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クリテリウム・デュ・ドーフィネ 2023|出場選手まとめ

 

6月4日から南フランスのドーフィネ地方で開催される【クリテリウム・デュ・ドーフィネ】。75回目を迎える伝統的な8日間のステージレースであり、少し後に開催されるツール・ド・スイスと並びツール・ド・フランスの前哨戦として扱われ、ツールに出場予定の選手が多く参戦する。特にエース級の選手たちの仕上がり具合はチェックしておきたい。平坦なコースはなく起伏多めなので、スプリンターは少なめ。以下、各ステージと注目選手を簡単に紹介する。

*レース前にブログを書ききれなかったのは面目ない。ちょっと具合悪くて…(嘘ですサボりです)

*優勝候補及び有力スプリンターは10人まで(本命は3人)、それ以外の有力選手は30人まで絞っている*選手が変更の可能性あり。表内の選手のUCIランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

 

◎ステージプロフィール

◆Stage1(6月4日/丘陵):Chambon-sur-Lac  >  Chambon-sur-Lac

 距離158km|獲得標高2753m

それほど急勾配ではないがずっとアップダウンが続き、後半は4級の丘超えを3周回するコース。ピュアスプリンターには厳しい可能性が高い。ゴール前は登坂で遅れなかった集団によるスプリント勝負か逃げ切りでの優勝争いになると予想。ダウンヒルからのスプリント力があるパンチャー向きか。

 

 

◆Stage2(6月5日/丘陵):Brassac-les-Mines  >  La Chaise-Dieu

 距離167.3km|獲得標高2865m

前日同様ゆるやかな勾配のアップダウンが続き、後半は丘を2周回してゆるやかながら登り基調のゴールになる。パンチャーによる小集団スプリントを予想。ゴール手前10kmあたりの場所にある1kmほどの坂が勝負を分けるポイントになるだろうか。差はつかないまでも総合勢の調子を見れるステージになるかも。

 

 

◆Stage3(6月6日/丘陵):Monistrol-sur-Loire  >  Le Coteau

 距離194.1km|獲得標高2089m

唯一スプリンター向けといえそうなコースだが(別の言い方をするとこのステージ以外では勝負できない)、序盤から登坂が続き、逃げ向きのコースでもある。ただ距離が長いので、最初の2級山岳を超える辺りでの集団とのタイム差と逃げメンバー次第だろうか。逃げグループでの勝負になる場合は最後の4級山岳が勝敗を分けるポイントか。それほどの坂ではないが体力を問われそう。集団はそれまでに捕まえたい。

 

 

◆Stage4(6月7日/個人TT):Cours  >  Belmont-de-la-Loire

 距離31.1km|獲得標高408m

総合争いに大きな影響のありそうな個人TT。30kmと長めで、スタート直後から始まる登坂と長い下り坂はTTのテクニックを問われ、中盤以降はゴールまで緩やかながら登り基調のため脚を休めることができず地味に体力を削られる、なかなかハードな設定。波乱は起きないと思うが、意外なタイム差がつく可能性もあり、総合を争うエースたちには試練のステージ。

 

 

◆Stage5(6月8日/丘陵):Cormoranche-sur-Saône  >  Salins-les-Bains

 距離191.1km|獲得標高2018m

中盤の中間スプリントポイントを超えると集団はふるいにかけられる展開を予想。特に終盤の2級山岳はかなり人数が絞られそう。総合勢でペースを上げるチームがいると(ユンボとか)脱落する選手も出てくるかもしれない。パンチャーでも苦しむ登坂になりそうだが、そこを凌げればゴールまで下りになるのでチャンスがある。

 

 

◆Stage6(6月9日/山岳):Nantua  >  Crest-Voland

 距離170.2km|獲得標高3406m

ここからの3日間は総合勢が主役になるだろう。終盤の2級山岳は長い距離の登坂で、総合エースたちの脚試しに。アシストも含めてどれだけ最後まで人数を揃えられるか(ツールも見据えて)チーム力の差が見えてくる。大きな差はつかなくても、翌日以降のステージでの駆け引きも含めて、総合優勝に絡む選手は目星がつくかんじか。

 

 

◆Stage7(6月10日/山岳):Porte-de-Savoie  >  Col de la Croix de Fer

 距離147.9km|獲得標高4015m

獲得標高が4000mを超えるクイーンステージ。二つの大きな超級山岳は登坂距離も長く勾配もなかなか。山頂フィニッシュのゴールは標高2000m超えの高地。最後の登坂は総合エースたちによる力比べになるだろう。このステージを勝てる選手はツールでも強いはずだ。

 

 

◆Stage8(6月11日/山岳):Le Pont-de-Claix  >  La Bastille – Grenoble Alpes Métropole

 距離152.8km|獲得標高4160m

最終日も総獲得標高が4000m超えで、中盤以降の3つのカテゴリー山岳は勾配もあり、ちらかのない選手は遅れていく。またゴール前の1級山岳を超えたあとの長い下りも曲者。登りで遅れても挽回するチャンスでもあるが落車などは一瞬で全てを失い危険もある。さらにゴールは距離は短いながらも激坂山頂フィニッシュ。大きなタイム差がついていなければ総合争いは最後まで逆転もありえる油断ができないコース。

 

 

◎総合優勝候補

ツールを控えた総合エースたちがかなり集結している。ここから調子は変わるにせよ、それぞれの仕上がり具合はツールに向けて参考になるメンバーなのは間違いない。どのチームが積極的に仕掛けるか、ツールを見据えた戦いは始まる。

まず気になるのはヴィンゲゴーだ。昨年のマイヨジョーヌは今年も好調を維持し視界は良好。アシスト陣も含めてツールを見据えた予行練習として絶好の機会になる。ヴァルテルもサブエースとして終盤まで頑張ると期待。続いて実績でいえば、ランダヒンドレーカラパスゴデュマスアダム・イェーツはグランツール上位の常連。ランダゴデュは今年好調で、どちらもTTが得意ではないがうまくこなせれば表彰台は射程圏内。アダムはツールではポガチャルがエースと公言しているが、逆にドーフィネではエースとして勝負したいだろう。ヒンドレーマスはまだ調整中か。ツールに向けた試運転になると想像している。カラパスは先日ようやく移籍後初勝利をあげて調子をあげつつある印象。もともと成績にムラがあるタイプなので、優勝候補というよりコンディション調整のレースになると思ってる。

その他では今季絶好調で注目しているのは、ヨルゲンソンチッコーネ。ヨルゲンソンは若手総合系ではいまトップクラスの勢いがある。オマーンstage3でプロ初勝利をするとそのまま総合優勝し、その後もパリ〜ニース総合8位、ロマンディ総合2位とすさまじい成長ぶり。モビスターにはマスがいるがWエース体制を予想。マスの様子によってはヨルゲンソンが勝負に出る可能性は高い。TTの結果次第か(ただしヨルゲンソンには移籍の噂もあり、ツールではマスがエースか)。チッコーネはトレック加入後期待されながら伸び悩んでいたが、今年一気に開花の雰囲気。バレンシアナ総合2位、ティレーノ総合5位、カタルーニャ総合7位と出場したステージレースは全てシングルリザルトの安定ぶりで、ログリッチとレムコに登りスプリントで勝ったステージは特に鮮烈だった。本来出場予定だったジロはCovid-19によって出場回避したが(地元を走るコースだったので気の毒なほど傷心していた)、その意欲をツールへぶつけてほしい。状態がよければ優勝候補にしたいが、あまり無理はしてほしくない。怪我明けといえば、カルロス・ロドリゲスもストラーデビアンケでの骨折からの復帰レース。回復次第では優勝候補になる力は十分。個人的にはイネオスのツールの総合エースは彼しかいないとさえ思ってる。

ベン・オコーナーダニエル・マルティネスメインチェスは上位候補になるくらいの実力はあるが、今季ここまでは調子があがっていない印象。マルタンチャベスは総合で遅れながら、逃げでタイム差を挽回したりして、なんだかんだそれなりの成績を残しそうだ(総合力では他の有力勢には少し落ちる印象だけど、ステージ狙いなら間違いなく強い)。飛躍が楽しみな若手ではレニー・マルティネスファンヒルスTヨハンネセン。3人とも他の強力なメンバーに混じってトップ10くらいに入っても驚かないほどに成長を見せている。そして上り調子のマックス・プール。直近のレースで好成績(ハンガリー総合4位、ロマンディ総合4位)を上げていて期待値高め。各チームのエースが揃う中でどれだけの走りをするのか注目したい。DSMは他にも期待の若手総合系の選手が複数いて面白そうだ。ヘイグはさすがにジロの疲れもあるはずだが大丈夫なのか?まあ、きっと大丈夫なんだろう、自転車選手ってほんとタフですね。

 

 

◎スプリンター & パンチャー

平坦ステージはなくピュアスプリンターと呼ばれる選手は苦戦すると思われるので、今回は丘陵ステージでのスプリント勝負に絡みそうなパンチャーもセットにしてみた。ラポルトがこのメンバーではスピードは頭一つ抜けている印象だが、ヴィンゲゴーのアシストの役割があるのでどこまで勝負できるか。スプリンターではないが、Eヘイターヴァーノンはラポルトに匹敵するスピードがある。ここ数レースでも好調ぶりが目立つジングレメンテンバジオーリは期待値高め。トレンティンオフステテールパージュも向いていると思うのだが、少し調子を落としているか。スプリンターの実績ではフルーネウェーヘンサム・ベネットが一番上だが、彼らには厳しい可能性が高い。逆にこの二人は最終盤に残っていれば一気に優勝候補筆頭になる。残っているイメージはわきにくいが…。ボーラはサムベネットよりもDファンポッペルの方が期待できそう。

 

 

◎その他の注目選手

この中では、展開次第では総合でも上位を狙えそうなのは、ブッフマンマドゥアスツィマーマンファンセヴェナント(ただし病み上がり)、シャンプッサングロスシャートナーマイカラトゥールあたり。そして若手ではマルコ・ブレナー(ノルウェー総合10位)、オスカー・オンレー(ハンガリー総合6位)のDSMの二人は(総合優勝候補に入れたプールも含めて)才能の片鱗を見せている。

アラフィリップは本来の好調な時にはまだ戻れていないが、ツールに向けて調子を上げてきているようには見えるので登坂勝負のステージなどでは期待してみたい。ベルナルも少しづつ状態は上向いている印象。怪我前の状態に戻るにはまだ時間がかかりそうだが、ここ数レースでは確実に整ってきている。このドーフィネでは、怪我などからの復帰レースになる選手が多く、彼らのコンディションも気になるところ。総合優勝候補で名前を上げたカルロス・ロドリゲスチッコーネ以外にも、ファンバーレカンペナールツファンセヴェナントトルーク(トレック)等々。

stage4の個人TTは、カヴァニャEヘイターネルソン・オリベイラトマヴァーノンが優勝候補。ビョーグポリッツダーブリッジカンペナールツクラドックラトゥールライトジングレファンバーレあたりも調子がよければ上位候補。総合勢ではヴィンゲゴーが頭一つ抜けて強い印象。他にはアダム・イェーツダニエル・マルティネスヨルゲンソンカルロス・ロドリゲスも上位候補になる。オコーナーヴァルテルも悪くはない。ゴデュマスもTTは改善傾向にあるのでちょっと期待したい。

 

 

 

◎過去の総合成績(2022年、2021年、2020年)

参考までに過去3年間の総合10位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞)を入れておく。所属チームは今季との比較も。個人でトップ10に複数回入っているのは、ゲイガンハートミゲルアンヘル・ロペスオコーナーが2回。

出場選手で過去の優勝者はダニエル・マルティネス(2020年)のみ。

 

 

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