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世界選手権 2023(個人TT・男子エリート)|リザルト

 

*いくつか、レース予想のリザルト記事をアップします。タイミングも内容も微妙なので、こっそりと(苦笑)。レースの予想記事は来年はやらないので、今年を締めるための個人的なけじめですね。

 

8月11日に開催された【世界選手権(個人TT・男子エリート)】。リザルトを表とひと言コメントでざっくり振り返る。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

 

◎レース結果:トップ10

とうとうレムコがTTで念願のアルカンシェルである。貫禄の勝利だった。世界選手権のTTは過去3回出場し(2位・3位・3位)、4度目の挑戦にして初戴冠(全て表彰台)。これでRRに続いてTTでもアルカンシェルを獲得した史上二人目の選手になった。ちなみに18歳のジュニア時代に世界選手権RRとTTともに優勝し、どちらもアルカンシェルを獲得した唯一の選手である。2位ガンナは王者から陥落したのに悔しさを見せず、レムコの強さを称えた。それだけレムコの走りは圧巻であった。3位に入ったターリングはTOP10には確実に入るだろうと思っていたが、想像以上にハイレベルに仕上がり。上位3人は明らかに他の選手と次元が違った。ターリングはまだ19歳で本来ならU23のカテゴリー、現在成長中と末恐ろしさを感じる(レムコも現在23歳だが…)。今後レムコの前に立ちはだかるのは、ガンナよりもターリングになるのかもしれない。TOP10は全員上位にふさわしい実力者たちで、ベルギーイタリアイギリスが二人づつ。さらに所属チーム別で見るとイネオススーダルユンボUAEで9人を占めてしまう。このTT4強チームの傾向はまだ当分続きそうだ。TTに強い選手を集めているということもあるが、機材やトレーニングなどのメソッドについても間違いなく優れたノウハウを持っているのだと思う。

 

 

◎予想結果:優勝候補ほか

TOP10予想は7人当てて、外した3人もその他注目選手で★印をつけていたので、まずまず及第点というところ。女子同様タイムトライアルは実力差がはっきりしているので、天候不順などのトラブルがない限り番狂わせは起きにくく、ほぼ順当な結果と感じる。また結果的には、一週間前に行われたRRにも出場したライダーとTTのみのではコンディション面には違いがあったように感じる。ファンアールトキュングポガチャルのRR出場組はその疲れも残っていたように感じるし、ガンナターリングデニスの未出場組はきっちりピークを合わせた印象。結果を見ればレムコもRRでは抑え気味で、TTを重要視していたようにも感じる。

 

 

 

◎その他・雑感

触れるかどうか迷ったけど、やっぱり書いておく。結果的に12位に入ったとはいえ、優勝候補のひとりに挙げられるほどの実力者キュングの事故について。TT独特のフォームの問題から視界不良に陥りやすく、カーブなどでも攻めた走りをすることもあり、今回のような落車も決して少なくはない。そもそもTTはハンドル操作がしにくい、ブレーキ操作も難しい、スピードが乗るので事故の際はダメージを負いやすいという特性もあり、TTバイク走行は少し前から問題視されてもいる(ベルナルのバス衝突事故もTTバイク走行時だった)。だが、ここで問題視したいのは事故を起こしてしまった事ではなく、事故後の対応である。かなりの流血をしながらのゴールシーンは衝撃的だった。キュングは脳震盪を起こしながら走っていて、走行時の記憶が飛んでいたと後日報道された。ヘルメットが損傷するほどだったので当然だろう。落車時にドクターによる脳震盪プロトコルが機能していなかったことになる。あの落車では優勝は無理だったし、たとえ優勝に絡むような状態だったとしても走るのは止めるべきで、チームの対応が不適切であったのは間違いない。気になるのは、キュングはスイスチームで出走していたこと。前日に衝撃的なリタイアをしたローセルもスイスチーム。このレースの2ヶ月前に死亡事故が起きたのはツール・ド・スイスで、亡くなったジーノ・メイダーはスイス人だ。選手の安全に一番神経を使わなければいけないチームなのではないだろうか。スイスチームはこの3日前にミックスリレーでアルカンシェルを獲得したというのに(キュングとローセルも)後味の悪さだけが残った。何よりも選手の安全を最優先して欲しいと切に願う。

 

 

◎プレビュー記事はこちら。

jamride.hateblo.jp