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チームと選手の成績チェック【6月終了時】

 

6月はチーム・選手個人ともにそれほど大きな変動はなかった。ツール前哨戦の成績(クリテリウム・ドーフィネやツール・ド・スイス)を中心に活躍した選手が成績を上げたのだが、つまり6月に成績を伸ばした選手は好調を維持してツールで活躍する候補になる。好調なチームと選手を中心にコメントしていく。なお、個人成績については独自に集計しています。どこのサイトにもありません。と同時に集計ミスしている場合もありますのでご了承ください。誤字も多いしね。

*表のUCIポイントおよび勝利数は2023年第24週(6月28日)までの集計。*新チーム名になった2チームは6月まで使っていた旧チーム名を使用(チーム DSMとトレック・セガフレード)。

 

 

 

 

◎チーム成績UCIランク・勝利数)

シーズンも折り返しに入り、今季のチームの順位も大勢は見えてきた。上位2チーム、3〜7位までの上位グループ、8〜18位までの中位グループ、19位以下の下位グループに分かれ、その中での順位争いになりそう。*表はUCIランク順で、ワールドチーム18チームと昨季上位の4つのプロチームで構成。UCIランクと勝利数は2022年分もグレーで表記。UCIランクは前月から上がったチームはピンク、下がったのはブルーにしている。*チーム名に変更があった2チームは旧名称のままにしている(チームDSM、トレック・セガフレード

ランキングでは上位2チームのUAEチームエミレーツユンボ・ヴィスマは前月から引き続き好調をキープ。UAEはドーフィネ総合2位のアダム・イェーツとスイス総合2位&ステージ2勝のアユソ、ユンボはドーフィネ総合優勝のヴィンゲゴー、ステージ2勝のラポルト、ZLMツアー総合を含む3勝をあげたコーイらが大きくUCIポイント(以下ptと表記)を稼いだ。ナショナル選手権でもUAE6勝・ユンボ5勝をあげている。おそらくツールでも総合争いの中心になるこの2チームは今年の1・2位を占める可能性が高い。イネオス・グレナディアーズは目立った成績もなく、上位2チームとの差は開き、4位との差は縮んだ。6月に獲得したptはワールドチームでは一番少ないというのは、ゲイガンハートやシェフィールドらの高チュナ選手の離脱とともに少し心配な状態。順位を上げたのは4位スーダルと5位トレック。スーダルはスイス総合3位のレムコだけでなく、ベルギーで2勝したヤコブセン、他にも久々の勝利をあげたアラフィリップなどチーム全体でようやく調子をあげてきた印象。しかしレムコひとりへの依存度は高いのはチームとしては苦しく、これから巻き返していきたい。トレックはスイス総合優勝のスケルモース、ドーフィネでステージ優勝したチッコーネを中心に、各国選手権で計8人もの優勝者を出し(ワールドチームで最多)チームの勝利数は早くも昨年の19を上回る21勝に達した。若い選手を中心に戦力の厚みは確実に増していて、7月から新しくメインスポンサーになったリドル社へもいいアピールになっている。バーレーングルパマがこの2チームと入れ替わり順位を下げている。この4チームのポイント差はそれほどないので、ツールも含めて順位争いは続く。トレック、バーレーン、グルパマはツールで総合上位を狙う選手が複数いるのに対してスーダルはいないのがptには響いてきそう。他では、ボーライスラエルが順位を上げて、モビスターコフィディスが順位を下げた。ボーラは上がったとはいえ昨年から見ると大きく順位を下げていて(4位→12位)これからどれだけ巻き返していけるか。イスラエルは昨年から大きく順位を上げて(20位→14位)ようやく若い戦力に力がついてきた印象。昨年の大きな成績低迷がなければプロチームへの降格もなかっただろう。惜しいことをした。

DSMAG2Rジェイコはチームとしては上昇傾向。順位こそ前月と同じだが、ptは伸ばしつつも、それぞれチームの印象は少しづつ異なる。DSMは実績のなかった若い選手が存在感を増していて頼もしい。このチームは毎年そうだが、発掘・育成能力は本当に優秀なチーム。例であげるとマックス・プール、マイヤーホファー、オスカー・オンレーが台頭の兆し。大きく飛躍したウェルズフォードとレックネスンが移籍の噂(ボーラとウーノエクス)があるのは残念とはいえ、これも毎年のことか。AG2Rは戦力的にはこんあに下にいていいチームではない。調子をあげてきたオコーナーやガルがツールで活躍できると一気にptの獲得ことは可能。勢いをつけていきたい。ジェイコスロベニアツアー総合優勝などで5勝したのは大きい(下のクラスのレースなのでptは高くない)。こちらはエースに続く新戦力の台頭が望まれていたが、ダンバー、ザナらが開花してきそう(ザナはトレーニング中に怪我をして離脱)。もう2〜3人ptを稼げる選手が欲しい。他のチームで活躍しているオーストラリア選手が入ったりすると個人的には嬉しい(現実的ではないが、ヴァイン、オコーナー、ヒンドレー、グローブスなど魅力的な選手は多い)。アルケアは2ヶ月勝利から遠ざかり、勝利数はワールドチーム最小になってしまい、苦戦は続いている。現時点では改善する傾向もなく、ウーノエクスアスタナに抜かれてしまうかもしれない雰囲気。ウーノエクス、アスタナに関してはどちらも勝利数・ptともに稼いだが、どちらも国内選手権のものが大きく(それはそれで大事だが)、それ以外のワールドツアーやプロツアーでどれだけ好成績を挙げられるかが重要になってくる。どちらも若手は伸びつつあり、来季に向けていい動きを見せていきたい(ウーノエクスは噂レベルだがいい選手を引き入れる予定。デンマークノルウェーだけでそれだけ選手を集められるのが羨ましい)。トタルはいいところなく、順位も下げてしまった。サガンの引退後サプライヤーを含めて大きくチームは変わりそうなので、そのためにも残りのシーズンでなんらかのインパクトは残していきたい。

 

 

◎個人成績UCIランク)

ランキング上位50名を表にした。目立って順位を上げたのは(名前をピンクにしている)ドーフィネ組とスイス組。またツールに出場している選手は名前の左側を黄色くしているので、どの選手が好調なのかの参考になればと。以下コメントは特に気になる活躍をしている選手にのみ言及する。また活躍したレースが1〜4月中心の選手は下記リンクから辿ってください。


この中で特筆しておきたいのは、8位マティアス・スケルモース。スイスの総合優勝は確実に一皮剥けた結果。アルデンヌクラシックでも好成績をあげて先月末ですでに21位につけていたので、極めて順調に成長中。とはいえ、個人的には想像よりも1-2年成長が早いという印象。アユソ(怪我明け)とレムコ(Covid-19後の復帰レースだった)に競り勝ち、他にもバルデやウランにツール前哨戦で勝つ、というのはポテンシャルは完全にトップライダーのもので、UCIランク1桁は勢いだけでは到達できない成績だ。直前に行われた猛者揃いのデンマーク選手権ではTT2位・RR優勝と絶好調。ツールでも大暴れする可能性もある要注目の若手だ。

ヴィンゲゴーも特筆すべき好成績といえるが、彼はすでにツールのマイヨジョーヌ本命という超実力者として、当然ともいえる。アダム・イェーツのドーフィネ総合2位も立派な成績。彼もまた実力者ではあるが、今シーズンはこれでUAEツアー総合3位(ポガチャルの代理だった)、ロマンディ総合優勝と好成績を続けていてキャリアハイのシーズンになりそうなほど好調で、非常に頼もしい。UAEとしてはいい買い物で、イネオスとしては残念な移籍だったと感じる。他にツール組ではマチューフィリプセンのアルペシンの二人も状態がいい。ラポルトチッコーネバルデマルタンウッズといったベテランがツールを前にコンディションをあげているのはさすが。彼らもツールでの活躍は期待していいと思う。ツール組以外では、オラフ・コーイがブレイクした昨年以上の成績を残している。6月が3勝(ZLMツアー総合優勝含む)を加えて、今シーズン7勝目、36レースデーでトップ10に24回も入っている安定ぶりはスプリンターではトップレベル。先日は2年の契約延長が発表されて、精鋭揃いのユンボの中でも期待値の高さを感じられる。来年はグランンツールへの出場が期待されるが、総合中心のチームの中でどのような成績を残すのか楽しみである。

6月に印象的な活躍をした選手では、この人には触れないわけにはいかない。スイスで総合優勝とステージ2勝をあげたUAEフアン・アユソだ。膝の故障によりシーズンインが遅れたため獲得ポイントが多くなく50位という位置にいるが、実力は間違いなくトップクラス。スイスでのstage5での単独アタックで先行していた強力な逃げグループを全員抜き去って、メイン集団から追走するレムコらの精鋭グループに1分以上差をつけた走りは圧巻。最終stage8の個人TTで唯一レムコに勝ったのも強烈なインパクトがあった。スイスのレビュー記事でも書いたが、アユソが“怪物”として目覚めたレースになるだろう。

 

チーム別ではユンボが6人と相変わらず別格の強さを発揮する中、バーレーンUAEも6人になりチームとしての層の厚さを感じさせ、グルパマイネオスが4人と続く。ひとりも入っていないワールドチームは、アスタナアルケア。この2チームはかなり厳しい状況が続いている。7月はツールで好成績をあげた選手がランクを上げてくる。そこで見えてくる成績から各チームは来季の構想を立ててくる。

 

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最後に、6月16日に逝去したジーノ・メーダーの今シーズンの成績について記述しておく。2023年シーズンに獲得したUCIポイントは331pt、6月28日付のUCIランクは223位だった。Covid-19に罹ることなく相性のいいジロに出場していたら成績はもっと上がっていただろう。2023シーズンのレースデーは32日間、総走行距離は4623km。

通算で走ったレースは397日、プロ通算3勝。ツアー・オブ・ハイナンstage6で初勝利、2021年ジロ・デ・イタリアstage6ツール・ド・スイスstage8で勝利。昨年はロマンディ総合2位、今年はパリ〜ニースで総合5位になるなど、特にGCでは次期エースとして将来をチームからも期待されていた。バーレーン・ヴィクトリアスには2021年から所属し、メーダーがもっとも多くのレースを一緒に走ったチームメイトはワウト・プールスで83日間。2番目に多いのは新城幸也で79日間だった。ご冥福を祈ります。

 

 

◎過去の月別成績まとめはこちら

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