりはログリッチに唯一足りなかった安定感が感じられた。大人のレース運びというか、勝ち方を知っている強さというか、あれだけエースの貫禄を見せる選手がいるチームは強い。ガンナも昨年までと違う強さを見せている。クラシックでの積極的な走り(特に最終盤までビッグ3につらいついたミラノ〜サンレモ)と、それなりの山岳も苦にしない登坂能力の向上による総合成績もあがり(さすが難関山岳は厳しいものの)今後のキャリア形成にも大きな影響のあるシーズンになりそうだ。
この中で勢いのありそうな選手の名前をあげておくと、パウレス、チッコーネは一皮むけた感じで、今年はキャリアハイの成績を残しそうだ。どちらもエースの自覚が感じられるし、常に積極的な展開に持ち込もうとする姿勢が好印象。スプリンターでは(偶然32位から続くが)メンテン、ウェルスフォード、モラノ、テイッセンは好調。グランツールでも注目したいレベルになっている(モラノは交通事故で足指骨折し全治1ヶ月)。
チーム別ではユンボが6人(トップ10に3人)と別格の強さで、ほかにはUAEが6人、イネオスが5人、クイックステップが4人。好調なチームにはやはり多くの選手が活躍している。ひとりも入っていないワールドチームは、アスタナ、AG2R、アルケア。
◎過去の成績まとめはこちら