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【2024年のチーム】移籍まとめ(12月13日情報更新)

 

2024年のレース展望、その1。選手の移籍状況まとめ【2023年12月13日更新

今年もオフシーズンは多くの移籍がある(現在進行形)。ビッグネームやベテランたちの引退があれば、それと同じ人数の新人が加入する。本来なら今シーズンの各チームの成績を踏まえた上で、来シーズンの展望をまとめたかったのだが、選手の移籍は気になる方も多いようで、昨年の移籍状況まとめの記事のアクセスが多い。ということで、2024年版をちょっと早めに作成した。ただし、まだ相当数の選手が未定のため、年末あたりに情報を更新予定。

【追記】ワールドチームは全て基本的に枠が埋まった(27人以上)。ただし、まだ1〜2名余地のあるチームもあるため、追加するチームも出てくる可能性はあります。*12月13日時点の情報を【追記】として更新。また退団する選手の《未定》マークを外す等、表は全て差し替えました。

 

(以下、前置き長いので、移籍情報が知りたい方は目次まで飛ばしてください)

選手の移籍は、僕らに置き換えると“結婚”のようなものだ(就職の方がイメージは近いけど、まあそこはお許しください)。チームと選手には相性がある。選手集めにはチームのビジョンが現れるし、選手はより自分が輝ける条件のチームを探す。どんなレースで活躍したいのか。分かりやすい例ではイネオスはステージ総合を常に狙うし、アルペシンはスプリンターを中心にワンデーでの勝利を目指している。勝つ選手だけ集めれば良いというわけではなく、ドメスティークと呼ばれる汗かき役のアシスト選手の方が重要だ。そのためには経験の豊富なベテランも、チームの将来のためには若手の育成も怠ってはいけない。様々なレースの局面に対応できる選手をバランスよく集めることが肝心なのだ。アスリートとしてレースをこなすスキルだけでなく、チーム戦略を理解する知性やコミュニケーション能力(&語学力)、協調性や責任感など性格や人柄も含めて適正はあるし、何よりも年棒(契約金)などの条件がチームにフィットするかどうかが大切だ。例年100人程の選手が入れ替わる。これは全体の2割近い人数であり、今年は昨年と比較しても多い。昨年はワールドチームで退団した選手は119人(引退含む)だったが、今年は現時点で166人(未定も含む)と、4割近く増えている。以前よりも複数年契約をする選手は増えた印象だが、それでも多くの選手は不安定な状態で毎年戦っている。その事実は覚えておいてほしい。30人しかいない選手のうちおよそ1/3の10人も毎年入れ替わるなんて、普通の企業で考えたらかなり異常だ。*この辺りは更に長くなりそうなので、後日別の記事にします。

 

なお記事にするにあたり、ただ選手名を記載するだけでは面白味に欠けるので、当ブログでは「選手の2023年に獲得したUCIポイント(以下“point”と表記)」を移籍における戦力評価の基準(目安)にして、チーム毎の戦力の変化について考察している。これはあくまでレースに設定されているpointを一年間でどれだけ獲得したかという数字でしかなく、実際の選手の貢献度を測るものではない。それでもレースでの好成績を表す目安のひとつであり、pointの集計が最終的にワールドチームの昇降格にも絡んでくる重要なものにもなる。*戦力アップorダウンの評価は2023年に獲得したUCIポイント上での比較なので、あくまで参考程度です。

テキストについては、全員コメントしていくと膨大な量になってしまうため、有力選手と期待の若手等に絞って記載していく(それでも14000文字超えてしまった…。前置き長過ぎですね、すんません…てへ♪)。【追記】により更に文字数増えてます…15700文字・・・

 

 

 

 

チーム紹介はUCIチーム登録順(ほぼチーム名のアルファベット順)で、全18ワールドチームと上位4つのプロチーム(成績順)を記載。ワールドチームは27名以上で最大30名までが登録可能。現時点で30名に達しているチームはロースター完成で、他はまだ追加の可能性がある(AG2R、アスタナ、クイックステップは27名に達していないが、その他の27名以上のチームは追加なしの可能性もあり)現時点(2023.11.9)で来季のチームが決まっていない実力者は、サム・ベネットダビ・デラクルスヤコブ・マレツィコトビアス・フォスあたりか。個人的にはクドゥススカローニグレイグザビエルホッジノックスあたりも気になるところ。(*12月13日時点でほぼ移籍先決定)

◎移籍が成功だと思うチーム(失敗と思うチームは失礼なので言及しません)

⭐️⭐️⭐️ トレックジェイコボーラ

⭐️⭐️ アスタナウーノエクスチューダー

◆表について:左側の選手は加入(背景が薄いブルーの選手はネオプロ=プロ1年目)、右側は脱退(引退/未定=現時点で去就不明、を表記)、選手名右側の数字は2023年のUCIポイント。チーム名の右の数字はUCIポイントの加入分(+)と脱退分(−)の合計

 

 

◆デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム(△戦力アップ)

⚫︎新加入6名:退団8名(2023.12.13現在)。ここ数年移籍の動きが少ないチームだが、そろそろ転換期にさしかかっている印象。ファンアーヴェルマートシュレルシェアーと頼りになるベテランたちが引退し、2023年はチーム成績も大きく落ち込んだ(2023年の順位は18位で、ワールドチームから降格する瀬戸際の位置)。現時点では2024年の加入が発表されたのはラフェのみだが、最低でもあと4人は加入が必要であり、誰が入るのか期待したい(とはいえ今季は未契約の選手でそれほどの実力者は残ってない)。来季こそフランスのスーパースター、アラフィリップを引っ張ってくるくらいの勝負手を見せて欲しいが、どうだろうか。*現時点でロースターには達していないので《戦力微減》の評価ではあるが、加入する選手によっては改善される余地あり。

【追記】サム・ベネットほか新加入選手が一気に告知された。同時にデカトロンが新スポンサーになり、新チーム名も発表されチームキットも一新。サム・ベネットは好きな選手なので復活を期待したいがスプリントに力を入れているチームではないので勝利を量産するのは簡単ではない。ポレフリエットのみネオプロだが、他はキャリアのある選手が入り、2024年はチームとして少しでも多くポイントを稼ぎたい姿勢を感じる補強。(12月13日更新)

 

 

◆アルペシン・ドゥクーニンク(=戦力ほぼ変わらず)

⚫︎新加入7名:退団7名(2023.11.8現在)。中堅クラスのアシスト選手が抜けて、新人中心に若手を加入。いままで通り、スプリンターを中心にワンデー中心に戦っていくというチーム方針はぶれないのは好印象。マチューとフィリプセンという絶対的なエースがいる中で2023年に加入したグローヴスが大きく成長。加入するファントリヒトは(ウルフパックの一員でジャパンカップにも来てましたね)成長中の若手で、アルペシンは合っているだろう。キーリッヒアクセル・ローランスは、2023年は育成チームながらトップカテゴリーでも走っていたので、すでにチームに馴染めている。キーリッヒはワロニーstage3の集団スプリントでプロ初勝利し、大きく成長。ローランスは23年U23世界選手権RRで優勝したかなりの逸材。チームとしてはエース級とその他の選手たちにかなりの差があるので、そこを埋めるような選手の加入・育成が理想か。

 

 

◆アルケア・B&Bホテルズ(△戦力微増)

⚫︎新加入7名:退団8名(2023.11.8現在)。2024年からアルケア・B&Bホテルズにチーム名が変わる(2023年はチーム アルケア・サムシック)。好成績を残した2022年と比較し2023年はランキングが19位に終わる苦しいシーズンだった。今後のワールドチームの入れ替えも想定すると現状では厳しいと言わざるをえない。2023年はスプリント班中心の戦略も機能せず、結局キンタナの抜けた穴が埋まらなかった。エースだったバルギル、スプリント班の稼ぎ頭だったオフステテールの離脱はかなり痛いが、2024年に向けての補強は好印象。シーズン途中で加入したデマールはいい補強だったと思うが、2024年も活躍できるかというと個人的にはやや疑問。それよりも新たに加入するセネシャルアルバネーゼヴァントゥリーニの戦力としての上積みを期待したい。脱退する選手中3人は引退。ブアニは結局怪我から復活できなかったようで、年齢を考える(同じ32歳のサガンやピノも今季で引退だけど)と残念ではある。

*なおポイントではデマールは1130pointだが、半分はグルパマ所属時に獲得したもので、実際には1300pointも上積みにはならないので《戦力微増》の評価に止めた。

 

 

◆アスタナ カザクスタン チーム(△戦力大幅アップ)

⚫︎新加入14名:退団15名(2023.12.13現在)。ここ数年抱えていたチームの弱体化(2024年はランキング21位でWT最下位)に歯止めがかかるだろうか。2024年は12名も新規加入し、実力者も多いことからチームの刷新を図る本気度が感じられる。絶対的なエース級の選手はいないとはいえ、スプリント班を中心にチームがかなり強化されるのは間違いなさそうだ。カヴェンディッシュが引退を撤回し残留したこともチーム強化にも繋がっているし、彼のツール最多勝記録を本気で狙う体制をチームとしても示したと言える。クイックステップ時代の相棒と呼べるリードアウトマンのモルコフバッレリーニ、更にカンターゼーリッヒとスプリント班は相当なパワーアップ。その分、ステージ総合の強化は一旦お休みといったところかに感じるがチームを立て直すには最善の方法だと思う。大活躍したムルブランと、フォルトゥナートスヘリングチャームはそれぞれレースによっては勝利も狙えるほどの力もある。なおニコラス・ヴィノクロフはもちろん大佐の息子で、先日行われたツール・ド・九州でも来日していた。

【追記】ガッツォーリ(出場停止明けで復帰)、ウンバが追加で加入。スカローニとも契約更新したのも戦力的には大きい。(12月13日更新)

 

 

◆バーレーン・ヴィクトリアス(▼戦力大幅ダウン)

⚫︎新加入4名:退団6名(2023.11.8現在)。総合でエースを務めていたランダと今季急成長したミランが脱退し、pointは大きく減る。とはいえ、個人的にはそれほどチーム状況は心配していない。スプリンターとしての飛躍を目指しそうなミランは持て余しそうだったし(もともとスプリントには注力していないチームのため)、昨季から期待値の高い若手が多く活躍をはじめていて高齢化問題を抱えていたチームは若返りの過程である。うまく機能すれば2024年もそれほど成績は落ちないかもしれない。2023年途中から加入したティベーリは相当能力は高そうである。過去の反省もしっかりとしたうえで育ってくれれば応援もする(相当印象が悪いのは間違いないが)。また2024年はジーノ・メーダーの不幸もあり困難な時期も過ごしたが、“Ride for Gino”をスローガンにしてチーム全体で乗る越えようとする走りはとても立派だったし、ジーノがどれだけ愛されていたのかも伺えた。*なおポイントではティベーリは481pointだが、半分はトレック所属時に獲得したもの。

 

 

◆ボーラ・ハンスグローエ(△戦力大幅アップ)

⚫︎新加入8名:退団9名(2023.12.13現在)。なんといってもログリッチの加入である。2023年の成績は選手たちのポテンシャルからすると、正直なところ残念なチームのひとつだ。それでも上位との差が広がってしまったチーム力は、ログリッチの加入で一気に縮めてしまうほどの可能性もある。ログリッチ個人の成績もさることながら、彼が与えるチームへの好影響は期待していい。加入するダニエル・マルティネスロジャー・アドリアは、イギータやヒンドレーに相乗効果があることも期待したい。2022年ヒンドレーで初グランツールタイトルを獲ったストロングポイントは伸ばしていきたい。大きく成長したウェルスフォードを獲得したとはいえ、チームの方向としてはスプリントよりステージ総合に更に舵を切ってきた印象。脱退するポリッツアーチボルドの牽引力はソブレロで賄いたいところだが、まだ不足気味だろうか。最終盤も任せられる山岳アシストも含めて(個人的にはウラソフあたりはムラがあるけど、その気になればハマると思う)チーム全体の総合力を上げていければ、それだけ悲願のマイヨジョーヌに近づくことは可能だと思う。ただし現状では、ユンボとUAEとはまだ差がある。

【追記】アレオッティとは契約更新したが、アイデブルックスの移籍騒動が勃発。本来2024年までボーラと契約を残していたにも関わらず、勝手に退団しヴィスマが契約を発表し、騒動に発展。現時点で来季の去就は不透明(おそらくボーラに残ることは難しいと思うが)、経緯を見守りたい。(12月13日更新)

 

 

◆コフィデス(▼戦力ダウン)

⚫︎新加入12名:退団12名(2023.11.8現在)。2024年は12人もの選手が入れ替わり、チームの雰囲気も変わるかもしれない。と言いたいところだが、加入する選手は、なんというか“コフィディスらしい”というか、地味ながら好選手という雰囲気が全員に感じられる(言い方は失礼だが)。主力であったラフェヴァルシャイドの離脱は痛手に感じるが、他のエースたちは残り、加入した選手も多くが中堅どころの実績のある選手が多く、昨年並みの成績は期待できる。脱退した選手中5人は引退となり、高齢化が進んでいたチームにも若返りの波を期待したいところだったが、ヘルマンズ(37歳)、ゴルカ・イサギレ(36歳)、エリッソンドグジャールロビートと30代が多く加入。頼りにはなるが、チームの若返りはまだしばらく先か。もしくは“おじさまチーム”というチームカラーに染めていくのかもしれない。可もなく不可もない補強といいたいところだが、選手たちが入れ替わっても安定してそれなりの成績を継続できるということも、ある意味チームの方向性としては正しいのかもしれない。

 

 

◆EFエデュケーション・イージーポスト(△戦力アップ)

⚫︎新加入10名:退団12名(2023.12.13現在)。EFは2024年は多くの選手が入れ替わる。2023年の移籍は結果的にあまり成功だったとはいえず、チームの躍進は既存の戦力が活躍したから。現状の「未定」の枠の選手から数人は来季も継続するかもしれない。(*契約更新した選手は表に反映)。加入組では、ルイ・コスタは大きな戦力になりそうだけど、2023年が出来過ぎだったようにも感じるので、同じように活躍するとは限らない(2023年加入のカラパスのように)。その他の加入する選手では、育成チームから復帰する怪我明けのヴァルグレン以外は若手中心で、直近の結果よりも将来への投資的な意味合いと感じる。新人での注目株はアーチー・ライアン。大ブレイクしたベン・ヒーリーと同郷で一歳下のアイルランド人で、昨年20歳で出場したスロバキアツアーで優勝し一躍注目を集めたクライマー。ユンボの育成チームに所属しシーズンのほとんどを怪我のリハビリに費やしたが、U23ロンバルデイアで2位に入るなど、期待値はこの年代ではトップクラス。ジョルディ・クリスティアン・ファン・デル・リー(名前が長い)も5月からトレイニーでトップレースに出場するなど、有望な若手として覚えておいたほうがいい。

【追記】留目夕陽の加入が決まった。嬉しい日本人のワールドチーム加入は久しぶりの明るい話題。活躍を応援したい。(12月13日更新)

 

 

◆グルパマ・FDJ(▼戦力大幅ダウン)

⚫︎新加入7名:退団8名(2023.12.13現在)。point的には大活躍したピノの引退はとても大きい。同様にストーラーデマール(23年途中移籍)と活躍を期待していた二人のpointもでかい。それに引き換え加入するのはエース格はいなくて、中堅どころのアシスト中心の補強。だが、23年に加入した若手たちが想像以上に活躍したことで、チームの未来は少しも悲観の必要はないと感じている。来シーズンはステージ総合よりも、ワンデー中心に上位を目指すのではないだろうか。どこと比較してもフレッシュに感じるし、ピノとデマールというこれまでチームの顔的な存在を一気に失うが、新しいチームカラーを作っていくのだろうと思う。有望な若手たちの成長がそのままチームの希望になる。個人的には2024年も応援するチームのひとつ。*なおポイントではデマールは1130pointだが、半分はグルパマ所属時に獲得したもの。

【追記】アルミライルの退団を追記(AG2Rに移籍)(12月13日更新)

 

 

◆イネオス グレナディアーズ(▼戦力大幅ダウン)

⚫︎新加入3名:退団6名(2023.12.13現在)。イネオスのファンにはとても恐縮なのだが、正直な印象ではかなりチームの状態は良くないと感じてしまう。少なくてもこれまでのように、どのチームからも一目置かれて誰もが憧れるチーム、ではなくなってしまったと思う。2023年もふたりのエース(アダム・イェーツとカラパス)が抜けた穴は少しも埋まらず、シヴァコフゲイガンハートダニエル・マルティネスと更に3人もGCエースを担うべき人材が一番選手として脂がのる年齢でチームを離れた(個人的には今年のジロはレムコとゲイガンハートのリタイアがなかったら、マリアローザ争いの本命だったと未だに思っている)。さらにチームの未来を支える選手になりえたベン・トゥレットルーク・プラップという22歳の才気溢れる若者たちまで手放してしまった。そのかわりが(まだ数人加入する予定とはいえ)、オスカル・ロドリゲスアンドリュー・オーガストだけとは、一体イネオスはどうしてしまったのか。ここ数年の若手偏重の青田刈りのような補強には、魅力を感じない。多くの才能のある若手はいるが、同じようなタイプばかりで(Eヘイター、シェフィールド、ターリングとガンナタイプのトラック選手)少なくてもグランツール総合を毎年取っていた時のようなチーム力はなく、リーダージャージを着るほどの選手はいない。挙げ句の果てにはガンナがスプリントを始めたり、チームがどこを目指しているのかわからない。僕のこんな酷評を覆して「さすがイネオス」と唸らせてほしい。

【追記】トビアス・フォスが加入。イネオスとは相性が良いと思うが、TTスペシャリストでタイプが重なる選手は渋滞気味に感じるがどうなのだろう。(12月13日更新)

 

 

◆アンテルマルシェ・ワンティ(▼戦力大幅ダウン)

⚫︎新加入5名:退団7名(2023.11.8現在)。2023年の成績は可もなく不可もなく、といった印象。チームが主力を中心に怪我人が多く発生した不運もあるが、2022年の活躍を思うと寂しい一年だった。スタートは良かったので、チーム体制はそれほど悪くなかったとも思える。多くの選手が入れ替わったことにうまく順応できなかったのかもしれない。エースの活躍をした復活のルイ・コスタが離れてしまうのは戦力としてもpoint面でも大きくダウンするのだが、それ以外の選手は中堅どころのアシストの脱退・加入と、それほど大きな波のない選手の移動といえる。既存の選手たちが2022年のように活躍してくれれば大丈夫と思えるが、それがなかなか難しいのだろう。彼らの奮起(タコさんの復活と)に期待。個人的には期待していたコッレオーニが入ったし、個性的で応援したくなる選手が多いので、頑張ってほしいチーム。

 

 

◆チーム ヴィスマ・リースアバイク(▼戦力大幅ダウン)

⚫︎新加入7名:退団8名(2023.12.13現在)。最強から戦力が大幅にダウンといっても、ログリッチひとりのpointが大きいためで、チーム全体の戦力としてはそれほど大幅に下がるわけではなく、チームの中心になる選手は残るし、成長を感じる若手も多いという前提で、むしろ強化される部分もあると感じる。

脱退するうちの3人は引退であるが、ファンホーイドンクは心臓の病気が原因であり、健康であればこれから活躍していたことを思うと非常に残念である。彼はメディアが選ぶ今年のベストアシストにも選ばれていた。加入する選手では、今季一気に飛躍したヨルゲンソン、着実に力をつけてきているベン・トゥレットと二人の若者はTTも登りも強く、ユンボらしい実利と将来性をどちらも感じさせる補強。また育成チームからも強力な新人が加入。ペールストランド・ハーゲネスは育成チーム所属ながら23年すでに3勝を上げた急成長の若手で、ジュニア時代には世界王者にもなっている。レムコのような独走勝利。ヨハネス・スタウネ=ミッテもは22年ラヴニール総合2位、23年ベイビージロ総合優勝と、もう将来を約束されたかの活躍ぶりで、二人とも次世代の総合エースとして成長が期待される。移籍発表時にも話題にあがっていたバルト・レメンは28歳の異色の経歴を持つ興味深い選手。実質自転車競技を始めて2年で、昨年ヒューマン・パワードヘルスで遅咲きのプロデビューを果たした元オランダ軍人。まだめぼしい成績も残していないが(2023年オランダ選手権で4位等)、アスリートとして有能な数値を記録しているらしい。TT能力も高く、経験を積めばデニス級の戦力になるかもしれない。

【追記】アイデブルックスの加入が発表されたがボーラ間との騒動に発展し、現時点では正式に新メンバーとはいえないが表には(仮)で反映。また表も新チーム名に変更。(12月13日更新)

 

 

◆リドル・トレック(△戦力大幅アップ)

⚫︎新加入10名:退団11名(2023.11.8現在)。非常に積極的な補強に乗り出した。一時はログリッチとの交渉も伝えられるなど、新たにスポンサーに加わったリドル社のおかげで相当な予算アップとチーム強化の本気の姿勢を感じる。実際にリドルが加わったツール以降のトレックの躍進は目覚ましく、2024年は上位チームに迫る成績を残しても不思議ではない。ワンデーでは大きく成長しトップライダーに仲間入りしそうなバジオーリ、スプリンターで開花したミラン、GCでは怪我をするまではイネオスの救世主になれそうなほどの活躍を見せたゲイガンハートと、エース級の若手たちを獲得し、コンラッドコンソンニベローナオーメンデクレルクと全方位的にチーム強化に結びつく人材をバランス良く補強。どのレースでも上位に入れそうなメンバー構成になり、確実に層は厚くなった。脱退した選手たちも中堅アシストがほとんどで、残ったエースたちに補強メンバーが噛み合えばトレック史上最強チームになれるポテンシャルを感じる。*なおポイントではティベーリは481pointだが、半分はトレック所属時に獲得したもの。

 

 

◆モビスター チーム(=戦力ほぼ変わらず)

⚫︎新加入9名:退団10名(2023.11.8現在)。10人を超える選手が入れ替わり、メンバー構成は大きく変わるが、pointで見ると2023年とほぼ変わらない。エースクラスに成長したヨルゲンソンの脱退は痛いが、他はかなりいい補強をしたという印象。近年は苦手だったワンデーを強化するようなライダーを補強が目立ったが、このオフはステージ総合寄りの強化をした印象。トータルで能力の高いフォルモロカヴァニャはチームに足りなかった部分を埋める人材になりそうだし、サプライズはナイロ・キンタナの復帰である。2023年はほぼ一年レースをしていないが、老け込む年齢ではないと思うし、モビスターには本人も思い入れもあるのではないだろうか。エースとしてというよりもマスたち総合系のアシストとしての役割を求めているようだが、実際はエースクラスの働きを期待していいのではないかと思っている。キンタナがpointを稼げば大きくプラスになる。懸念としては2022年のツールでのドーピング疑惑がはっきりと決着がついていない雰囲気があること。

【追記】ベテランアシストのチモライが加入。(12月13日更新)

 

 

◆スーダル・クイックステップ(▼戦力大幅ダウン)

⚫︎新加入10名:退団12名(2023.12.13現在)。主力メンバーが大量に離脱して、迎え入れたのはランダ以外は若手ばかりと、戦力としては大きく後退すると思われる。チームの最大の強みだったスプリント班はほぼ完全に解体されて(エースのヤコブセンバッレリーニ、リードアウトのモルコフセネシャルヴァーノンファントリヒト)、カヴァニャデクレルクといった替えのきかない牽引役も失った。また成長してエース級の活躍をしていたバジオーリシュミットと若手二人も失った。ランダという総合エースが入ったのはチームにとってはもちろん大きなプラスだが、ステージ総合を狙っていく体制に完全に以降していくという流れは止まらない。代わりに入ったランパーティ(TOJでの活躍の印象が強い方もいるだろう)は魅力ある若手スプリンターだが、他の加入選手も含めて抜けた分の穴埋めができるとはとても思えない。エース級の選手を放出し、若手を迎え入れて成長を促しトップ選手に導くというのはお家芸でもあるチームだが、さすがに今回は抜けた穴は大き過ぎる。とはいえ、9月頃はゴタゴタもあり、消滅の可能性もあったチームであることを考慮すると、よくこれだけの戦力をキープできたとも思えるし、微妙なところだ。レムコがいる限り、チームとしてはそれなりに好成績を残すだろう(一人で中堅チームひとつ分の働きをする)。ただし、春のクラシックで暴れまわり10年間も最多勝を続けていた時の“ウルフパック”の輝きや誇りはもう期待しにくいだろう。個人的に今まで一番応援していたチームという思い入れもあり、残念なチームの変化である。

【追記】ネオプロのポール・マニエが加入し、ノックスが契約更新。(12月13日更新)

 

 

◆チーム dsmフェルメニッヒ(▼戦力ダウン)

⚫︎新加入10名:退団11名(2023.12.13現在)。ここ数年続いているチームの弱体化の流れはやはり今年も止まらない。というよりも、ある種の若手育成チームと見なしたほうがいいのかもしれない。このオフもウェルスフォードダイネーゼマイヤーホファーと成長した若手スプリンターたちが大量に新チームに移り、総合エースとして期待していたレックネスンも早々にウーノエクスに出戻りすることになった。しかし新加入する選手にはポジティブな印象も十分感じる。バルギルは、バルデとのフランス人コンビとして若手たちのいい手本になりそうだし、ヤコブセンは母国であるオランダのチームは悪くない。今季は若干メンタル的な部分で悩んでいた印象だが、チームの若手たちと一緒に力強い活躍を期待したい。他にも若手中心でしかも8人中6人がオランダ人。これは意図して集めているのだと思う。ウーノエクスがノルウェーとデンマーク人だけのチームなのは有名だが、dsmもオランダ色を濃くしている。point面では2023年は大きく下がるが、チームには今季成長を感じさせる活躍をした若手が多くいて(マックス・プール、オスカー・オンレー、ケヴィン・ヴェルマーク等)毎年新しい戦力が台頭してくるチームとしては期待値は高い。個人的には2024年は一番応援するチームの予定。やっぱり成長するチームを見守るって楽しいじゃないですか。

【追記】リエピンシュジュリアス・ファンデンベルフが加入。マルコ・ブレンナーが退団。(12月13日更新)

 

 

◆チーム ジェイコ アルウラー(△戦力大幅アップ)

⚫︎新加入6名:退団6名(2023.12.13現在)。ここ数年成績面でもpointでも苦しんでいたが、今回は非常にいい補強をした印象。地元オーストラリア人のポケットロケットことカレブ・ユアンと、若くしてオーストラリアRR・ITTの王者になったルーク・プラップが入ったことは戦力面でも人気面でもとても大きい補強。これだけでも大成功と言っていい。シュミット(やや性格には難ありかも)、ヴァルシャイドは、平地も山岳も牽引していたソブレロの穴を埋めてあまる役割を果たせそうだし、レースによってはエースも担うほどの実力者。アンダース・フォルダガーは23年のベイビージロ、ラヴニールどちらもステージ優勝したり、ダヴィデ・デプレットはU23の春のワンデーで表彰台の常連になるなど、新人二人も即戦力級で期待値は高い。チームの首脳陣もここ数年で一番いいメンバーが揃ったと語っていたり、しばらく続いているチームの低迷からの巻き返しを期待したい。なんだかんだ好きなチームなので(映画の影響は大きい)頑張って欲しい。マシューズがユアンを発射して勝つレースを見たら泣いちゃうかも。

個人的にはブレイクの予感があったコッレオーニが不調に陥り退団してしまうのは少し残念。新天地での活躍を期待してます。シクロクロスでも活躍していたスティバルの引退も寂しい…。お疲れさまでした。

 

 

◆UAE チーム エミレーツ(=戦力ほぼ変わらず)

⚫︎新加入6名:退団7名(2023.12.13現在)。毎年繰り広げたえげつないほどの(言い方はよくないが)積極的な補強は、今年は控えめか。とはいえ、今年は的確で賢い補強をしたと感じて好印象。シヴァコフはGCでのサブエース的なポジションになるのだろうか。GCもワンデーもエースクラスの働きも期待できるが、彼よりも実績は上の同タイプの選手が多いので、どういう役割になるのかちょっとわからない。ポリッツはいい買い物。チームの足りなかった機関車役にうってつけの人材。バロンチーニは21年のU23世界選手権王者で、アントニオ・モルガドは23年のU23世界選手権2位。そして個人的にいま若手で一番興味があるのはアイザック・デル・トロ。2023年のラヴニールで総合優勝し多くのチームで争奪戦を繰り広げた新星。なにしろメキシコの小さなクラブチームから一気にトップの舞台へステップアップしたシンデレラボーイ。現在ワールドチームでの唯一のメキシコ人というのもとても夢がある。しかも昨年大腿骨骨折という大怪我からの復活と、様々なドラマ性を感じさせる個性もあり絶対に人気が出る選手。彼の活躍は多くの人々に夢を見させてくれるだろう。多くの優秀な若手クライマーたちがいるチーム内競争も激しいと思うが、どんな走りを見せるのかとても楽しみ。風貌や雰囲気が若い頃のチャベスを感じさせる。もしくはベルナルのような選手になりそうな予感がする。

トレンティンフォルモロアッカーマンGベネット等の脱退するメンバーも強力だったが、UAEではエース的な役割でなかったので、新天地で活躍するかもしれない。昨年のルイ・コスタ、2022年のクリストフ、2021年のフィリプセンと毎年出てから大活躍する選手の例は続いている。ホッジギボンズあたりもどこにいっても戦力になれる。

【追記】ホッジが契約更新。ポランツを表に追記(心臓疾患が発見されて2023年途中で引退。レースは一回も走っていない)(12月13日更新)

 

 

 

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以下はプロチーム(上位のチームのみ)

◆ロット デスティニー(▼戦力ダウン)

⚫︎新加入6名:退団5名(2023.12.13現在)ユアンの脱退は少し悲しいが、チームの首脳陣との不仲もささやかれていただけに致し方なしか。ここ数年かつてのような強さは影を潜めていたので、新天地での復活を期待したい。スプリンターのエースにはドゥリーという超有望な若手もいるので、ロットとしてもそれほど痛手ではないだろう。

pont面ではユアンの分を除けば、ほぼとんとんというところ。チーム全体では多くの若手が成長し勢いもあり、2023年のチームランキングは9位という好成績。プロチームへ降格したが、ワールドチームへの復帰は十分叶う戦力は維持できている。ただ若手が多いということは成長への期待と同じくらい不安定さもあるということで、20代後半の中堅どころのタミニオーグレゴーファンハウケを加入し安定感を求めたと思えば悪くない補強。ただファンハウケのDSMへの半年出向みたいな出戻りはよくわからない。

【追記】カリーベルクモーズが加入。(12月13日更新)

 

 

◆イスラエル・プレミアテック(△戦力アップ)

⚫︎新加入10名:退団10名(2023.12.13現在)。2023年は多くの若手たちが活躍をし、WTとPT全チームで一番の高齢チームもようやく明るい未来を感じさせる雰囲気が出てきた。それを受けて更に積極的に若返りを狙うかと思ったら、移籍はやっぱりベテラン多め(ちゃんと確認できていないが、加入する選手の平均年齢はおそらく一番高い)。まあ短期的に的確にpoint集めをしようと思えば仕方のない部分もあり(プロチームに降格という痛い目にあったばかりだし)、個人的には“おじさま軍団”として応援したかったりするので、この路線で突っ走って欲しい気持ちもある。

補強をしたメンバーで見るとステージ総合ではなくワンデー狙いなのは好印象。というかステージ総合を狙える選手層ではない。加入する選手もアッカーマンオフステテールヴァーノンジェイク・スチュワートとスプリンター多め。脱退するニッツォーロアインホルンの分を埋めて余るほどスプリント班は強化されるはずだ。ワールドチームへの昇格を狙うなら、柱になる人材は必要。本来ならエースクラスのトップ選手はひとりは加入してほしい。予算はあるはずなので、待った無しになる来季に期待。

【追記】シーハンコグットプックレルライスバーグとネオプロ4人が新加入。シーハンはトレイニーで参加したパリ〜トゥールでの勝利により来季の契約に結びついた。ジャパンカップでも目立っていたので日本でも知名度が上がったと思う。他の3人は全員下部育成チームからの昇格するイスラエル人とカナダ人。アインホルンガイ・サジフは契約更新。(12月13日更新)

 

 

◆トタルエナジーズ(▼戦力ダウン)

⚫︎新加入4名:退団6名(2023.11.8現在)。2022年は、2023年はほとんどの選手が成績を落とし、チームは膠着している印象。ワールドチームへの昇格を目指すにはかなり苦しい印象。選手層は決して悪くないと思っているのだが、何か歯車が合わないようなぎくしゃく感がある。柱になるような選手が二人くらいいるとかなり違うのだが、トゥルジス、ラトゥール、ファンヘステルあたりもいい選手ではあるが役不足か。そういう意味ではスーパースターのサガンの引退の影響はレース成績だけにとどまらない(Covid19やモチベーションの問題もあってか成績も望んだものには遠かったが)。一緒に加入したオスボドナルのチームサガンのメンバーの去就も不明で(広報やメカ等チームスタッフにもサガンのスタッフがいる)バイクメーカーのスペシャライズドも含めて、チーム運営にとっても多方面に影響があると思われる。これから数年はチームの基盤構築に必要な時期になるかもしれない。新規加入する4人は全員24歳以下のネオプロで残念ながら知らなかった選手ばかり。ざっくりと過去の成績をチェックしてみたが特筆するほどの成績はあげていない印象である。

【追記】サガンは兄がSDを務めるコンチネンタルチームに所属するので、正確には引退ではなく「引退」マークを外した。オスボドナルは引退が発表された。オスはスペシャライズドのグラベルチームでレース活動をする。(12月13日更新)

 

 

◆ウーノエクス プロサイクリングチーム(△戦力アップ)

⚫︎新加入8名:退団8名(2023.12.13現在)。前年に続きワールドチーム昇格に向けてチーム強化に本気度を感じる、前向きで野心的な補強という印象。うまく機能すれば昇格圏になるpoint獲得も現実的だ。成績も含めて人気面やチームの雰囲気ん盛り上げにも大きな影響がありそうなマグナス・コルト、GCでも好成績を期待したい出戻りのレックネスンと実績十分の戦力に加えて、トレックでは思うような活躍ができなかったフールゴーと同様にDSMで成績を残せなかったヴィデバーグの二人も勝手知ったる出戻り組。育成チームから昇格する若手の4人と、補強としては文句のつけようがないくらい好印象。脱退するトレーエングレゴーチャームもステップアップといえる移籍であり、チームとしても歓迎しているだろう。なおキュルセット選手は兄弟で、ヨハネス(四男=入団)、シンドレ(次男=退団)、マグナス(三男=所属中)、クリスティアン(長男=チームのSD)と全員ウーノエクスの関係者である。

それにしてもノルウェーとデンマークだけで、これほどのチームが作れることに羨ましいとしかいえない(しかもデンマークにはヴィンゲゴー、ピーダスン、スケルモース、アスグリーンほかもっとすごい人材もいる)。ほんとに羨ましい。

 

 

◆チューダー プロサイクリングチーム(△戦力大幅アップ)

⚫︎新加入6名:退団0名(2023.12.13現在)。本来なら成績順なら他にも上のプロチームはあるのだが、特別枠で紹介したいチーム。2023年にプロチームに参入したチューダーは本気でワールドチーム入りを狙っていると感じた。プロカテゴリー一年目ながら、プロクラスの含めて10勝を挙げて十分に活躍を見せたが、2024年は6人の実力者と伸び盛りの若者たちが加入する。しかも誰一人脱退せずに。つまり完全な「補強」で、より一層チームの存在感を強くするだろう。トレンティンダイネーゼマイヤーホファーストーラーと2023年に印象的な勝利をあげていて、チームの柱になれる選手たちだ。2024年に一番チーム力が改善されそうなチームといっても過言ではない。ただし、ちょっとした懸念点はスプリンターばかり増えたことで、昨年もスプリントでエースを張っていたデクラインとの住み分け、出場するレース選別やエース問題等はどうするのか、ちょっと気になるところ。その辺をうまくマネージメントできれば、昇格圏内のpoint獲得は十分可能だ。2024年は注目していきたいチームのひとつ。

 

 

 

◎2023年のチーム成績はこちら

 

◎2024年のチームプレビューは年明けに更新予定