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パリ〜ルーベ 2023|出場選手まとめ

 

今年も「北の地獄」がやってくる。

4月9日にフランスで開催される「クラシックの女王【パリ〜ルーベ】初開催は1896年(和暦では明治29年)で今年が120回目という伝統と歴史を誇る、世界一過酷で美しいレースだ。パリ〜ルーベは、そのパヴェ(石畳)の存在が他のロードレースと別物の競技にする。荒れた石畳はパンクやメカトラが続出し、ライダーたちは強烈な振動に耐えながら、悪路を走るバイクコントロールのスキルと、常に落車の危険に立ち向かう勇気も必要とする。彼らは常にペダルを踏み続けていなければならないのだ。

バイクも特別仕様で(パリ〜ルーベしか使用しない、太く空気圧が低いタイヤなど)、風除けで隊列を組むこともなく、ただ肉体と精神力の強さと、そしてトラブルを撥ね付ける強運も試される。晴れの日は巻き上げる土埃で目や喉を痛め、刎ね飛ばす小石は凶器になり、スリッピーな路面での落車は尖った石の上ならば普段のレースよりも深刻な怪我になる。そんなライダーたちの悪戦苦闘する姿を観客たちは讃える。このレースの別名は「北の地獄」である。

*優勝候補は10人(本命は3人)、その他有力選手は30人までを目安にしています。*情報は2月23日現在。出場選手は変更の可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

 

◎レース概要

総距離257.2km・獲得標高1362mのコース上で、スタートから100km近く走ってからパヴェが始まる。今年のパヴェは29セクターで、距離の合計は54.5km(一覧表は地図下の表を参照)。荒れ具合や狭さ・距離などの難易度により5つのカテゴリーがあり(表の★の数)、ナンバーはゴールに向けてカウントダウンしていく。

特に5つ星の石畳セクターはいずれも例年激しい勝負が行われる難所。最初に通過するのはパリ〜ルーベの代名詞ともいえるアランベール(セクター19/2.3km)で、森の中を真っ直ぐに走るパヴェは大勢の観客が集まる。続いてやってくるモンサン=ペヴェル(セクター11/3km)から、残り20kmを切ったあたりのカルフール・ド・ラルブル(セクター4/2.1km)にかけては、かなり少人数に絞られるだろう。最後のゴールは数々の名勝負を生んできたルーベのヴェロドロームで、競技場の大観衆が勝者を迎える。パリ〜ルーベは最後まで走った全てのライダーが称えられるのだ。*地図と表はオフィシャルサイトからお借りしてます。

 

 

◎優勝候補

パリ〜ルーベは特にトラブルに見舞われがちで不確定要素が多いため優勝候補を限定するのは難しい。その中で本命として外せないのはマチュー・ファンデルプールワウト・ファンアールトの永遠のライバルたち。どちらもパリ〜ルーベの走るスキルが高く(シクロクロス世界王者)、過去に表彰台に入っている。この二人はチームメイトも強力だ。ユンボは今年のクラシックで2勝しているラポルトと1勝のファンバーレ(昨年のルーベ覇者)も入り、様々な展開にも対応できる。ただしファンバーレは怪我明けでもあり、今回はアシストだろうか。アルペシンもチーム内の4人がシクロクロッサーで、中でも昨年のグラベル世界選手権王者のジャンニ・フェルミールスは他チームへも脅威になる。ただし、先日ファンアールトはインタビューで「ロンドで転倒した時から膝の状態が良くない」と話をしていたが、回復するだろうか。状況によっては他の選手がエースになるだろう(自転車選手はよく嘘をつくので治る可能性も高い)。

他の強豪では、キュングは昨年も表彰台で今季も好調を維持、てっぺんを狙う資格は十分。今季一段階レベルアップしているガンナも優勝を狙う力はあると見る。これまではルーベではエースとして走ってなかったが、ピドコックも外れて今回は満を持してエースとして出場、期待は大きい。トレックもピーダスンストゥイヴェンともに上位を狙う存在で、石畳耐性が強くなんどもトップ10に入っているストゥイヴェンからロンドでも好調だったピーダスンがエースナンバーを背負う。モホリッチもクラシックではずっと好調を維持しているが、不運な落車続きというのがやや気になるところ。クリストフもベテランながらまだ衰えが見られない元気のいい走りで、特に終盤まであわや逃げ切りかと思えたドワーズは強烈だった。ポリッツメーウスと上位フィニッシュ経験者を揃えたボーラ、クラシックで今までにない積極的な走りを見せているモビスターからはガルシア、オンループやル・サミンで強さを見せたトゥーニッセン、まだまだ修行中の若手ながら昨年初出場のルーベで好成績をあげたルーヴェル、そして2018年の覇者デゲンコルプ、過去5回もトップ10に入っているファンマルケも調子を上げている。一昨年は2位に入ったフロリアン・フェルミールスも昨年は少し伸び悩んでいたが調子を上げている。あと化けそうな気配を感じているビョーグにも期待している。

個人的に応援しているのはウルフパック。おそらくエースはアスグリーンでロンドで復活を感じさせる強さがあり期待したい。また初出場のメルリールが意外と強そう。そして昨年は残念な落車をしたランパールト(あの観客との接触がなければ表彰台も狙えていたはず)とうまく絡めば表彰台は十分狙える。ここ数レースはチームにも上昇の兆しがある。他の上位候補は下記表を参照。

 

 

◎その他の注目選手

パリ〜ルーベでは優勝候補が勝つとは限らない。例えば2021年の表彰台の3人は初出場だった。なので、この表から漏れた選手が上位に来ることもかなりの確率であると思うが(なるべく初心者向けで人数を絞って紹介したいという意図なので)ご了承ください。過去の実績からでは、ファンアーヴェルマートスティバルサガンは文句無しの有力候補だが、今年は調子が上がらず上位に絡むのはちょっと厳しく思える。★印をつけた選手パスクアロンアレハールトプランカールトフリソンは逃げに乗ると結構いいところまで行くのではと思ってる。もともと集団スプリントになることはほぼありえないレースなので、今年の女子のように逃げから勝者が生まれることはかなりの確率でありえる。

 

 

◎過去の結果(2022年、2021年、2019年)

参考までに過去3年分の上位10位を入れておく。所属チームは今季との比較も。2020年はコロナの影響で中止になった。3年間で複数回トップ10に入っているのは、ランパールトが3回、ファンアールトマチュー2

出場選手中、過去の優勝経験者は、ファンバーレ(2022年)、サガン(2018年)、ファンアーヴェルマート(2017年)、デゲンコルプ(2015年)。

 

 

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