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ツール・ド・フランス 2023|ステージプロフィール

 

7月1日から開催されるツール・ド・フランス。紹介記事第3弾は、コースプロフィール。今年はざっくりというと、フランスの国土を西から東に横断するルート。スタートは自転車レースではお馴染みのスペイン・バスク地方バスクカントリーやクラシカ・サンセバスティアン等)。スペインの山岳と海岸線を3日間味わった後、プロトンは1週目から早々にピレネー山脈に突入。2週目からは中央山塊〜ジュラ山脈と抜けてアルプスに突入。最終日は恒例のパリ・シャンゼリゼ通りでの集団スプリント。総走行距離は3404km、総獲得標高は57000mに及ぶ、長く熱い3週間の旅だ。

 

 

 

 

 

◎ステージプロフィール

各ステージの特徴を簡単に表にした。コース名(地域名)、コースの特徴、《平坦/丘陵/山岳/個人TT》の区分、走行距離、獲得標高、山岳の種類と数、ゴール状況(山頂フィニッシュ/集団スプリント等)を大まかにまとめている。今回のステージは平坦=6/丘陵=6/山岳=8(うち山頂フィニッシュ=4)/個人TT=1で構成される。

またステージに向いてるタイプの選手も優勝候補として一部記載。実際には調子の良し悪しやチーム状況(総合狙いかステージ狙いか、アシスト専念か自由があるか等)tpレース展開によって(逃げは強力か、追走グループはタイム差をつけるか等)勝負に絡む選手は変わるので、あくまで目安程度にご覧下さい。

 

以下、ざっくりと(ほんとにざっくりと・笑)各ステージの特徴や予想される展開をまとめている。個人的に特に注目したいステージは《stage1・6・13・15・17》で、コメントも多めになっている。

 

◎1週目

まずは1週目。最初のステージから注目度は高い。

stage1はカテゴリー山岳が5つも詰め込まれたパンチャー向けのステージ。初日から逃げ切るのは難しいと思うが、山岳ポイントも多く稼げるので、張り切る逃げ屋は多いと思う。なんといっても初日優勝者にはマイヨジョーヌというご褒美が待っている。このステージで逃げる選手は次のステージ以降も逃げに乗る可能性は高いのでチェックしておきたい。勝負を分けるポイントは最後の3級ピケ峠。距離は短いながら急勾配のため、元気のいいアタッカーたちが確実にアタックを狙っている。例えば、アラフィリップ、マチュー。駆け下りた後のゴールも登り基調なのでスプリンターは苦しいか。またピケ峠ではポーナスタイムの設定もあるので、最初のマイヨジョーヌ着用者を決めるのに影響もあるため要チェック。

stage2は程よい起伏は逃げ向きでもあるが、今大会最長コースは逃げきるのもかなりハードだろう。前日に続き山岳賞狙いのクライマーも逃げるかも。終盤の2級山岳が選手をふるいにかけ、ゴールは登れるスプリンターとパンチャーたちの小集団スプリントになると予想。初日にマイヨジョーヌを着た選手ももちろん勝利を狙ってるはず。

stage3にして、ようやくスプリンターたちに活躍の場が与えられる。各チームのエーススプリンターとトレインの勢力争いに注目したい。とはいえ開始直後から3級山岳の登坂があり、山岳賞ジャージを狙う逃げ屋たちも活発に動きそう。このステージでスペインとはお別れ。海の近くを走るステージもこれが最後なのはちょっと寂しい。

stage4は2日連続で集団スプリントになりそう。起伏は細かく緩やかなのでスプリンターの障害にはならないが、風には注意が必要か。この日は逃げメンバーもルーラー系の選手になると、早めに逃げを捕まえておきたい。

stage5ははやくも総合争いが始まる気配。まだまだジャブの打ち合いとはいえ、待ち受ける超級と1級山岳の組み合わせはピレネー特有の険しさがあり、油断はならない。3年前に近いルートでポガチャルが勝ったステージでもある。

stage6は今大会最初の山頂フィニッシュ。144kmと短い距離ながら3894mもの総獲得標高の登坂を詰め込まれたコースは、確実に総合エースたちをふるいにかける。1級山岳を超えた後に待ち受けるのは名物峠の超級トゥールマレー。4年前にピノが優勝した山だ。今回も大勢の観客が詰めかけるだろう。さらに山頂フィニッシュになる最後の1級コトレ・カンバスクのゴール手前5kmは危険な急勾配。思わぬ差がつきかねないステージで、おそらく総合上位に絡む顔ぶれは見えてくる。

stage7はスプリンター向け。獲得標高は個人TTを抜けば、最終日パリステージの次に少ない平坦なルート。残り40km地点にある4級山岳を過ぎればスプリンターを抱えるチームの位置取り争いが始まるだろう。ゴールはワインで有名なボルドー

stage8はプロフィールを見るとスプリンター向けのコースに思えるが、ゴールまで残り70kmにある3級山岳以降は細かいアップダウンが続き、パンチャーやクラシックハンター向けのステージになりそう。また逃げ屋向きでもある。山岳ステージを脚を温存して一発勝負に出るライダーもいそうだ。ゴールの1kmは登り基調。ピーダスンが得意とする勾配だが、マチューやギルマイアランブルなど勝利を狙う選手は多くいる。

stage9は総合争いの第2ラウンド。超級ピュイ・ド・ドームの山頂フィニッシュが待ち構える。レースに使用されるのは36年ぶりという未知の激坂区間。ゴールは総合エースたちが競い合うことになる。またスタート地はフランスの人気選手だったレイモン・プリドール氏が暮らした場所。そう、マチューのおじいちゃんだ。さすがにステージ優勝は厳しいと思うが、彼が張り切る姿は期待したい。ピドコックあたりと一緒に大逃げしてもいいんですよ(もはや願望)。

ここで、ようやく最初の休息日。

 

◎2週目

stage10はスタートからゴールまで平坦な場所はない慌ただしいコース。スプリンターには苦しく、逃げ向きでパンチャー向き。モホリッチやピドコックのようなタフなワンデーレーサーに逃げてほしい(というか、この二人のダウンヒル対決はどこかで見たい)。

stage11はスプリンター向け。3つある4級山岳はスプリンターを置き去りにするような坂ではない。この日も逃げ屋たちにはチャンスでもあるが、エーススプリンターを抱えたチームは逃したくないはず。デクレルクやファンバーレあたりが集団コントロールする姿が容易に想像出来る。

stage12はひまわり畑と並んでツール名物の一つであるワインで有名なぶどう畑の丘を走っていく。序盤から合計5つのカテゴリー山脈があり、大きな山はないものの総獲得標高は3000mを超えるため、ピュアスプリンターは苦しいか。この日も逃げ屋向きでもあり、登れるスプリンターにチャンスがあるか。

stage13は、総合争い第2ラウンドは山岳3連戦。その初日7月14日はツールの中でも特別な日、フランス革命記念日だ。総獲得標高は2400mというと大したこと無さそうに思えるが、高低図を見てほしい。カテゴリー山岳ふたつのうち、最後の超級グラン・コロンビエは標高差1300mあまりを一気に登る山頂フィニッシュ。総合争いがは終盤一気に加熱する。誰がどこでアタックするか、注目したい。前回は2020年stage15で使用されポガチャルが制しているが、革命記念日のこの日こそ、フランス人クライマーは燃えているはず。たとえばバルデ、ゴデュ、そしてラスト・ツールのピノピノが勝ったらたぶん泣いちゃう(もはや願望)。

stage14はアルプスに突入。超級を含む5つの山岳はどれも厳しい山道で総獲得標高は4281m。特に終盤のラマズ峠から超級ジュー・プラーヌでは多くの選手が遅れることになるだろう。この日を終えると、総合上位勢はほぼ顔ぶれは決まっているかもしれない。少し心配なのは、超級の後のゴールに向かうダウンヒル。総合争いもあまりタイム差がつかずに集団で安全に走ってほしいと願いたくなる。

stage15はこの日も5つの厳しい山岳があり、総獲得標高は2日連続の4000m超え。最後の山頂フィニッシュは激坂ではじまる容赦ない登坂。総合を狙うチームはアシストも含めた総力戦になる。まあ、普通に考えると、ポガチャルとヴィンゲゴーの今大会屈指のガチバトルになるが、特にTTを得意としていないクライマーたちは、翌週に控えた個人TTの前に2強にあわよくばタイム差をつけて勝ちたいはず(すでにタイム差をつけられて総合3位狙いになっている可能性もあるけれど)。

ここで二度目の休息日。

 

◎3週目

stage16は今大会唯一の個人TT。距離こそ22kmと短いが、激坂を含む難易度の高いTTになり、思わぬタイム差がつく可能性もある。前週終盤の山岳で費やした体力の回復具合も大きく影響するだろう。最後の7kmは最大15%の勾配を含む登坂区間。TTバイクをノーマルに交換する選手もいるかもしれない。そのあたりの戦略やチームのメカニックたちの動きも注目ポイント。

stage17は最終決戦になりえるクイーンステージ。獲得標高は5399mという恐ろしいプロフィールだ。1級ふたつと2級を超えて、最後に登場するのはボスキャラにふさわしい超級ロズ峠。最大で24%に達する超激坂のつづら折りの名所を登り、標高2300m超えの山頂を過ぎてから5kmほど降って最後にまた激坂を登るフィニッシュ。総合順位は大きく入れ替わるくらいの難易度だが、ここまでの総合順位とタイム差次第で勝負の様子も変わる。高い山は南米勢が伝統的に強い。カラパス、チャベス、ウランのEFメンバーを中心に注目したい。

stage18は丘陵ステージに設定されているが、実質スプリンター向け。ふたつの4級山岳は前日の山岳と比べれば小さな突起物のようなもの。ただし、ここまで山岳を乗り越えてきたスプリンターたちはトレインを組むアシストも含めて、どの程度脚が残っているのかは大きな問題。アシストが疲弊しているチームが多いようだと逃げ屋たちの勝負になる。

stage19は2日連続のスプリントステージ。ただし序盤と終盤にあるふたつのカテゴリー山岳は少々厄介で登れるスプリンターが有利か。また、逃げ屋が勝つ可能性は前日よりも高そうだ。

stage20は総合争い最終決戦。6つのカテゴリー山岳は、ひとつひとつはそれほどでもないが、休む間もなく繰り返されるアップダウンは激しい消耗戦になりそう。終盤のふたつの1級山岳プチ・バロンとプラツァーバーゼルは総合勢が逆転を狙ってアタックすれば、タイム差もつけられる可能性はじゅうぶんにある。ここまでの順位とタイム差次第か。また6つもカテゴリー山岳もあるので、山岳賞争いも佳境である。

stage21は恒例、パリのシャンゼリゼに向かってのパレード走行。マイヨジョーヌを着用するチームの晴れ舞台であり、ナンバーワン・スプリンター決定戦でもある。ここまで生き延びたスプリンターたちは、この日のために辛い山岳を耐えてきたとさえいえる。昨年制したフィリプセン、シャンゼリゼ最多勝利数を誇るカヴェンディッシュ、他にもこのステージにかけるスプリンターたちは、果たして何人残っているか。

完走するすべての選手とチームに祝福を。

 

 

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各ステージのもっと詳細な情報(マップ、登坂プロフィール、ゴール詳細等)を知りたい方は公式サイト(英語)やJSPORTSの特設ページが詳しいので、以下リンク先をどうぞ。

 

◎Tout de France 2023 オフィシャルページ ルート詳細

◎JSPORTS ツール・ステージプロフィールページ

ステージ詳細 | ツール・ド・フランス | サイクルロードレース | J SPORTS【公式】

 

 

◎ステージ優勝候補たち

有力選手たちを総合優勝候補、スプリンター、その他に分けて以下のページで紹介しています。基本的には平坦ステージ=スプリンター、山岳ステージ=総合優勝候補、丘陵ステージ=パンチャーやクライマー(逃げもあり)、個人TT=TTスペシャリストか総合優勝候補、がそれぞれのステージ優勝をするケースが多くなるので、選手の脚質タイプを参考にしてみてください。

 

◎レース全体の見どころも記事にしてます

 

◎参考までに過去3年間の総合成績20位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞・チーム総合)をリンク先のページに記載。

jamride.hateblo.jp